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「ネットで『アルビノなのにブサイク』『かわいそう』と言われるけど…」“髪も肌も真っ白”なアルビノの女性(23)が、“世間の偏見”に思うこと

文春オンライン / 2024年12月14日 11時10分

「ネットで『アルビノなのにブサイク』『かわいそう』と言われるけど…」“髪も肌も真っ白”なアルビノの女性(23)が、“世間の偏見”に思うこと

インフルエンサーとして活動するアルビノ当事者のりり香さん ©細田忠/文藝春秋

〈 〈2万人に1人の難病〉“髪も肌も真っ白”で、周りからは「白すぎてヤバい」と…アルビノの女性(23)が語った、当事者の“知られざる苦労” 〉から続く

 生まれつき目や皮膚、毛髪の色素が不足している遺伝子疾患の「アルビノ」。2万人に1人の確率で発症するといわれ、国の指定難病になっている。

 現在、インフルエンサーとして活動しているりり香さん(23)もアルビノ当事者のひとり。アルビノの症状によって日焼けへの抵抗力が低く、視覚障害も抱えている。彼女はいったいどんな症状を持ち、どうやって日常生活を送っているのか。病気に対する偏見をどのように受け止めているのか、話を聞いた。(全2回の2回目/ 1回目 から続く)

◆◆◆

2年前に医師から「いずれ目が見えなくなる」と…

――2年前に緑内障と診断され、医師から「いずれ目が見えなくなる」と言われたそうですね。

りり香さん(以下、りり香) 一般的な緑内障なら、初期段階で手術すれば改善できるそうです。でも、私の場合は病気の特性上、現時点では手術自体ができないらしくて。このままだと、5年から10年ほどで失明するだろう、と言われました。

 でも、「視力が失われたら、今よりちょっと大変になるな」とは思ったけど、不思議とショックは少なかったんですよね。

――それはなぜですか?

りり香 中高時代を特別支援学校で過ごした経験があるから、ですかね。支援学校には、私よりも視力が弱い人や、まったく見えない人がたくさんいました。

 目が見えない人は、見える人よりも大変なことが多いのは事実です。でも、「目が見えないから不幸だ」と言っている人はいませんでした。それぞれ、自分の人生を楽しんでいる人ばかりでしたね。

視覚以外の感覚が鋭くなる人が多い

――例えば、どんなことをして自分の人生を楽しんでいたのでしょう。

りり香 音楽が好きな人は多かったです。聴くのはもちろん、楽器を演奏したり、作曲したりする人もいました。

 目に障害を持っている人は、視覚以外の感覚が鋭くなる人が多いように思います。だから、音に没頭できる音楽が好きな人が多いのかなって。私自身、学生の頃は一度聞いた曲をすぐにピアノで弾くことができました。

――もともとピアノを習っていた?

りり香 ピアノ教室に通ったことはないです。でも、小さい頃から自宅でよくピアノの曲が流れていたので、自然と耳が鍛えられたのかもしれません。保育園に通っていたときは、先生が弾いているピアノを聞いて、真似して即興で弾きだしたこともあるそうです。

ネットで「アルビノなのにブサイクなんだ」とコメントされ…

――りり香さんは「アルビノ」について発信するインフルエンサーとしても活動しています。SNSでの発信を始めたのは、結婚してからだそうですね。

りり香 はい。家に1人でいる時間が長いので、「何か1人でできることはないかな」「始めるなら、私だからできることをやりたいな」と思って、発信を始めました。

――「私だからできること」が、アルビノに関する発信だった。

りり香 これまでの経験上、「アルビノについてよく知らない人が多いから、偏見が多いんだろうな」と感じていました。それなら、まずはアルビノについて知ってもらおう、と思って。

 ただ、始めたばかりの頃は、「アルビノだから可愛いね」「アルビノだから綺麗だね」というコメントが多かったですね。それと同じくらい、「アルビノなのにブサイクなんだ」というコメントもたくさんありました。

アニメの影響で「アルビノ=神秘的、可愛い」というイメージが生まれている

――発信の内容ではなく、「アルビノ」という病名や見た目で判断されてしまう?

りり香 そうです。ここ最近、アニメを中心にアルビノらしき色素の薄いキャラクターを見かけるようになりましたよね。そこから、「アルビノ=神秘的、可愛い」というイメージが生まれている気がします。実際にはアルビノという病気なだけで、容姿が良いとか悪いとかは関係ないのに。

 一方で、アニメを通じて「アルビノ」という言葉自体の認知が広がっているのも感じています。どんなきっかけであれ、知ってもらう機会が増えているのは嬉しいですね。間違ったイメージだとしても、まずは知らないと何も始まらないですから。

――最近はSNSだけでなく、テレビなどのメディアでもアルビノに関する発信をされていますよね。アルビノに対する世間の認識は変わってきていると感じますか?

りり香 私のSNSでは「りり香さんの動画をきっかけに、アルビノが病気だと知りました」「応援しています」というコメントが増えてきていて。少しずつですが、アルビノという病気への理解が正しく広まってきている実感はあります。

 ただ、「アルビノに憧れます」「アルビノになりたい」と言われることも、まだまだ多いです。世間では「肌は白い方が良い」という風潮があるじゃないですか。だから、「アルビノのような白い肌になりたい」という気持ちはわかります。

 でも、「肌が白くなりたいからアルビノになりたい」というのは、ちょっと違うんじゃないかなって。

 私は、アルビノをやめられるなら今すぐやめたいです。肌が白い以上に、視力が極端に悪いとか、日光に弱いとか、大変なことの方が多いですから。

「アルビノはかわいそう」という世間の偏見に思うこと

――それでも、ご自身の状況を「大変だとは思うけど、不幸だとは思わない」とおっしゃっていましたね。

りり香 「アルビノになりたい」と同じくらい、「アルビノはかわいそう」というコメントも、よくいただきます。障害がある分、健常者よりは苦労する場面が多いのは事実です。

 でも「人生楽しくなさそう」という意味で「かわいそう」とコメントしているのだとしたら、「そんなことはない!」と声を大にして伝えたいですね。

――今後はどんな発信をしていきたいですか。

りり香 アルビノの当事者として、「アルビノは白いだけじゃない」ということは引き続き発信していきたいです。

 アルビノといっても、症状の出方は人それぞれ。私は色素がまったくないので、真っ白な髪の毛をしていますが、少し色素がある方だと、薄い茶色の髪の毛の人もいます。同じように、肌の色や目の色、視力の程度や光の耐性も人それぞれ異なります。

 そして1人1人違う人間だから、性格も価値観も全然違います。「アルビノ」ではなく「1人の人間」として、私たちを受け入れてくれる人が増えると嬉しいです。

目が見えるうちに挑戦したいこと

――最後に、これから挑戦したいことなどがあれば教えていただけますか。

りり香 私個人としては、目が見えるうちに綺麗な景色をたくさん記憶に焼き付けておきたいし、緑内障が進行すると乗れなくなると言われている、ジェットコースターにもたくさん乗っておきたい。

 あと、行きたい国もたくさんあるんですよ。そのために、外国語も勉強しています。今は中国に行きたくて中国語を勉強していますが、韓国にもタイにも北欧にも行きたい!

 近い将来、私の目は見えなくなるけど、楽しいことや挑戦できることがこの先もたくさん待っていると信じています。どんな環境に置かれても、死ぬまで自分の人生を楽しみ続けたいです。

撮影=細田忠/文藝春秋

(仲 奈々)

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