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「アメリカ領土に自衛隊の基地を作れ」石破茂・自民党新総裁が語った“わが政権の秘策”

文春オンライン / 2024年9月27日 19時0分

「アメリカ領土に自衛隊の基地を作れ」石破茂・自民党新総裁が語った“わが政権の秘策”

「金集めには節度を持たねば」と語る石破氏 Ⓒ文藝春秋

9月27日の自民党総裁選で、新たな総裁に選出された石破茂氏。今回の総裁選に際して、石破氏は文藝春秋の取材に、自身の政権構想を語っていた。

◆◆◆

石破政権、一番のセールスポイントは?

 ――石破政権になった場合、一番のセールスポイントとなる政策は何でしょうか。

 石破 一番急ぐべきは、防災体制の強化、改善だと思います。地震、津波、洪水、あるいは極度の高温など、災害の発生自体は防げなくとも、その後の被害は努力によって相当に防ぐことができます。その意味で発災後の被害は人災だと考えるべきかもしれません。少なくとも、災害関連死をなくすためには、防災省という専門官庁が必要なのです。

 先日、台湾で要人との会談を行いましたが、台湾の花蓮の地震では発災から3時間後には避難所が立ち上がりました。台湾の避難所は、衛生的でエアコンの付いたコンテナトイレや、温かくておいしいものが食べられるキッチンカー、プライバシーが確保された、ベッドとテントで仕切られた居住空間が完備されたものです。イタリアでは、こういった設備を約48時間以内に全部そろえる体制をつくっているそうです。こうしたシステムは、一朝一夕にできたものではありません。台湾もイタリアも災害大国であり、まずは国民の生活の質を確保しなければならない、という確固たる理念があって、過去の反省のもとに今日がある。なのに、日本の避難所は関東大震災の時のまま、床に雑魚寝(ざこね)状態です。とても被災者の生活の質を大切に考えているとは言えません。

 ――防災省の組織構成は、どのようになるのでしょうか。

 石破 内閣府の防災担当部局は、少ない人数で一生懸命に仕事をこなしています。ですが、各省庁から新しい人たちが2年来ては帰りの繰り返しで、一か所に経験と知識を蓄積することができません。専門の職員を集めて教育し訓練して、地方自治体と交流して経験を積むための組織が必要です。今、災害対策関係の予算を一括して要求する役所がないので、災害のたびに、補正予算、予備費を要求して、その場しのぎで対応していますが、災害対処に精一杯で、予防、備蓄、訓練、あるいは研究開発はできない。だから、専門の防災官庁は絶対に必要なのです。

 現在の災害対策基本法では、災害対処の基本は基礎自治体が担うことになっています。しかし1718市町村、それぞれ財政力も人的資源も経験値もバラバラですから、能登半島のように財政難のところは今なお厳しい状況を強いられる。全国どこでも同じ災害対応ができないままでいいとは私には思えません。これもまた、防災省の主眼の一つだと思います。

日米地位協定見直しの前に

 ――来年には新しいアメリカ大統領に代わります。日米関係についてのお考えは。

 石破 アメリカが居ないと日本は何もできないと言うけれども、アメリカだって日本が居ないと世界戦略は成り立たないわけですよね。日本にある基地は前線基地ではない。補給をし、修理をする根拠地なんです。そして、在日米軍を守っているのは事実上、自衛隊です。こういった日本が果たしている役割がありますが、米政権も知らないことがいっぱいあるか、もしくは、日本が指摘しないのをいいことに、日本の努力にただ乗りしている部分がある。そういった現状を明示したうえで、議論のスタートを公平にするべきです。

 ――日米地位協定の見直しは?

 石破 運用の改善の積み重ねに限界がきているとすれば、地位協定そのものを見直す前に、在日米軍基地を可能な限り共同管理にすべきです。管理権を日本側が持つところまで信頼関係を高めなければならない。実任務上ということになりますから、自衛隊も相当の覚悟と訓練が必要になりますが、同盟関係を対等に近づけるというのはそういうことです。

 そして、米国領土に自衛隊の基地を置くことも考えるべきです。もちろん前方展開のためではなく、主に訓練のためでいい。陸上自衛隊も、航空自衛隊も、十分な訓練地が確保できていない。きちんと練度を上げていくためには、アメリカの広大な基地での訓練も必要になる。ここに一定期間自衛隊が駐留することを想定して、在米日本自衛隊地位協定を結ぶこととすれば、はじめて「同一、対等」の地位協定を結びあうことができる。

