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妊娠8ヶ月でペルーに渡り、アマゾンで出産…コムアイと太田光海が明かす、村での出産を決めた理由と“誹謗中傷”の真相「出産は、自分が動物になると…」

文春オンライン / 2024年8月31日 11時0分

妊娠8ヶ月でペルーに渡り、アマゾンで出産…コムアイと太田光海が明かす、村での出産を決めた理由と“誹謗中傷”の真相「出産は、自分が動物になると…」

アーティストのコムアイ(32)と映像作家・文化人類学者の太田光海(34)

〈 「時が来たら産まれるから」「世界的注目を浴びている民族」アマゾンの村で出産したコムアイと太田光海が明かす、地球の裏側の“出産秘話” 〉から続く

 アーティストのコムアイ(32)と映像作家・文化人類学者の太田光海(34)。

 夫婦ではなく恋人同士で子供を迎えることを決意し、2023年7月にアマゾンの村で出産をした彼らに、出産直後に食べたという胎盤の味、アマゾンを出産の場所に選んだ理由、異国での出産に対する誹謗中傷などについて、話を聞いた。(全3回の2回目/ 続き を読む)

◆◆◆

胎盤、食べると「めちゃ元気が出ます」

ーー出産後に胎盤を塩で食べたとのことですが、塩以外の味付けは。

コムアイ 塩しかなかったんですよね。

太田光海(以下、太田) アヒ(唐辛子)つけなかったっけ?

コムアイ ああ、つけたかも。

ーー生のレバーっぽい?

コムアイ レバーよりおいしいと思う。私、レバーが苦手なんですよ。あんなに癖はない。

太田 もっとサッパリしてて、食感は少し歯ごたえがあって肉の層を感じるような。

コムアイ 何だろうね。ぼんじりみたいな? でも、あそこまで脂分がないよね。

ーー食べると、元気が出たりとかするのですか。

太田コムアイ めちゃ元気が出ます。

太田 かぶったな(笑)。

コムアイ 絶対食べたほうがいいって、正直思いました。

太田 食べて元気を出せるように、哺乳類は進化の過程で胎盤を出すようになったんじゃないかと思ったぐらいです。

残った胎盤は翌日、アニータが串焼きにしてくれた

コムアイ 動物は、胎盤を食べますよね。

太田 シカとか食べますね。人間は現状の主流文化では食べないですけど、やっぱりアマゾンみたいなスーパーもレストランもない環境のなかで、「産んじゃった、どうしよう、すごい体力も落ちてる」ってなった時に、メチャクチャ重要な栄養源になるというか。

コムアイ そうだね。産んだ時って、血が減る感じがするんですよ。実際、出血するしね。血がザーッとなくなって。お腹にあった羊水も赤ちゃんも全部出たら寒気に襲われて「あれ? 寒い寒い寒い寒い」と凍えていたんですけど、胎盤を食べたら体があったかくなった。

ーー生だけでなく、串焼きにもして食べたそうですね。

コムアイ 「おいしい~」ってなるけど、胎盤は体があったまりすぎるので、そんなにいっぱい食べられるものでもなくて。で、残ったものを翌日にアニータが串焼きにしてくれて。それでも食べきれなかったものは土に埋めて、「胞衣笑い」っていう沖縄とかで主に行われてた風習に習って、光海くんが大笑いして送ってくれました。これをすると赤ちゃんが憎まれずに育つって言われてるんです。

 村では、毎日の食事がバーベキュースタイルなんですよ。直火で焼くか、鍋に入れて蒸すか。でも、胎盤は網で焼いてたね。

試しに焼いてみたら、へその緒も美味しかった

太田 串は家の横に生えてる植物で作ります。

コムアイ 棕櫚(シュロ)みたいなやつの葉を取って、軸を残して研いで、串を作って。食べるものによって、どんな串が欲しいか、植物をうまく使い分けるんです。幼虫とか小さいものを焼くなら、細く。お肉だったら、もっと太い茎の植物を使ったり。そこらじゅうに生えているから、慣れると便利なんですよ。

ーー串焼きの味付けは。

コムアイ 生と同じ、塩です。へその緒も。

ーーへその緒はどうでしたか。

コムアイ へその緒はおいしくなさそうと思ってたけど、試しに焼いてみたら、味がしっかりあって美味しかったです。みんなが料理上手なわけではないのですが、アニータの塩加減と焼き加減はいつも絶妙で、自分でやったらそこまで美味しく出来たかわからないけど。

