志村三丁目で見つけた“環八最北端の店”「立ち喰いそば・うどん石かわ」 沼津の鰹出汁がきいた「なす天そば」が絶品だった
文春オンライン / 2024年9月24日 11時0分
2年半前、予防接種を受けた際に手足が痺れ神経痛になってしまった。
リハビリでもしようと思い、何か良い企画がないかと考えていた時、ふとあるアイデアが降りてきた。「環八通り沿いに立ち食いそば屋は何軒あるのか?」
環八(東京都道311号環状八号線)とは、東京都大田区羽田空港から北区赤羽に至る半円の環状道路だ。「東京都市計画道路幹線街路環状第8号線」に由来し、その構想は大正12(1923)年の関東大震災後の「大東京都市計画道路網」に始まる。昭和21(1946)年の「戦災地復興計画方針」で決定され、高度経済成長期に工事は本格化。平成18(2006)年に全線開通となった。
環八と聞けば主要幹線道路を短絡する便利で重要な幹線道路で、沿線には大きな工場やショッピングモールなどがあるのだろうと想像していた。それなら立ち食いそば屋もあっていいはずだというわけである。正直、環八を意識的に散策したことはあまりなかったので、沿線にはどんな街並みが続いているのかも大変興味があった。まだ残暑が続く9月、計画を実行することにした。
〈環八の歩き方・実施方法
・赤羽岩淵から出発して、そのまま環八の内側(羽田方面)の道路の歩道を歩く。
・高架やトンネル部分は側道を歩く。
・脇道に面した部分にある店はカウントしない。
・何日かに分けて終点の羽田付近まで徒歩で移動する。〉
9月4日、午前10時過ぎ、晴れ。JR赤羽駅に降り立った。実は一人で歩くのも心細いと思い、友人のB氏に連絡。「赤羽から立ち食いそばを食べる散歩をしないか?」と言葉巧みに誘い出すことに成功した。
赤羽岩淵に進む。そして北本通りから都道311号線になる交差点に到着した。ここが1日目のスタート地点である。
スタートすると6分後に、京浜東北線・東北本線の高架「環状8号線架道橋」が現れる。しかし、この辺りは通常の広い道路という程度で飲食店があるわけでもない。人はほとんど歩いていない。スタート地点から1キロほど進んだ所に、ようやく「からやま北赤羽店」、「すし銚子丸赤羽店」が現れた。北赤羽付近はマンションなどが多く落ち着いた雰囲気だ。しかし、立ち食いそば屋はない。
浮間中央通りの起点となる交差点を過ぎると「NISSAN販売店」などが現れて活気が出てきた。起点から2.6キロまでくると、「くら寿司」や「ヤマダデンキ」などが入るショッピングモール「セブンタウン小豆沢」が現れた。その反対側には「とんでん」もある。そして起点から3キロの所が、国道17号中山道との大きな交差点だ。さすがに車の通行量が多い。
歩くこと1時間...ついに志村三丁目で立ち食いそば屋を発見!
国道17号中山道の交差点を渡るとMEGAドン・キホーテが現れる。この辺りが今までで最も賑わっているエリアだ。そして初めてラーメン屋「らあめん花月嵐志村店」が現れる。道路の反対側には「リンガーハット環八通り志村店」のかわいい屋根。
9月とはいえ、気温はすでに33度を超えている。歩き始めて1時間過ぎた所で、ついに「立喰そば・うどん石かわ」の黄色い看板を発見した。環八に面している、1つ目の立ち食いそば屋だ。
「立喰そば・うどん石かわ」は年配の夫婦が切り盛りするカウンタースタイルの店である。平成15(2003)年の創業だ。自家製の天ぷらがうまく、静岡県沼津市から仕入れる鰹節などの出汁で作った絶品のつゆを丁寧に一杯ずつ温めて提供している。そばうどんは浮間にある製麺所から仕入れている。
自分は「なす天そば」(400円)、同行のB氏は「げそ天そば」(450円)を注文。すぐに登場したのでつゆをまずひとくち。これは評判通りの絶品のつゆである。そばも茹で麺とは思えないコシがある。「げそ天そば」も「げそがゴロゴロした天ぷらでうまい」とのこと。
「赤羽から環八を歩いて来た」と女将さんに話したら「あらすごい。でも赤羽は意外と近いでしょ」と言われて少しズッコケた。
車利用者より近隣のオフィスに勤める人や、近所のおばさんなどが常連のようでアットホームな雰囲気の店だった。天ぷらは春菊天もうまいらしいし、冷しそばは生麺を茹でて作っているというのでまた食べに来ようと思う。
約5.5キロを歩き続け見えてきたものは…
「石かわ」で少し休憩してから、環八通りの散歩を再開した。この辺りは、左手に武蔵野台地の高台がありその崖の下をずっと歩いている。都営三田線の架橋を通過すると「バーミヤン板橋相生店」や「ラウンドワンスタジアム板橋店」などの施設が点在する。少し樹木の緑が増えてきたように思う。
そこを過ぎると環八は板橋相生陸橋となり、首都高速5号池袋線の下を通過する。ここが起点から4キロほど。道が徐々に登り坂になっていく。このまま進むと環八本線は「北岡若木トンネル」へと入っていく。この辺りは武蔵野台地を登っていくような急勾配で静かな住宅地が広がっている。
トンネルに入ると側道は標高的にはピーク地を超えて徐々に下っていく。そして、東武東上線上板橋駅近くを横断する歩道陸橋に入って行く。ここまで起点から約5.5キロで、2時間が経過していた。飲食店などはほぼなく、立ち食いそば屋もない。同行B氏は猛暑でギブアップ。はやく「ハンセー会(飲み会)」をしようと促され、1日目はあえなく終了となった。
1日目のまとめ・立ち食いそば屋は1軒のみ
1日目の赤羽岩淵~上板橋までのまとめだ。この区間は武蔵野台地の崖下と荒川の間を歩くコースだった。北赤羽地域や小豆沢地域には回転すしやセブンタウンなどの商業施設があったが、上板橋に近づくにつれて、高架になりトンネルに入るため、飲食店はどんどん少なくなっていった。
立ち食いそば屋は1軒。街そば屋は0軒だった。ついでにラーメン屋はリンガーハットを含めれば2軒。とにかくそば屋が少ない。なぜだろうか。これは羽田まで踏破したところで考察してみようと思う。環八の賑わいはこんな静かな状況ではないはずだ。2日目以降に期待しよう。さて、まずはハンセー会だ。
INFORMATIONアイコン
立喰そば・うどん石かわ
住所:東京都板橋区志村3-18-10
営業時間:月~金 6:30~17:00
定休日:土日祝
(坂崎 仁紀)
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