マラドーナ、メッシ、小野伸二だけじゃない…幼少期から「特別な才能の持ち主」だった“世界で活躍する日本人選手”とは?《中村憲剛が解説》
文春オンライン / 2024年12月14日 10時50分
カタールW杯時の日本代表 ©JMPA
JリーグでMVP(最優秀選手賞)を受賞し、日本代表としても活躍した元サッカー選手の中村憲剛。学生時代に“無名の選手”だった彼は、J2から日本代表まで這い上がった「苦労人」として知られている。
そんな中村憲剛が「才能」について紐解いた書籍『 才能発見 「考える力」は勝利への近道 』(文藝春秋)を上梓した。ここでは、同書より一部を抜粋。彼が実際に「天才」と感じた選手について紹介する。(全2回の1回目/ 2回目 に続く)
◆◆◆
サッカーにおいての才能とは?
それでは、サッカーで求められる才能とは何でしょうか?
ボールを「止めて(トラップして)」「蹴る」ことを正確に、かつ素早く行なうのは、どのポジションでも求められます。競技レベルが上がっていくにつれて、「高い強度のなかで」といった条件が加わってきます。強度は「インテンシティ」とも言われます。
丸いボールを足で扱う、しかも対戦相手のプレッシャーを受けながらプレーするのがサッカーですから、ミスは起こり得ます。そのミスをできる限り少なくして、自分のイメージや監督が求めるプレーをどれだけ具現化できるか。技術がすべてではないものの、自分が思ったとおりにボールを操れるかどうかは、サッカーにおいて重要度が高いと言えるのではないでしょうか。
ディエゴ・マラドーナやメッシは、先天性の才能の持ち主
幼稚園児や小学生のサッカーを見ていて、「あの子はちょっと違うな」と感じさせる子どもに出会うことがあります。
ボールを扱うことに慣れていないと、どうしてもモタモタしてしまうというか、あっちへ蹴ったりこっちへ蹴ったりと、思ったようにボールを操れないものです。
そういうなかで、まったくストレスを感じさせないボール運びをする子どもがいます。まさしく生まれ持った才能として、「ボールを扱う技術を身に付けている」ケースです。
僕が少年時代に憧れた元アルゼンチン代表のディエゴ・マラドーナは、「ギフテッド」と呼ばれる先天性の才能の持ち主でしょう。現代サッカーでは同じくアルゼンチン代表のリオネル・メッシの名前が挙がってきます。
彼らのボールタッチやドリブルは、教えられて学んだものではないでしょう。真似をしようと思っても、なかなかできるものではありません。「天賦の才」と言っていいものです。
中村憲剛が感じた小野伸二の「特別な才能」
スペイン代表のラミン・ヤマルも「ギフテッド」な存在でしょう。彼は日本の中学生年代にあたる15歳でFCバルセロナのトップチームでデビューし、16歳でスペイン代表としてユーロ2024に出場しました。日本なら高校2年生の学年で、ヨーロッパチャンピオンの一員となったのです。
スペインは4―3―3のシステムを国レベルで成熟させており、それぞれのポジションごとの役割がはっきりしています。FCバルセロナも4―3―3のシステムを基本としており、ヤマルがスペイン代表にフィットしやすい環境が整っていたとも言えます。そうはいっても、先天的に高い能力を持っているのは間違いなく、競技レベルの高いチームやリーグを自らの日常とすることで、才能を磨いているのだと思います。
僕が現役時代に対戦したり、チームメイトとしてプレーした選手では、元日本代表の小野伸二さんは特別な才能の持ち主でした。味方からのパスが乱れたり、自分の体勢が崩れたりしても、次のプレーに最適な場所にボールを止めて、蹴ることができていました。
トラップがとにかく「なめらか」なのです。伸二さんとその話をすると「みんな、できるよ」と笑うのですが、あのトラップは誰にも真似できません。芸術の域に達していたとさえ感じます。
伸二さんをプロ入り前から知る方に聞くと、「小学校時代から変わらない」と言います。「ひと目見れば小野伸二と分かった。それぐらいずば抜けていた」と。
中村憲剛が「すごいな」と感じたなでしこジャパンのキャプテン
僕にも似た経験があります。
僕は小学校1年からサッカーを始め、東京都府中市の府ロクサッカー少年団に入りました。そのチームに元なでしこジャパンの澤穂希さんがいたのです。澤さんは僕の2学年上でした。
小学生年代では男子と女子が一緒にプレーすることが珍しくなく、澤さんは僕らのチームのエースでした。身体が大きくてスピード豊かで、シュートも力強い。2学年下の僕からすると、「すごいな」と仰ぎ見る存在でした。なでしこジャパンのキャプテンとして女子ワールドカップでチームを世界一へ導く姿に、小学生当時の澤さんが重なったものでした。
幼少期に「あの子は違う」と思った森保ジャパンの選手とは?
川崎フロンターレの選手だった当時、たまたまクラブハウスの前の人工芝のグラウンドでやっていた小学生年代のトレーニングを見ていて、ひとりの選手が目に留まりました。他の選手が目に入ってこないぐらいの存在感を放っているのです。プレーの判断が適切で、周りを使うべきところでは使って、自分でやるべきところではやる。ポジショニングもいい。小学生にして、頭のなかが整理されている。「あの子は違うね」と思っていたその選手は、幼き日の久保建英でした。
サッカーを同じタイミングで始めても、その成長には個人差があります。
「止めて、蹴る」がすぐにできる子どもがいれば、練習を重ねることで思い描いたプレーができるようになっていく子どももいます。習得の早さは人それぞれです。
繰り返し練習をしたり、見本となるプレーから学んだりする意味で、「止めて、蹴る」というプレーは「スキル」と言ったほうがいいのかもしれません。「生まれつき備わっているボールを扱う感覚」が飛び抜けていなくても、「後天的に磨くことのできる領域」を含んでいるからです。
〈 中村俊輔でも、本田圭佑でもない…22歳で日本代表スタメン→「前半だけで交代」の挫折を味わった“世界的に有名な日本人選手”とは?《中村憲剛が解説》 〉へ続く
(中村 憲剛/Number Books)
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