小泉進次郎は「知的」の青、高市早苗が上下を黒で統一した理由は…総裁選の“三つ巴”候補者たちが「どう見られたがっているか」を服装から読み解いた
文春オンライン / 2024年9月23日 7時0分
©︎JMPA
2024年の自民党総裁選は過去最多の9名が名乗りをあげ、演説会では舌戦が繰り広げられています。しかし近年は、政策だけでなく各候補の「イメージ、見た目の印象」が勝敗に大きく影響することが知られてきました。
今回はその「見た目の印象」に特化して、総裁選の候補者たちがどのような印象を与えようとしているか、何をアピールし、どんな弱点をカバーしようとしているか、など各陣営の思惑を推測してみます。
まずは事前の報道で「三つ巴」と言われる高市早苗さん、小泉進次郎さん、石破茂さんを見て行きましょう。
高市さんは「より細く、背を高く見せる」黒一色コーデにレフ板かわりのパールのネックレス
高市さんは今回の総裁選のデフォルトスタイルに「黒の丸首シャツと黒のスカート」を選択しました。
色彩心理学的に言うと黒は決して地味な色ではなく、威厳と重厚感を発揮します。さらに黒一色でトップスとボトムス上下を統一することで、縦長の錯視効果が生まれ、より細く、背を高く見せることに成功しています。
実はもう1人の女性候補の上川陽子さんも、黒の丸首シャツと黒のスラックスを選択しています。
そして2人とも日本人女性のフォーマルの象徴であるパールのネックレスをつけることで、丸首シャツだけだと軽装に見えかねないところ、格を上げる意図が見えます。
黒の丸首に白のパールを重ねると、顔周りがイキイキした雰囲気になります。写真撮影時には、パールがレフ版のような効果を発揮し、顔色も明るくなるのです。高市さん自身の表情も豊かで明るいことで、相乗効果もありそうです。
高市さんは、ボトムスにパンツルックを選ぶ印象がなく、スレンダーな美脚が引き立つ膝丈のスカートと黒のパンプススタイルです。男性からは異性として見られつつ、女性には憧れの対象に見えるような印象を目指しているのでしょうか。
高市さんは、この黒の上下スタイルをベースに、ダークブルーのテーラードのジャケット数種を使い分けながら、たまに白のジャケットを羽織っています。男性がネクタイを変えるように、ジャケットで変化を演出しているのです。
ジャケットはネクタイより面積が大きいので、戦略的に使い分けることで印象をがらっと変えるパワーを発揮します。
今は、全国行脚で党員1人1人に訴える時期なのでで、親しみやすさを前面に出した丸首なのでしょうが、いざ総理となった時のイメージがつきづらいというマイナスの効果もあります。
Vゾーンを意識したシルクのブラウスなどでシックな雰囲気をまとえば、高市さんのフェイスラインのシャープさにマッチして、男性議員のスーツ姿に負けない服装の「格」になりそうです。
小泉進次郎は「知的」の青をイメージカラーに「総理感」をアピール
小泉進次郎さんは、強烈に鮮やかで深い青をイメージカラーに掲げています。
青は色彩心理学的に、ズバリ「知的」、そして「信頼」。立候補会見でも「知的レベルが」という質問を受けるなど揶揄される中で、ノンバーバル(非言語)の面からも知的な姿を印象づけたい意図を感じます。
ネクタイも青系統の色を選んでいます。小泉さんは以前から青系統のネクタイを身に着ける機会が多かったですが、他の候補者と並ぶと、鮮やかさがさらに引き立ちました。
ネクタイの締め方にも、特徴が見られます。他の候補者がウインザーノットという大きなファッション性の高い締め方で威厳を出す中で、小泉さんは世界の首脳たちが、公式の場でまとうシングルノットを選択しています。
きゅっと締め上がった小さな結び目も知性や覚悟の印象を与えます。
出馬会見などここぞという場面では、光沢のあるシルク素材、柄はソリッド(無地)を選んでいます。ソリッドも、世界の首脳たちのデフォルトで、国際会議の場に立つことがイメージできる姿を押し出しているのでしょう。
加えて小泉さんはジェスチャーが秀逸です。感情に任せたジェスチャーをする候補者が多い中で、小泉さんは1つ1つの動作に意味を持たせ、力強くシンプルに使いこなしています。
目力が強くキリッとした表情が多いですが、時に憂いを感じさせるのも特徴です。自民党の所見発表では実母との葛藤という悲嘆を明かし、聴衆のショックと共感を誘いました。
人間は一般的に他人の幸せより、悲嘆や辛い体験談に心を揺さぶられます。つい自分の能力や功績を誇りたくなる総裁選で、あえてネガティブな感情を表明したセンスは他の候補者にはないものです。
発声も腹式呼吸で安定していますが、演説は言葉の冒頭にインパクトがある節を置いているようです。話が伝わるかどうかは、内容だけでなく話し方によって大きく変わります。質疑応答時の会話調の発言が印象に残るのも、余裕を持って自分の言葉で話しているからでしょう。
石破茂さんは「怖い」と言われる目を眼鏡でカモフラージュ、キャラと演説のギャップも
小泉さんが戦略を立て、非言語の部分でも「総理」「総裁」というイメージを纏おうとしているのに対して、石破さんは対照的です。
朴訥とした話し方で、SNSでも「素」の部分で、有権者と目線が近い身近な存在であることをアピールしています。
前々回の総裁選で敗れて以降、石破さんは時々眼鏡をかけるようになり「目が怖いと言われる」と自虐的にも語っていた印象を、優しげに緩和させました。ネクタイは濃い青をベースに細い白や水色のストライプ数種を使いまわしています。宇宙戦艦ヤマト好きであることを公言しているので、青い空や海の色をイメージしているのでしょうか。
服装からは特に際立った特徴や戦略は感じられないものの、キャラクターが出来上がっていることに自信を持っているのかもしれません。眉毛を整えただけで話題になるのも、石破さんならではと思われます。
しかしいざ演説となれば、隣国の脅威や自衛隊の憲法9条への明記に踏み込み、そのエキスパートぶりを堂々と語ります。
原稿を一語一句間違わずに綺麗に読もうとするものより、自分の言葉で、感情を込めて相手に語りかける方が、聴衆に「自分に話し掛けられている」と感じさせることができます。テレビ討論などで朴訥と話す印象と、鬼気迫る演説のギャップは人気の理由の1つでしょう。そこにキャラ立ちした石破節ありです。
共同通信の世論調査によると、総裁に求められている資質は1位の「政策や理念」に続いて、2位は「リーダーシップ」。リーダーシップを印象づけるには何が必要か。世界で日本のプレゼンスを高める存在として何が求められるか。これからが楽しみです。
〈 《全員チェック》自民党総裁選の候補者たちの“勝負服”は何アピール? 上川陽子はスカートではなくパンツ、茂木敏充のピンストライプは実は… 〉へ続く
(乳原 佳代)
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