 ガッツリ焼いてたよね。「ん~、まだ中が赤い」とか言って、しっかり火を通してくれて。

太田 アマゾンでは基本的にレアでは食べないです。しっかり火を通す。胎盤もへその緒も、一通り食べたけど、ほんとに美味しかった。

コムアイ なんか、気を使ってない?(笑)

太田 いやいや、向こうでも「おいしい」って言ってたじゃない(笑)。

ーーなんとなく、うなぎの肝焼きに近い食感かなと。

コムアイ グニグニしてたね。

太田 してた。なんだろう。ホルモンに近かったかもしれない。

スーリと呼ばれる幼虫「生きているヤツをそのまま」…

ーーキャッサバで作った酒のチチャをアニータに勧められたとのことですが、他には?

太田 妊娠中に勧められたのは、葉っぱやきのこ。キャッサバやさつまいも。あと特に、スーリと呼ばれている幼虫ですね。

ーータンパク源になるんですかね。

太田 でも、彼らは必ずしもタンパク質という栄養基準で考えているわけでもないと思うんです。ずっとそう言われてきたから食べているというのもあるだろうし。

コムアイ アニータに「妊婦はスーリが食べたくなるものよ」と言われていて。すごく上品な味で、おいしかったです。要は慣れているか、慣れていないかの話であるから。

 ただ、生で食べるんですよ。生きているヤツをそのまま。それが一番栄養価が高いんですけど、動いているんですよ。さすがに動いているのを食べるのは抵抗があったけど、食べたら「あ、うまっ」って感じで。でも最後まで慣れはしなかったかな。

ーーカブトムシの幼虫に似た見た目ですか。

太田 そうです。

コムアイ 成虫もカブトムシに似ていて。成虫も食べている女の子がいましたが、村の人たちは幼虫の方が好きみたいです。

ーーなかなかハードルが高いですが、みんなが「うまい、うまい」と言ってムシャムシャ食べているのを見たら、思わずパクッと口に入れてしまいそうですね。

コムアイ そうなの。みんなが「ほら、分けてあげるよ」って貴重なスーリをくれるんです。そうなると「わー、ありがとう! おいしくいただきます!」となっちゃう。

太田 普段は、そんなに量を食べないんです。前に僕が5ヶ月くらい1人で滞在してたときは、何回かしか食べる機会がなくて。今回は村にやってきたコムちゃんが妊婦だということで、みんながとにかく食べろと持ってきてくれて。

コムアイ さっき、自治政府があるって話したじゃないですか。その会議の途中で「よし休憩」となって、軽食が用意されたんですけど、それがポップコーンの山とスーリでした。「どんな組み合わせだよ!」と思ったけど。みんな、圧倒的にスーリに手を伸ばすんですよ。もうガンガン食べてて。

自分の動物的な部分を引き出してくれる環境で出産を

ーーかねてから海外での出産を考えていたのですか。

コムアイ 妊娠するまでは、特に考えてなかったです。その時に住んでる場所で産めばいいと思ってたんですけど、日本で出産したい場所が思いつかなくて。

 出産するってことは、自分が動物になるというか、動物であるということを思い出す機会になるだろうなと思っていて。「この現代社会になっても、いまだに全員の命がお腹の中で育まれることは変わらないんだな」と。実際に妊娠したことで、それを感じるようになって、出産も、自分の動物的な部分、生命的な部分を引き出してもらえるような環境でしたいと思っていたんだなって。

 でも、それは後になって気付いたんですけど。

ーー日本以外でも、都市部は考えていなかったんですね。

コムアイ 海外ならどこでもいいってわけではなくて。まず、インドが選択肢としてありました。

太田 僕は真っ先にインドを思い浮かべたんです。彼女はインドによく行っていたし、知り合いもいるから安心できる環境だろうなと思っていたんです。

コムアイ インドで歌の先生のファミリーにお世話になっていたんですけど、そのお家はお父さんが薬剤師なので西洋医療だろうなーと。そうなると受け入れてくれるだろうけど、病院で産むことになるんだろうなって。

 でも、インドもアマゾンも、私たちが訪れたコミュニティは、日本で生まれ育った自分からは考えられないほど、当たり前のように外から来た人をあたたかく受け入れてくれる。特に、お母さんたち。毎日、違う家の人がご飯を食べに来てるけど、全然気にしていないって感じで。そういう受け皿のあるところがいいなって。

 生活をずっと一緒にして、まるっと甘えてっていうことをしてきたのは、近年だと海外のほうが多かったから、海外だから不安ということはなかった。必ずしも言語が通じるとか血の繋がりがあるとかずっと住んでいるとか、そういうことだけが安心になるわけではなくて。

かつて文化人類学の研究で滞在したペルーの村へ

ーーなるほど。そこから、どうしてアマゾンに?

