父の会社が倒産して借金1億円→野草を食べる壮絶な極貧生活→10代で2度の自殺未遂…美女コスプレイヤーが語った、波乱万丈すぎる半生
文春オンライン / 2024年9月22日 11時10分
コスプレイヤーのミンミコさん ©三宅史郎/文藝春秋
〈 “無職の父”は家族がいるのに自慰行為、“認知症の祖母”は糞尿まみれで大暴れ…美女コスプレイヤーが語る、学生時代の過酷すぎる家庭環境 〉から続く
コスプレイヤーとしてコミックマーケットに参加した当日に実家が全焼したという、ミンミコ。
そんな彼女に、野草を食べて空腹をしのいだ大学時代、高校と大学それぞれで起こした自殺未遂、認知症であった父方の祖母が起こしたボヤ騒ぎなどについて、話を聞いた。(全3回の3回目/ 1回目から読む )
◆◆◆
野草の本を片手に食べられる草を摘んでいった
――大学に入っても、困窮生活は続いていたわけですか。
ミンミコ 父親がまったく働かないので、大学に入っても変わらずですね。バイトも続けてました。定期代がなくて、バイト先のお客さんに借りたこともあったし。これは申し訳なくて、慌てて返しました。
21歳のときに、お風呂の給湯器が壊れたときも辛くて。壊れたというか、外れたというか、給湯器がボコッと壁ごと取れたんですよ。もはや、お風呂場の壁が崩れた感じで、ちょっとした露天風呂に変身ですよ。でも、ほかに体を洗う場所がないからしかたなく使ってましたけど。がんばればキッチンからホースでお湯を引けるんです!
――食べるものに困って、野草を食べていたそうですけど。
ミンミコ それも同じ頃ですね。普通にお金がなかったので、野草の本を片手に「これは食べられる。これは食べられない」って摘んでいって。
大学の食堂に置いてあったドレッシングをかけて食べて。これが、けっこうイケて。シーザーサラダドレッシングがおすすめです。
「精神科を受けよう」と父に言っても「俺はおかしくない!」
――ちなみに、父親は精神的に病んでいたりはしていなかったのですか。
ミンミコ 私たちも、父親はメンタルに支障が出てるんじゃないかって考えたんですよ。
で、「精神科を受けよう」って父親に言うんですけど「俺はおかしくない!」と怒ってしまい、父は体が大きいから引っ張っていくわけにもいかなくて。その反応をする時点でどこかしらおかしいんですけどね。
なんとか脳神経外科で診てもらったことがあったんですよ。脳梗塞などで脳に障害が生じているとかだったら、仕方ないと飲み込めるところも大きいなとおもったんです。
私が子供の頃は優しいお父さんだったので、もし治る病気ならいいなという希望もありました。
「文字がバラバラになっていく」ストレスで識字障害に
――脳神経外科医の診立ては。
ミンミコ 「異常なしです」って。お医者さんの前で私は大泣きですよ。
病気だったら「しかたない。みんなで支えあっていこう」って割り切れるけど、いたって健康なわけですから。そうなると、「もう無理」という気持ちに拍車が掛かりますよね。
――父親は、見た目も健康的だったのですか。
ミンミコ 眼窩は落ちくぼんでましたね。年齢のせいかもしれませんが。あと、服装には違和感がありました。上はタンクトップしか着なくなったんですよ。
もともと見た目に気を使う方ではなかったとは思いますが、そういうところに拍車がかかった感じです。どこか健康そうに見えるのとは外れていた気がします。
――ミンミコさんは、ストレスから識字障害になったそうですね。
ミンミコ 一時的に。文章を読むじゃないですか、そうすると2行目あたりから組んである文字列がバラバラになっていくんですよ。
2回自殺しようとしたけれど…自分わりとしぶとくて
――自殺未遂の経験が2回あるそうですが、それについてもうかがっていいですか。
ミンミコ 最初が高3のとき。家が大変だけど、その不満を親にバーッと言えないし、そうなると学校でも不安定になって、周りの子たちともうまくいかなくなるし。家にも学校にも居場所がなくて、常に戦場にいるみたいな感じで。
――「なんてことをしたのだろう」みたいな思いは。
ミンミコ いや、ただただ「失敗したな」って。あと、サイゼリヤのほうれん草のソテーがメッチャ美味しく感じたんですよ。出血したあとのほうれん草って、本当にうまいんだなって。あのとき食べたほうれん草のソテーよりおいしいの、食べたことがない。
――2回目は大学のいつごろ?
