「あれこれ考えるよりも、とにかく現場に飛び込む」成田凌が最新主演映画『雨の中の慾情』に込めた思い
文春オンライン / 2024年11月29日 17時10分
©山元茂樹/文藝春秋
つげ義春の短編『 雨の中の慾情 』を原作に、片山慎三監督が創出した同名映画で、主演を務めた成田凌さん。俳優デビュー10年で巡り合った数奇なラブストーリーで、売れない漫画家・義男をどう演じたのか。俳優としての想いも聞いた。
◆◆◆
──『雨の中の慾情』への出演の決め手は何だったのですか?
成田 片山慎三さんが監督で、撮影は台湾で、原作はつげ義春さんでと、僕にとってはもう全てが魅力的でした。片山監督と一緒に仕事をさせていただくことは念願だったので、迷いはなかったですね。
──片山監督も、「佇まいだけで物語れる役者」と成田さんを絶賛されています。実際にお会いする前に、片山監督についてどのようなイメージをおもちでしたか?
成田 これはあくまで僕の想像ですが、「逃げずにまっすぐ向き合う」方だというイメージをもっていました。世の中には目を背けたくなることや、逃げたくなるようなこともたくさんあります。でも、片山監督はそういうものから決して逃げない人、という印象がありました。
──片山監督は、『岬の兄妹』(18年)にしても、ドラマ『ガンニバル』(22年)にしても、人間の裏側にスポットを当てた作品を数多く発表されています。
成田 片山作品には力がありますよね。これまでの作品を見ていて、生半可な気持ちでは挑むことができないだろうという印象を抱いていました。もちろん、真剣な気持ちで撮影に臨むのはどの作品の現場も同じですが、片山さんの作品は、俳優が身を投げ出さないと成立しないのではないかと思っていました。僕はそんな環境を欲していたのかもしれません。オファーをいただいたときは武者震いがしましたね。精神的にも肉体的にも大変なのは覚悟の上で、そこは頑張りたいなと思いました。
──実際に片山監督にお会いしてみて、いかがでしたか?
成田 純粋な方だなと思いました。こんな言い方はおかしいかもしれませんが、すごくかわいいんですよ。監督としての才能はもちろん、人としてもすごく魅力的な方だと思いました。
──かわいい方なんですね。
成田 そうなんです。とにかくたくさんごはんを食べるし、作品への向き合い方も情熱もピュアでまっすぐで、かわいいと思う瞬間が、めちゃくちゃありました。
演出にしても、変に気を遣われたり、遠回しに言われたりすることはなく、片山監督の指示は純粋さが伝わってくるというか、まっすぐなので、すっと心に入ってくるんです。だからみんな頑張る。本当に愛される方だと思いました。
最初に脚本を読んで感じたこと
──今回、成田さんが演じた義男も、ピュアでまっすぐな心の持ち主です。最初に脚本を読んだとき、どのように感じましたか?
成田 義男は心の奥まで優しい人だなと思いました。でも演じる上では“ただの優しい人”にならないよう、観終えて“あいつ、なんか優しかったな”と残る程度を目指したいなと。そのために、無理せず、背伸びもせず、身体の中からちゃんと出てくる言葉をと、当たり前のことを積み重ねていきました。
──幻想的なシーンの穏やかな義男、激しいシーンの情熱的な義男など、さまざまな側面が登場します。役作りが難しかったのではないでしょうか。
成田 基本的には義男が「何をしても不思議ではない人間」として受け止められたらいいなと思いながら演じていました。どんなに突拍子もないことをやり始めても、「義男なら」という理解のうえに何でもできるような感覚というか……。
後半にいくにつれて徐々に明らかになっていきますが、実は義男自身も「本当の自分」をどこまで理解しているのかはわかっていないんです。
だから、これは本当の義男なのか、それとも義男がそうありたいと願う妄想なのか。妄想であれば、それが自分の妄想であることに義男は気づいているのか……、みたいなことは、観ている方が少しずつ答え合わせができるよう、ていねいに演じたつもりです。
──演技について監督からはどのようなリクエストがあったのですか?
