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27歳姉、19歳妹を次々と…酸鼻を極める犯行後、男が選んだ「意外な行動」《大阪姉妹連続殺人事件》

文春オンライン / 2024年9月22日 17時0分

27歳姉、19歳妹を次々と…酸鼻を極める犯行後、男が選んだ「意外な行動」《大阪姉妹連続殺人事件》

山地悠紀夫

平成17年に発生した大阪姉妹連続殺人事件。その犯行内容は酸鼻を極める残忍なもので、かつ犯行直後の犯人の行動は、第三者から見ればいささか不可解な点が目立ったという。ノンフィクションライター、小野一光氏が事件を振り返る。

◆◆◆

 まぶしい新緑の生い茂る丘の中腹に、その霊園はあった。大阪府下の某所。訪ねたのは今年4月6日のことだ。

 永代供養墓の一画にある四角い大理石の墓標には、「上原家」の文字と、そこに眠る3人の名前が刻まれたプレートが貼られている。

 父の上原和男さん(享年67)と、娘である明日香さん(同27)と千妃路さん(同19)の姉妹だ。最近も誰かがお参りに訪れたのだろう。真新しいカーネーションが添えられている。

 各々の生没年月日が記されており、姉妹については没年月日が同じ日付だ。

 平成17年(2005年)11月17日。

酸鼻を極める事件

 いまから約18年前、大阪市内の自宅マンションで事件に巻き込まれ、ふたりの無辜の命は奪われた。

 犯人の名は山地悠紀夫(享年25)。07年5月に控訴取り下げによって死刑が確定し、09年7月に大阪拘置所で死刑が執行されている。

 その犯行内容は酸鼻を極めるものだ。

 事件当日、大阪市浪速区内のマンション4階に住んでいた明日香さんに狙いをつけた山地は、午後10時頃に忍び込んだマンションの非常階段で、同市内のラウンジで働く彼女の帰宅を待ち伏せた。明日香さんは山地を知らなかったが、彼が一方的に彼女を見初めたことによる、計画的な犯行だった。

 待ち伏せて約4時間後の午前2時頃、仕事を終えて帰宅した明日香さんが玄関ドアを開けた瞬間、山地が背後から彼女を室内に突き飛ばすと扉を閉めた。起き上がろうとする明日香さんの左頬を躊躇なくペティナイフで刺し、奥の部屋へと連れていくと、さらに腕などを突き刺す。

 抵抗できなくなった明日香さんを強姦した山地は、瀕死の彼女をベッド上に放り投げている。そこで一旦たばこを吸おうと、彼が玄関近くに移動したところで、誰かがドアを開錠する音がした。

 それは、姉と別のラウンジで働き始めたばかりの妹、千妃路さんが帰宅する物音だった。

 咄嗟に玄関脇に身を隠した山地は、室内に入った千妃路さんの口元を右手でふさぎ、左手に持ったペティナイフを、おもむろに彼女の心臓めがけて突き刺した。

 そこで山地は、悶絶して倒れた千妃路さんを奥の部屋に引きずっていくと、姉と同じように強姦したのだった。

 それからの彼の行動は、大阪地裁で開かれた一審での判決文に詳しい。

〈被告人(山地)は、ベランダに出て、たばこを吸った後、奥の部屋に戻り、被害者姉(明日香さん)、被害者妹(千妃路さん)の順に、逆手に持ったナイフを胸部目掛けて体重をかけて突き刺し、各被害者を絶命させた。その後、被告人は、ライターで部屋のカーペットに火を付け、室内にあった現金等をポケットに入れて持ち去り、玄関ドアの鍵を閉めて同室を出た〉

 室内から煙が出たことで午前3時過ぎに火災報知機が作動し、消防車が駆けつけた。消防隊員が室内に入ると、明らかに刺し殺された姉妹の遺体があったため、すぐに警察に通報。殺人事件としての捜査が始まった。

 捜査にあたった大阪府警は、時間を置かずに山地が事件に関わった疑いが強いことを突き止めている。というのも、室内に残されていた指紋と掌紋が、同年3月に岡山県内で逮捕された彼のものと同一であることが判明したからだ。

 じつはその時点で、山地はパチンコの不正操作を行う“ゴト師”集団Aの一員だった。福岡県に本拠を置くAが、岡山県瀬戸町のパチンコ店に遠征していた際、山地だけが窃盗未遂容疑で逮捕され(後に起訴猶予処分)、そこで指紋などを採取されていたのである。

 岡山県警から釈放された山地は、共犯者についての供述を一切しなかったことから、ふたたびAに迎え入れられ、大阪市で事件を起こす直前まで、同市内に遠征中だった。その際にAのメンバーが根城としていたのが、被害者の姉妹が住んでいたマンションの6階であったことから、山地が被害者をあらかじめ知って狙ったものと見られている。

犯行直後の意外な行動

 犯行直後の山地は、コインランドリーで血まみれの服を洗い、現場から200mほどしか離れていない公園で寝ていた。さらに彼曰く、「地元の新聞でいちばん詳しい捜査情報を知る」必要があるとして、大阪を離れることはなかった。

 捜査員が山地の身柄を確保したのは、犯行現場から500mほどしか離れていない、大阪市浪速区内でのこと。12月4日の深夜、閉店間際の銭湯を出て、100円ショップに立ち寄った彼を捜査員数人が囲う。自分の名前を告げられた山地は、「完全黙秘します」と返した。しかしそれから抵抗することはなく、犯行現場のマンションに隣接するビルへの建造物侵入容疑で逮捕された。

 事件当日、山地は現場マンションに侵入するため、隣のビルの配管をよじ登っており、彼の指紋が残されていたのだ。もちろん、逮捕の主目的が建造物侵入でないことは明らかだったが、捜査員から逮捕容疑を告げられた際の山地は、「その件でしたか」と安堵の表情を見せていたという。

 逮捕時の山地は、新しいリュックサックの中に漫画本と洗濯した衣類を入れていたが、それ以外にも、被害者の姉から奪った小銭入れやジッポライターなどを所持していた。取り調べでは黙秘を続けていた彼だが、その入手経緯についての追及を受け、逮捕から13日目の12月18日に姉妹を殺害したことを認めた。そして翌19日に、姉妹への殺人容疑で再逮捕されたのだった。

本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(「 「みんなから愛された姉妹は帰宅直後に殺害された……」 」)。

 

■電子版オリジナル連載  小野一光「平成凶悪事件と『その後』」

● 「みんなから愛された姉妹は帰宅直後に殺害された……」 平成17年 大阪姉妹連続殺人事件篇
● 「犯人逮捕を喜ぶはずの遺族の周辺から『結末に納得がいかない』との声が……」 平成15年 福岡一家4人殺人事件篇
● 「『そこ写すなって言ってんだろ!』と報道関係者に怒りをぶつけた畠山鈴香」 平成18年 秋田児童連続殺人事件篇
● 「すぐに死刑というふうにしないと。おかしいやろ、税金でメシ食わせるのって……」 平成16年~17年 福岡3女性連続強盗殺人事件篇

(小野 一光/文藝春秋 電子版オリジナル)

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