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紅白には筋肉ムキムキ「脳みそムキ出しスーツ」で登場…『なんてったってアイドル』で「おニャン子」を打ち負かした“小泉今日子のスゴさ”

文春オンライン / 2024年8月31日 17時0分

紅白には筋肉ムキムキ「脳みそムキ出しスーツ」で登場…『なんてったってアイドル』で「おニャン子」を打ち負かした“小泉今日子のスゴさ”

紅白には筋肉ムキムキ「脳みそムキ出しスーツ」で登場…『なんてったってアイドル』はどこが斬新だった? (画像:Amazonより)

〈 「この曲を歌えるのは私だけ」小泉今日子を“誰よりも突き抜けたアイドル”に至らしめた「最強のアイドルソング」の正体 〉から続く

「打倒・おニャン子」を目指して制作された、小泉今日子の80年代の代表曲『なんてったってアイドル』。作詞に秋元康、作曲に筒美京平を迎えたこの曲は当時、どれほど斬新だったのか? 構成作家のチャッピー加藤氏による小泉今日子の研究本『 小泉今日子の音楽 』(辰巳出版)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/ 前編 を読む)

◆◆◆

秋元康は「アイドルの偏見」を吹き飛ばしてくれることを期待

 とんねるずは1984年12月、ビクターから『一気!』をリリースし、オリコン最高19位を記録。それ以前に別のレコード会社からアニメ主題歌と企画物のシングルを2枚出している

 が、本格的なブレイクは、この『一気!』からである。

『一気!』の作詞はとんねるずのブレーンでもあった秋元であり、担当ディレクターは田村Dだった。とんねるずはその後も『青年の主張』(1985年4月、オリコン最高15位)、『雨の西麻布』(1985年9月、同最高5位)、『歌謡曲』(1986年1月、同最高2位)とヒット曲を連発。いずれも田村D担当・秋元作詞で、田村Dにとって秋元は“敵将”ではなく、一緒に面白い曲を作っていく“同志”だった。

 また秋元は、田村Dが小泉の担当になった直後に、新曲の作詞を依頼した1人である。

 A面は康珍化の『まっ赤な女の子』に譲ったが、秋元が書いた『午後のヒルサイドテラス』はB面に収録され、その後も秋元は小泉のアルバムに詞を数作提供していた。

 小泉のシングルA面を書くのはこれが初めてだったが、おニャン子に負けない強い詞を書けるのはたしかに、当時ノリにノッていた秋元しかいなかった。

 なお本曲のタイトルはCMスポンサーの富士フイルムによる一般公募が行われ、田村Dは応募作の中から、秋元とすり合わせていたイメージにぴったりの「なんてったって」というワードを選択。これをもとに、秋元は詞を書き進めていった。

 既存のアイドルが、おニャン子の登場によって存在が危うくなってきたときに(しかもそれを仕掛けたのは秋元自身なのに)「アイドルって素晴らしいんだ!」とアイドル自身が全肯定する詞を書いた秋元。「所詮、大人の操り人形でしょ?」とアイドルの存在自体が低く見られていた状況には疑問を感じていたという(松永良平『コイズミシングル 小泉今日子と50のシングル物語』)。

 小泉ならきっと、そんな偏見を吹き飛ばしてくれるに違いない。秋元は期待を込めて、どこにも忖度しない振り切った詞を書いた。当然、事務所NGが出るだろうと思っていたら、なんと通ってしまったのである。実は、事務所の社長には猛反対されたが「このままの歌詞じゃないと意味がないんです!」とスタッフが説得してくれたのだ。

 田村Dはさっそく、秋元の詞を持って筒美のもとへ。「何、これ?」と言われたが、「いやいや、先生、絶対ウケますから」とお願いすると、自由奔放な詞の世界にぴったりハマった、軽快なロックンロールが返ってきた。

 しかも、秋元が最初に書いた詞は普通にAメロから始まっていたが、筒美はサビの「なんてったってアイドル」を冒頭に持ってくるよう提案。強いワードは前へ。秋元の尖った詞をさらに引き立たせる演出に、田村Dも秋元も思わず唸った。

〈田村D「そうすると、さらにもうひと工夫したくなりますよね。急に歌から始まるのもなんなので、現場のマネージャーさんに『何かコンサートのノイズない?』とリクエストしたんです。冒頭のあの歓声は、渋谷公会堂で行われたコンサートを資料用に撮影したビデオから抜き出したもので、作り物ではなく、ファンの本物の歓声です」〉

 サビ頭だけでは飽き足らず、本物の歓声やノイズを足す。田村Dがそこまでしたのは、そのぐらい突き抜けたことをやらないとおニャン子には勝てない、と考えたからだ。

 編曲は、シングルでは『風のマジカル』以来となる鷺巣詩郎が担当。「俺にアレンジを頼むってことは、派手にやっていいんだよね?」が口グセの鷺巣は期待に違わず、明るくハッチャケたこの曲をさらに輝かせてくれた。

 鷺巣がスタジオでアレンジの作業をしているとき、その場にいたブラス担当のミュージシャンたちがこの曲を絶賛してくれたことも、田村Dにとっては心強かった。

 ちなみに途中の「You are an idol」という声の主は、当時鷺巣と同じ事務所に所属していた作曲家の亀井登志夫で、田村Dによるとたまたまスタジオに居合わせたので頼んだとのこと。

 一方小泉も、歓声で始まる曲など歌ったことがないので、入りのタイミングをつかむのに少し苦労したが、あとはサッと歌いこなしてくれたという。最後、何かひとこと欲しいという田村Dのリクエストを受け、小泉がチョイスしたのが「バイバーイ!」だった。

 ありがちな熱いセリフで締めるのではなく「ハイ、悪ふざけはこれでおしまい!」とサクッと終わらせるところが、いかにも小泉らしい。

オリコン初登場で1位を獲得

 おニャン子の“素人旋風”に対するカウンターとして、プロのアイドル・小泉が底力を示してみせた『なんてったってアイドル』は、オリコン初登場で1位を獲得。

 年暮れの紅白歌合戦で、発売から間もないこの曲を歌った小泉は、歌詞の内容とまったく関係ない全身筋肉ムキムキ、脳がムキ出しの衣裳で登場した。途中でその衣裳を脱ぎ捨てると中はお花畑……と文章で書くとますます訳がわからないが、そんな演出が成立するアイドルは、小泉今日子だけだ。

 ただ、ここまで突き抜けてしまった先には、いったい何があるんだろう? 余計な心配をしてしまったのは、私だけではなかったと思う。

(チャッピー加藤/Webオリジナル(外部転載))

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