成田 監督とは、「義男が『本当の自分』と『そうありたい自分』のどちらが本物か、自分でもわからなくなっているほうがいいのでは」という話は何度もしましたね。それで、観ているお客さんとともに、義男も徐々に「本当の自分」に気づいていくように、細かい部分を意識して演じていた記憶があります。
ただ、何をしていてもどんな状況であっても、義男の軸には、中村(映里子)さんが演じる福子のことが好き、という強い想いがあるので、そこがブレなければ、あとは自由にやっていいよ、という感じでした。
──作中で義男が疾走するシーンでも、福子への想いが炸裂していました。
成田 あのシーンは、本作のなかでもっとも重要といっても過言ではないかもしれません。どういう人間がどういう想いで走っているかが画面から伝わるように、と僕なりに考えていたんですけど、衣装合わせのときに監督から、「義男は腕を振らずに走ると思います」と言われたんです。僕自身も同じイメージでした。義男は腕を曲げずに伸ばしたまま、なおかつ振らない。それを繰り返した結果として、独特の切迫感が生まれましたし、感情を揺さぶられるとても良いシーンになったと思います。
「撮影初日は手探りでした」
──役作りで難しかったところはありますか?
成田 これはどの作品でどんな役を演じるときもそうですが、撮影前にあれこれ考えるよりも、僕はとにかく現場に飛び込んでしまおうというタイプなんです。ただ、撮影初日は手探りでしたね。義男の言動が、いかに彼の日常的なものであるのかを示さなければならないけど、対面する相手を前に、果たして義男ならどんな態度を取るのか、彼のキャラクターというものを掴もうといろいろ考えながらやっていました。
──「義男」というキャラクターを現場でつくりあげていかれたのですね。
成田 僕が、というよりもまわりの方たちが、僕が演じるキャラクターをつくってくれているのだと思います。
たとえば、今作で、森田(剛)さんが演じる伊守が僕に「義男くんはいい顔するなあ」と言うシーンがあります。でもその「いい顔」がどんな顔かは、脚本に書いてない。そもそも「いい顔」ってどんな顔なんだろうというのは、ギリギリまで悩みました。
そんなときは、目の前の森田さんを信じるしかないんです。だからこのシーンのときは、森田さんに「いい顔」と言われた自分の感情を大事にしようと思って、出たとこ勝負で挑みました。
初共演した森田剛は……
──森田剛さんとは初共演ですよね。
成田 はい。お芝居もですが、存在そのものがまわりを惹きつける方で、かっこいい方でした。男性から見ても女性から見ても魅力にあふれる方って、きっと森田さんのような方をいうのだろうなと。
森田さんとご一緒するシーンでは、感情をどこまでも連れていってもらえる感覚になれて、面白かったです。「こういう動きならこうしよう」みたいなことをやりながら一緒にシーンを作り上げていけたこともありがたかったです。
──竹中直人さんも個性の強い存在です。ご一緒された感想をお聞かせください。
成田 竹中さんも、森田さんとはまた違う意味で強いインパクトがありました。
いちばん印象に残っているのが、義男と福子の何気ない会話のシーンです。義男と福子が初めて会った日の夜、ふたりきりで話す場面があるのですが、ふたりが話している後ろで、隣の部屋にいる尾弥次(演:竹中直人)がさりげなく口笛を吹き始めるんです。竹中さんは監督もされているので、きっとこういうことをしたら面白い画が撮れると判断されたのだと思います。結果的にすごく叙情的でいいシーンになっていて、あとから観て感動しました。
──完成した映画全体については、いかがでしたか?
成田 観終わったときには疲れ切っていましたね。片山監督も「10回目でやっと普通に観られた」とおっしゃっていたので、すごい作品ができたな、とあらためて思うと同時に、こういう作品に参加できたことは本当にありがたいなと思いました。
──成田さんは今年俳優デビューされて10年になります。今作はご自身のターニングポイントになると思われますか?
成田 なるといいですね。片山監督作品に出られたこと、そして義男という役をやらせてもらえたことは、これからの自分にとって財産になると思います。
ただ、これまでも本当にたくさんの魅力的な作品に出させてもらい、すばらしい俳優の方々とご一緒させてもらってきた延長でいまの自分があるので、これからも出会いを大事に一生懸命やっていきたいという気持ちは変わりません。
そして生まれた新たな目標
──目標だった片山作品に参加できて、新たな目標は生まれましたか?
成田 とにかくたくさん作品に出たいです。みんなと一生懸命、作品を作りたい。
映画でいうと、僕は映画館に観に行くのが好きなんですけど、最近は「映画館で映画を観る」ということが、特別になりつつありますよね。巨大なスクリーンで世界観に没頭できる映画って、すごく贅沢な時間なので、もっと当たり前にみなさんが映画館に行ってくださったらうれしいなと思います。
だから、映画にもたくさん出て、映画館に観に行きたい!と思っていただけるように頑張りたいですね。
──ありがとうございました。
撮影 山元茂樹/文藝春秋
(相澤 洋美/週刊文春CINEMA オンライン オリジナル)
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