 実際にこの話を米国当局の高官に何度かしてみたことがありますが、概ね好意的に受け止められました。もちろん、実際に進めていくのはそう簡単なことではありません。戦後の日米関係の根幹的な部分ですから。しかし、間違いなく日米同盟の強化、抑止力の向上につながる施策ということを国内外で説明していかなければいけないと思います。

 ――集団的自衛権の広範な運用をアメリカから求められませんか。

 石破 むしろ、平和安全法制を制定して、限定的とはいえ集団的自衛権の行使を容認したのに、今までと同じような基地負担を求められるほうがおかしいでしょう。日米安保条約の根幹は、米国の集団的自衛権行使と日本の基地提供が双務となっているのですから、我が国が集団的自衛権を一部とはいえ行使するなら、基地提供の義務はある程度軽減されてしかるべきです。

 私は、「集団的自衛権は国連憲章上定められた権利であり、日本国憲法上も国際法で認められた行使が容認される。ただし、その態様について安全保障基本法で厳しく定める」と主張してきましたが、日米安保条約の非対称性を解消することが、日米同盟の安定化には必要だと思っています。在日米軍基地の削減を訴えるのであれば、集団的自衛権の行使を認めて、対称双務条約を目指すべきです。

「台湾有事は日本有事」の意味

 ――中国との関係では、どのような立場を取るつもりですか。

 石破 一言でいえばバランスでしょう。今は人的な関係を強めて、お互いによく知らないゆえに疑心暗鬼になる、というリスクを軽減すべき。20年くらい前に会った中国の国防幹部は、「きっと日本は中国を侵略しようとしているに違いない」と本気で言っていました。お互いのことを知らなかったわけです。

 私が防衛庁長官を拝命していた時も、日中関係がとても良好とはいいがたい時期でしたが、できるだけ人民解放軍との交流を進め、軍人の来日も増やしました。私も長官室で「機密以外はできるだけ見せる。あなた方が直接自衛隊を見て、本当に日本が中国を侵略しようと思っているか判断してほしい」と言いました。彼らは視察の後、「日本が侵略する気は全くないことがよく分かりました」と言って帰りました。

 ところが、その後、中国に行って「この戦闘機を見せてください」と言ったら、「そんなものはない」と一蹴されたわけです。日本の軍事雑誌に載っている写真を見せても、「それは幻だ」と(笑)。相互信頼の努力が大事な一方で、独裁国家は一瞬にして意思が変わるので、それに備えて抑止力を強化しておく必要もあります。

 アメリカの核の傘の信頼性を高めて、ミサイル防衛の精度を上げ、避難シェルターを作って、仮にミサイルを撃たれても日本人は死なないという態勢を見せることが大事です。

「台湾有事は日本有事」「今日のウクライナは明日の北東アジア」という表現自体は否定するものではありませんが、日本として相当の覚悟をもって言うべきことだと思っています。

 例えば中国が台湾に武力侵攻したとして、台湾の戦闘機が沖縄に避難したいという申し入れがあれば「台湾を守れ」という論者の方々は、当然受け入れるべきだと言うでしょう。私も結論としてはそう思います。しかし同時に、中国が沖縄や本土を攻撃するきっかけをもつくる。日本国内の危機感を高めようと言っているのかもしれませんが、そう表現するなら我々が台湾のために戦う覚悟を持ち、かつ、政治家としてそれを国民に説明しなければなりません。

 私は、そういう事態が起こらないように、抑止力を強化しておかねばならない、と考えています。大切なのは抑止力強化と対話・協力とのバランスです。資料を読めば、中国の経済、医療の現状がわかります。中国経済は減速し、人口は減り、医療体制も機能不全に陥るという弱みがある。日本は課題先進国として中国の問題の解決を手伝うことができます。習近平国家主席にまで意思が通じるかは、あらゆる方途を通じてやっていかねばなりません。

◆このインタビュー全文は、「文藝春秋 電子版」に掲載されています。

 

取材の模様は、動画でもご覧いただけます。

【動画】「物言えぬ自民党は郵政解散から始まった」石破茂・元党幹事長

(石破 茂/文藝春秋 2024年10月号)

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