太田 それで、いろいろ探しました。ブラジルに自然出産を推進している先住民の女性たちのグループがあるという情報を見つけてリサーチしたり、インドでもそういうグループを探したりしてたんですけど、そういえば僕が研究で滞在したペルーの村では実際どうなんだろうと思って。僕はイギリスの大学院で文化人類学の博士号を取得したんですけど、そのための研究の一環でその村でフィールドワークをしたんです。要は住み込み調査。当時は彼らの出産について深掘りしてなかったので、多分自宅で産んでるとは思ったけど確証がなかった。

 その村に住んでるリーダー格の友達に連絡したら「ここでは女性は全員病院じゃなくて自宅で産んでるし、助産の知恵がある人もいる。ここで産みたいなら全然ウェルカムだよ」と返事が来て、「じゃあ、そこでいいじゃん」と。

 その村が、僕らが行ったワンピス族の村なんです。決める前にその友達と1回コムちゃんも交えてビデオ通話をしたんですけど、色々と話せてコムちゃんもその人をすごい信頼できたみたいで。それに、僕はスペイン語を日本語とあまり変わらない感覚で話せて、ワンピス語もある程度理解できます。コムちゃんも実は大学でかじっていたらしくスペイン語が少しできるんです。言語の面でも障害がないってことも大きかったですね。

「アマゾンに行きます」と見出しに出たら炎上して…

ーー妊娠8ヶ月でペルーに渡ったとのことですが、出発直前までは日本の産婦人科に?

コムアイ 病院は行きました。めちゃ真面目に日本の健診は行ってます。でも、渡航直前は行かなかった。なんでかっていうと、炎上したから、身バレしてるんじゃないかと思って。もうペルーに行くのも決めていたし。

 妊娠して、どんなふうに出産したいかみたいな話題のなかで「アマゾンに行きます」と話したら、それが見出しになって「アマゾンに行くの!?」って炎上して。

太田 見出しでちょっとセンセーショナルにはなったんですけど、ちゃんと記事を読めば色々考えがあっての判断で、しかも慎重にことを進めた上で判断を変える可能性も全然あるよと言ってることはわかってもらえると思います。

炎上に感じたのは、傷付いた人たちの怨念

ーーネットやSNSで誹謗中傷のコメントが多かったと思いますが。

太田 僕、最初の3つぐらい見て、「やめておこう」と思って。ほぼ読んでないです。

コムアイ 「コムちゃん、見なくていいよ」って言ってたよね。

太田 わりと僕側への誹謗中傷も多い印象で、特にTwitter(現・X)がものすごいことになってました。僕がヤバい男で、コムちゃんを闇に引きずり込んでみたいな。

 なんだっけ、「2台の車にお前の足を縛り付けて引っ張って引き裂いてやる」みたいなよくわかんないけどひどいツイートとかありましたよ。もう書いてあることは大体分かったから別にいいや、みたいな感じでしたけど。

ーーひどすぎます。

太田 僕を攻撃してたのは、出産経験がトラウマになってしまっていたり、男性のせいで心に傷を負った経験がある女性たちが多い気がしました。その怨念を全部僕にぶち当ててる感じで。あと、方針を決めているのは男性の僕だという認識が強かったように思います。まるでコムちゃんが主体的に判断していないかのような見方が多くて。

 もちろん誹謗中傷を受けるのは気持ちよくないですよ。でもそれだけ傷付いた人たちの怨念が溜まってるんだということは感じて、怒りというよりはまだまだやるべきことがたくさんあるなと気持ちが引き締まった感じです。

 当たり前ですけど、出産に関してはコムちゃんの希望が僕にとっては全てなので。彼女が「こういう環境で産めたらいいな」と話してくれたことに対して、僕は全力で向き合いながら一緒に最適な方法を探したまでです。男の僕が「危ないから日本の病院で産んでほしい」と言うことは簡単ですけど。出産に関して女性の希望を最大限聞くということがまだ当たり前になってないんだろうか? と思わざるを得なかったですね。

