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「罰が当たればいい」大バズりした暴露系配信者が魅せられたお金よりも“厄介なもの”

文春オンライン / 2024年9月26日 6時0分

「罰が当たればいい」大バズりした暴露系配信者が魅せられたお金よりも“厄介なもの”

 一時期、暴露系配信者は、隠された“悪事”を暴くダークヒーローのようにネットユーザーから絶大な人気を博していた。だが、行き過ぎた処罰感情を煽ることや、時には誤報の流布により取り返しのつかない事件に発展することから、問題視もされてきた。

 そんな暴露系配信者が“そっち側”に足を踏み入れる理由とは一体なんなのだろうか。正義感、復讐心、高額な収益……人によって様々だとは思うが、『死ぬまでバズってろ!!』(ふせでぃ著)で描かれる暴露系配信者は、それよりも厄介な“あるもの”に魅せられてしまっている。

▼▼▼

 主人公はバツイチの貧乏フリーター・浅野。パスタ屋でアルバイトをしながら、「タパ子」の名で動画配信を行い小銭を稼ぐ日々。このパッとしない人生から一発逆転できるような何かが降ってきてくれたらと願う彼女だが、そんなある日奇跡が舞い込む。それは、配信中に偶然遭遇した交通事故である。

 ある夜の配信中、なんとなく目についた道端で泥酔している男性。気になって後を追うと男性は車に乗って飲酒運転をし始め、挙げ句の果てにはバイクと衝突事故を起こしその場から逃走してしまう……。そんなショッキングな一部始終を目撃したタパ子は最初は恐怖で震えるものの、その全て握っている自分自身に微かな高揚感を覚えてしまうのだ。

 結果、彼女は一連の事故動画をSNSに投稿するのだが、その様子はそれまでの雰囲気とは打って変わり、怖いくらいに静か。まるで二度と引き返せない地獄の門が開いたかのようで、それがとても恐ろしい。

人生で初めての“バズ”を経験

 それから数時間後、いいねとフォロワー数の急増、テレビ局からのDM、さらには自分の投稿がトレンド1位になるなど、人生で初めての“バズ”を経験する。動画の収益に期待を膨らませるタパ子だったが、加害者が有名人であったこと、そしてテレビで自分の動画が流れた時に、お金よりも遥かに自分の心煌めかせる“アレ”に目覚めてしまう。

――“私”の動画が流れている、“私”の名前が放送されている……

 つまり、承認欲求が満たされる快感である。

倫理観さえも抜け落ちていく

 以降、痴漢の常習犯を撮影してネットに晒すなど、更なる過激な“バズ”を求めるようになるタパ子。フォロワーが増えると共に彼女に恨みを持つ人も増え、暗雲立ち込めるようなサスペンス展開が彼女を待ち受ける。同時に、いつの間にか人の心はおろか、倫理観さえも抜け落ちていく彼女の姿に恐怖を覚えるが、 1巻 を読み終えた時に本当の怖さは別のところにあると気づく。

 それは、タパ子に恐怖し軽蔑するあまり、いつか転落すれば良いと彼女に罰が当たるのを願っている自分自身……。きっと今の私の顔は、タパ子の配信で自分の正義を信じ、処罰感情を満たしている視聴者と何も変わらない。自分には関係のない話だと思いながらも、読後に抱くこの薄暗い感情がある限り、決して彼女とは無関係ではなくむしろ地続きであり、例えるなら彼女の配信の中にいるような気がするのだ。それが『 死ぬまでバズってろ!! 』の一番怖いところなのかもしれない。

(ちゃんめい/文春コミック)

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