「単に偏差値が高い人間が集まる場所ではなくて…」不登校で高校を中退した男性が東大入学後に感じた“意外な魅力”とは
文春オンライン / 2024年9月22日 17時0分
東京大学に入学するのは毎年3000人程度。うち、およそ2000人は“名門校”(毎年のように東大進学者を5人以上輩出する高校)の出身者で占められているという。そんな環境の中、異彩を放つ活動を繰り広げているのが、“非進学校”出身者のみが入会できるサークル「UTFR(the University of Tokyo Frontier Runners)」だ。
名門校出身ではない生徒は東大でどんなことに困るのか、彼らのためにUTFRはどんな活動をしているのか、そして周囲に同じ目標を持つ人が少ない環境からどのような経緯で日本最高峰の偏差値を誇る東京大学へ入学を果たしたのか。
◆◆◆
非進学校出身者だからこその“ハンデ”
――難波さんが東大にたどり着くまでの道のりを教えてください。
難波 中学受験をして横浜市立南高校附属中学校に入学したんですが、提出物の管理などが苦手で学校にうまく適応できず、不登校になってしまいまして。中高一貫校だったので、そのまま高校に進んだものの、結局中退を決断しました。その後、高卒認定試験を受けて、一浪を経て東大へ入学といった流れですね。
――高認取得から東大合格は珍しい経歴だと思いますが、具体的に受験勉強において大変だったことはなんでしょうか?
難波 環境ですかね。東大に毎年合格者を輩出するような進学校に通っていれば、一緒に頑張る仲間やライバルがいたり、相談する身近な先輩がいたのではないかと想像するのですが、基本的に同世代にはそういう人がいませんでした。家族と、塾の先生だけが頼りでしたね。
――東大入学後も、非進学校出身であることがハンデになるのでしょうか?
難波 もちろん個人の努力次第だと思いますが、情報量の格差はどうしても感じますね。たとえば私の場合、東大に入学するまで、駒場キャンパスと本郷キャンパスがあることさえ知らなかったくらいで。
あと、東大では2年生までの成績をもとに、3年生以降の専攻を決める“進振り”という制度があるんですが、これが極めて厳密なシステムで、どうすれば希望の科に進めるか、詳細はわかっていませんでした。身近に東大生がいないと、特に入学直後はどのような学生生活を送ればよいかイメージしづらいというのは、どうしてもあります。
それから進学校出身者は先輩後輩のつながりから、入学早々、当然のように試験対策プリントなどを持っていたりするので、そういう格差も感じますね(笑)。
――東大が身近ではなかったとのことですが、難波さんが惹かれた理由は何でしょうか?
東大を目指したきっかけ
難波 昔から数学が好きで、研究者になりたいという夢があったのが大きいですね。
塾の先生に相談してみたら、「数学をやるなら、国立の最高峰である東大に行ったほうがいいよ」とアドバイスをもらって、東大を目指し始めました。浪人時代、どうしても東大に入学したいというモチベーションを維持できたのも、その先生の言葉でしたね。
――現在、UTFR代表として活動されている難波さんですが、サークルを運営していて印象的だった出来事を教えてください。
難波 UTFRでは東大生を身近に感じてもらうために、メンバーが中高生の相談を受け付ける活動をしています。去年、そのオンライン相談会に参加してくれた高校生がいたんですが、その子が今年東大に入学し、UTFRに入ってくれたのは印象深い出来事ですね。
「自分は東大に縁がない」と思っている中高生に、東大を身近に感じてもらえたらと思って活動しているので、とても嬉しかったです。
――難波さんが感じる東大の魅力を教えてください。
難波 同級生の思慮深さに圧倒される環境でしょうか。試験対策のために集まったときでも、何気ない日常会話でも、「やっぱり賢い人たちだな……」と心から感じられますし、そうして刺激をもらえる点は、入学して本当に良かったなと感じます。自分がこれまで出会わなかった考え方、思いつきさえしなかった思考回路にふれることができると、世界が広がっていきますから。
だから、東大は単に偏差値が高い人間が集まる場所ではなくて、そこで揉まれることで人間的にも成長できる場所だと私は考えています。非進学校に限定したサークルの代表が言うのも変ですが……東大はどんな学校の出身者でも要件を満たせば受け入れてくれる度量もありますし、たとえ身の回りに東大生がいない人であっても、簡単に諦めるのではなく、挑戦してみる価値が十分あるのではないでしょうか。
【 つづき 】では同サークル所属の柴田翠國さんのエピソードをご紹介。
〈 「受験期の“苦労話”をあまりしないですね」非進学校から東大に入学した男性が感じた“名門校出身者”の“ある特徴” 〉へ続く
(黒島 暁生)
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