既存の男女の関係性を揺るがしたことへの反応なのかなと…

ーー出産に関して、女性の主体性が保たれていないこともあると。

太田 妊婦に対する様々な制度的・社会的暴力を「オブステトリック・バイオレンス」と定義して検証する流れが世界的に生まれつつありますけど、僕はコムちゃんの意向を色々と聞くうちに、コムちゃんはおそらく感覚的にその暴力に対するオルタナティブを探そうとしてるんだなと思いました。

 ただ、コムちゃん自身への誹謗中傷ももちろん多くて。さっき言ったことと矛盾するようですけど、やっぱり女性が好きな場所で好きなやり方で出産して好きなように生きるということに対しての社会の嫌悪感もすごく出ていたなと。いろんな意味で、日本での既存の男女の関係性を僕らが揺るがしたことへの反応なのかなと思います。

 あとは、南米とか先住民の人たちに対する差別感情をすごく感じました。まるで紛争地帯に突っ込んでいくみたいな捉え方だったり、とにかく遅れていて技術も知識もない野蛮な場所に行くみたいな発想が根底にあるなと。

 世界にはいわゆる西洋科学以外の知識のあり方も存在するし、むしろそっちを援用する方が良い場合もある。見方によっては1周回ってアマゾンの方が進んでることもあるわけです。そのあたりは改めて伝えていく必要があるなと。

コムアイ 私たちが「恋人同士という形のままで子供を産みます」みたいなことを話した時も、ちょびっと炎上したんです。炎上っていうほどではないかな。

太田 そのあとの炎上を考えたらあれは炎上のうちに入らないよ(笑)。

コムアイ 600件くらいコメントがついて、すごくいい感じで議論が盛り上がったと思うんですよ。その時はコメントをすべて読んだし、皆さんの語りが興味深かったんですよ。「嫁いだら、うちの墓を守れと言われました」とか、今でもそういうことはあるんだよな、と知ることができて。

出産前は自分の中に他人の呪いの言葉を入れたくなかった

ーー出産して戻ってきてからは、イヤなコメントは。

コムアイ 戻ってきてからはないかな。でも「危ない目に遭えばよかったのに」みたいなことを言う人はいた。

太田 「注意を喚起するためにも、あっちで事故ればよかったのに」みたいなツイートも。

ーー怖いですね。

コムアイ いろんなリスクを考えて決めたことなので。アマゾンがどういう場所だとか、光海君とどうやって信頼関係を築いてきたのかを分かっていない人たちから何かを言われても、判断材料にならないから見なかったですね。

 あと、出産ってまじない的な部分も大きいと思うんです。産む前は、わたしに出産なんてできるはずない! と思っちゃうんですよ。やったことないから。でも、赤ちゃんもお母さんもそこを頑張って乗り越える。やれると思ってなかったことをやれるって人生の醍醐味じゃないですか。だからこそ、生命力が得られると感じたし、ことさら言霊がすごく大事だと思って、出産前は自分の中に他人の呪いの言葉を入れたくなかったです。

太田 たしかに。毒のある言葉が入っちゃうことを避けるようにしてました。日々のストレスを減らして、仕事をあんまり入れないようにしてたりとか、2人でゆっくり散歩をするようにしていたりとか。

コムアイ 楽しくしていることが、すごく重要だと思いました。妊娠してる人には、とにかくそれを大事にしてほしい。自分の直感とか、なんだか理由は分からないけど「これがしたいな」とか、「もっとこうしたら楽しいのにな」みたいな気持ちをすごく大事にして、生き生きと過ごしていただきたい。

 あ、でもこれは妊婦が頑張ることではなくて、まわりのひとや社会次第です。それがいいお産にもつながると思うし、産まれたあとの家族の関係にもつながっていくと思う。

 お母さんが楽しくしていれば、お腹の赤ちゃんが出てくる世界が楽しそうだってことを子宮にいながら体感してもらえると思うな。

写真=橋本篤/文藝春秋

〈 「簡単に別れられちゃうのは悪いことじゃない」恋人同士のままで子供を持つ選択をしたコムアイ&太田光海が、日本で感じた“違和感” 〉へ続く

(平田 裕介)

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