「統一」を夢見る韓国にとって、ドイツが「成功例」にならない理由

文春オンライン / 2018年6月18日 11時0分

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平昌五輪に出席した各国首脳 ©JMPA

▼〈 統一は「かなわぬ夢」か、南北朝鮮がドイツになれない訳 〉4月26日、ロイター通信(筆者=Josh Smith)

 韓国は今「統一」という甘い幻想に酔っている。それは2月の平昌五輪への北朝鮮選手団の参加に始まり、4月の韓国芸術団平壌公演で盛り上がり、4月末の南北首脳会談で頂点に達した。

 北朝鮮の指導者としては史上初めて、金正恩委員長が韓国側の地域を訪問したことで大きな話題となった首脳会談。残念ながら「非核化」のための明確な表明がない、物足りない結果だったというのが世界の評価だ。しかし、少なくとも韓国内の評価は違った。現状では、両首脳が対話し、協力を表明しただけなのだが、まるで今にも南北の統一が実現するかのようなお祭り騒ぎが始まったのだ。

〈平壌冷麺〉、〈金剛山〉、〈兵役〉が検索上位に

 それが最も分かり易く表れたのが〈株価〉と〈ネット検索キーワード〉だ。株式市場では南北経済協力への期待から鉄道、建設、送電関連株が急騰。ネットの検索キーワードランキングでは〈平壌冷麺〉、〈金剛山〉、〈兵役〉というキーワードが上位を占めた。〈平壌冷麺〉と〈金剛山〉は北朝鮮旅行に対する期待、〈兵役〉は統一したら軍隊に行かなくて済むかもしれないという若い男性たちの願望の表れだ。

東ドイツは国民に対する統制が弱かった

 このような「ロマンチック」な夢に対し冷静な分析をしているのがロイターの記事『統一は「かなわぬ夢」か、南北朝鮮がドイツになれない訳』だ。記事では、統一の夢を見る韓国が「モデル」としているドイツと比較し、朝鮮半島の統一がそう簡単に手に入れられるものではないと指摘する。

 実際、1990年の統一以降、ドイツは長い間韓国の〈お手本〉と考えられている。統一後一つの国として団結し現在はヨーロッパをリードする優等生に成長したドイツこそ、南北の経済格差、両国民間の不和を懸念する韓国内の懐疑論者を説得するのに最高のモデルだったのだ。

 ロイターの記事は、ドイツと朝鮮半島の差については「(ドイツは)内戦を経験しておらず、東ドイツは北朝鮮と比べて国民に対する統制がはるかに弱かった」と指摘する。統一前の東ドイツでは、西ドイツのTV、ラジオ放送を聴取できたし、東ドイツの住民が西ドイツの親戚を訪ねることも、手紙の遣り取りも可能だった。そして、そのような民間レベルの交流は東ドイツの内部の変化を促し、人々の認識を変化させる統一の「布石」になったのだ。

 それに比べて、北朝鮮はどうか? 平昌五輪に代表団が参加したり、韓国の歌手の公演を受け入れたり、首脳会談で冷麺を振る舞ったりしたが、そこに動員されたのは「宣伝員」であり、「一般人」の姿は一度もなかったのだ。北朝鮮の宣伝媒体は、北朝鮮の住民がスマホやインターネット、遊園地、ビデオゲーム、ピザとパスタを楽しむ姿を宣伝することで自由と繁栄をアピールするが、現実には韓国ドラマを見た住民が処刑されたり、白骨状態の遺体を乗せた木造船が日本海を漂流する状況が未だに続いている。

 現在韓国の「統一ブーム」は確かに過熱していて、早急で感情的だ。その韓国から見ると水を差していると思われるかも知れないが、記事の最後に紹介されている「完全な統一を強硬に求めることを放棄すれば、両国は関係を修復できる可能性がある」「統一はある種、ロマンチックで、健全で、民族主義的な夢として考えられている」「だが実際には、問題の多くはそこから生じている」という専門家の言葉こそが問題の核心を突いている。韓国が目を向けるべきは、ドイツの「成功例」ではなく、ドイツと朝鮮半島の「差」ではないだろうか。

(崔 碩栄)

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