ミンミコ 1年かな。やっぱり大学1年生とかって、けっこう明るい時期じゃないですか。周囲は「彼氏できた」とか「友だちと遊びに行って」とか「新歓コンパで」って言ってるときに、私はバイトと家のことがあるから、そこには入れない。そういうのもけっこうきて、2回目を。でも、自分わりとしぶとくて。自分、思ったより頑丈だったんだなって。人ってあんまり死ねないなって。
多分、自殺って衝動的にやってしまうタイプと、理性的にそろそろ生きてたくないなと判断して実行に及ぶタイプに分かれるんだろうなと思います。私は後者だったので、痛みも恐怖もあって絶命には至らなかったですね。
それから、自分で死ぬのはちょっと厳しいなって。
認知症の祖母がボヤ騒動を起こして…
――「家にも学校にも居場所がなくて、常に戦場にいるみたいな感じ」だったとのことですが、そんななかでも現実逃避できることや拠り所みたいなものはありませんでしたか。ゲームが好きだと話していましたが。
ミンミコ 本が好きなんで、夜に家の外で読書してましたね。家は本を読める環境じゃなかったんで。コンビニか自販機の光を頼りにして。セブン-イレブンのゴミ箱の横に、無料の求人誌を敷いて、そこに座って黙々と。あと、やっぱりゲームとアニメですね。
――おばあちゃんに関して、行政に相談したりは。
ミンミコ 行政は、最後の最後でお世話に。おばあちゃんが家に火つけて、それで施設に入ったんです。
――どうして火を。
ミンミコ タバコの不始末。危ないから、ライターを渡さないようにしていたんですよ。そうしたらコンロで火をつけて、そのまま火を消さずにいてボヤを起こしちゃったんです。
それから、1年か2年して亡くなりました。
――病気ですか。
ミンミコ めっちゃ元気だったんですけど、認知症だったから脳の機能低下に合わせて、体の機能も落ちていって。
上京しても就職はせずにコスプレ配信
――そして、家が差し押さえられると。
ミンミコ 大学を出る年に。いきなりでしたね。私、通知書とか一切目にしてなかったのでびっくりして。おかあさんも知らなくて、父だけ把握してたんですよ。私は上京するつもりだったので、お母さんの実家にしばらく住んでから、2022年3月に東京へ出てきて。おかあさんも差し押さえを機に、ようやく父と離婚して自分の実家へ。
そこで、私は父とは縁を切ってます。
――東京で就職を。
ミンミコ してないです。就職活動してるような時間もなかったですし、学校に馴染めたこともなかったので60歳まで同じ会社で同じメンバーと勤め上げる環境にも後ろ向きな気持ちもあって。コロナピークの時期だったので、周りもかなり就職は難儀してました。
あと、コロナの影響でバイト先が代わる代わる全部軒並み潰れて、配信をするようになってもいたので、この流れで食べてはいけるだろうなと言うのはありました。新卒の初任給よりは収入があったので、コロナ抜けた時に金銭的に不安定であれば就職とか考えてもいいのかなと。
上京してからコスプレを始めて、コスプレ配信とかからだったんですけど、おかげさまで今はコスプレイヤーとして安定した生活を送らせていただいています。
コミケ当日に実家が全焼したあと、150万円の支払い請求が…
――そして2023年12月末、コミケでコスプレをする日におかあさんの実家が全焼してしまう。解体費とか払わないといけないですよね。
ミンミコ 「片付けるので、150万」とか支払い請求が来て、私たちが払うという。
――それでも、実家全焼でバズってトントンってわけにもいかないですよね。
ミンミコ バズったおかげで解体費はまかなうことができました。
――いろんな出来事を振り返ると、家族観に影響が及んでいるのではないかと。
ミンミコ 人に甘える、みたいな感覚が分からないんです。困ったら帰れる場所もないし、金銭的にも支える側で。
だから、周囲の人間と話していたりして家族の話などが出るとすごく羨ましいです。特に父親の話は。
――おかあさん、現在はどんな様子ですか。
ミンミコ 火事のあとパニックはたまに起こすようになってしまっていてとても心配だったのですが、最近やっと新しく働き出すことも決まってもとの生活に戻れつつあります。この10ヶ月ほどは本当に大変でした。
――大きなお世話ですけど、再婚とか。
ミンミコ 全然できると思うんですけど、男の人が気持ち悪いって言うんですよ。父親があれだったのでしばらくは難しいのかなと思います。やはり心の支えになってくれる人が側にいてくださるなら、私としてもとても安心できるんですけど。
相手から好きと言われると気持ち悪く感じてしまう
――ミンミコさん自身は、結婚願望は。
ミンミコ 遠くない未来に結婚したい気持ちはあるんですけど、相手から好きって言われたら、失礼なのですが、気持ち悪く感じてしまうんです。カウンター攻撃食らったみたいな。父の影響で、私も母と同じ感じになっているんです。
だから自分から好きになったあとに、相手が好きになってくれるという行程を踏まなくては成立しない気がします。
そんなに稼がなくてもいいから、散財しなくて、家のこともやってくれる人がいいですね。
――ミンミコさん、20代そこらで経験してきたことの質量が、ちょっと凄すぎますよね。
ミンミコ この7年間、地獄でしたね。自分の住んでた家、2回も無くしてますから。
「よくぞ生きてきたな」と自分で自分を褒めてます。
撮影=三宅史郎/文藝春秋
(平田 裕介)
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