「おしっこが甘くなる⁉」糖尿病がコワイ、本当の理由

文春オンライン / 2018年11月14日 7時0分

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 きょう11月14日は、世界糖尿病デー。日本でも各地で糖尿病予防運動のシンボルカラーの青でライトアップされたり、関連イベントが企画されているそうです。

「おしっこが甘くなる⁉」 なぜ血糖値が高いとダメなのか

 私は約20年にわたり医療の取材を続けてきましたが、多くの人の健康を守るには、とにかく糖尿病(生活習慣が原因で引き起こされる2型糖尿病)を予防・改善することがとても重要だと考えるようになりました。

 みなさんは、糖尿病がどのような病気か、きちんと理解されていますか。なんとなく、「血糖値が高いとよくない」「おしっこが甘くなるらしい」ことは知っていても、詳しくは知らないという人が多いのではないでしょうか。

 なぜ血糖値が高い状態が続くとよくないのか。それは、ブドウ糖の濃度が高すぎると血管が傷つけられて、ボロボロになるなどして、さまざまな病気(合併症)が引き起こされるからなのです。

「しめじ」と呼ばれる「3大合併症」

 まず、知っておくべきなのが、「3大合併症」と呼ばれる「神経」「眼(網膜)」「腎臓」の障害です。糖尿病になっても、初期には自覚症状はありません。しかし、放置していると、徐々に症状が現れます。この順番で出てくるので、よく「しめじ」と覚えましょうと言われています。

 最初に、糖尿病になって3~5年後に出るのが「糖尿病神経障害」です。両足の指先がビリビリしびれたり、足がつったりします。なぜ、これが怖いのかというと、痛みの感覚が鈍って、ケガをしても気づきにくくなるからです。

 糖尿病になると感染症にかかりやすくなり、血行障害も起こります。そのため、傷が治りにくくなり、潰瘍化してしまいます。そして最後には、組織の一部が腐る「壊疽」を起こし、足を切断せざるを得なくなります。この壊疽によって、なんと毎年1万人が下肢を切断しています。

年間約3000人が失明する原因

 次に起こるのが「糖尿病網膜症」と呼ばれる眼の障害です。光や色を感知する眼のフィルムにあたる「網膜」が、毛細血管の詰まりや出血によってダメージを受けてしまいます。糖尿病を発症して、だいたい10年前後で起こると言われていますが、実は中高年の失明原因の2位がこの糖尿病網膜症です(1位は緑内障)。これによって毎年約3000人が中途失明をしているそうです。

 3つ目、10~15年後に起こるのが「糖尿病腎症」です。高血糖状態が続くと、腎臓の濾過装置にあたる「糸球体」の毛細血管が傷ついたり硬くなったりして、老廃物を尿として排出しにくくなり、血液をきれいにすることができなくなります。放置していると老廃物がたまって命に危険が出るので、「人工透析」を受けなければならなくなります。

 専用の装置をつかって血液を体内から抜き取り、老廃物を除去して体に戻す人工透析は、週に2、3日、1回に3~4時間かかります。食事制限や水分調節も必要なため、日常生活の一部が制限されてしまいます。糖尿病によって、毎年2000人ほどの人が新たに人工透析を余儀なくされています。

認知症は脳の糖尿病?

 この3大合併症だけでも怖いのですが、糖尿病になると毛細血管が傷つくだけでなく、太い血管も動脈硬化が進むので、他にも様々な病気のリスクが上がります。

 代表的なのが、血管が詰まっておこる「心筋梗塞」と「脳梗塞」です。日本糖尿病学会の「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013」によると、糖尿病の人の冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)の頻度は、糖尿病でない人の2~4倍、脳血管疾患(脳梗塞や脳出血)も約4倍に上昇するとあります。

 それだけではありません。糖尿病はさまざまな重大な病気と関係しています。まずは「認知症」です。糖尿病の人はアルツハイマー病のリスクが1・5倍に上がるというデータがあります。糖尿病は脳梗塞も起こしやすくなるので、脳血管性の認知症のリスクも当然上がります。研究者の中には、「認知症は脳の糖尿病だ」という人もいるほどです。

うつ病、がん、骨粗しょう症…糖尿病は万病の元

 また、意外かもしれませんが、糖尿病の人は「うつ病」になりやすいことも知られています。なぜうつ病と関係しているのか、詳しくは解明されていませんが、糖尿病が進むと食事制限やインスリン(血糖値をコントロールするホルモン)の自己注射といった治療を続ける必要も出てきます。それがストレスになって、うつ病になりやすいとも言われています。

 さらに、糖尿病になると「がん」のリスクも1・2倍ほど上がります。とくにリスクの高いのが「大腸がん」「肝がん」「膵がん」です。血糖値が高い状態が続いて、血中のインスリン濃度が高くなるために、がんになりやすくなると考えられていますが、詳しい理由は不明です。いずれにせと、糖尿病患者はがんにもなりやすいので、「まめにがんの検査もするべきだ」という専門医もいます。

 その他に、「骨粗鬆症」や「歯周病」との関連も言われていますし、抵抗力が落ちるのでインフルエンザなどの感染症や肺炎などにもかかりやすくなり、手術でも合併症を起こすリスクが高くなります。つまり、多くの病気や治療で「ハイリスク群」に分類されてしまうのです。

 いかがでしょうか。いかに糖尿病がやっかいな病気かご理解いただけたのではないでしょうか。あまりにいろんな病気と関係しているので、私も記事を書くときによく「糖尿病は万病の元」と書いてきました。まさに、その通りだと思うのです。

糖尿病にならないためには

 糖尿病にならないためには、暴飲暴食を避けて太らないよう心がけるとともに、よく体を動かして、血糖をもっとも消費する筋肉の量を維持すること(とくに全体の7割と言われる下半身の筋肉)が大事です。

 以前、百寿者(100歳を超えた長寿の人)の研究者を取材したこともありますが、長寿を達成している人はみんな、糖尿病になったことがなかったそうです。糖尿病は老化を進めるとも言われていますし、糖尿病にならなかったからこそ、大きな病気をせずに長生きできたのでしょう。

 多くの人が糖尿病の予防・改善に努めれば、健康寿命(医療や介護の世話にならずに長生きできる期間のこと)も伸びると考えられます。体質的に糖尿病になりやすい人もいますが、生活習慣に気をつければ予防・改善することができ、他の多くの病気の予防にもつながります。世界糖尿病デーのきょう、みなさんにも関心を持っていただければ幸いです。

参考)国立国際医療研究センター「糖尿病情報センター」 http://dmic.ncgm.go.jp/
糖尿病ネットワーク http://www.dm-net.co.jp/  など

(鳥集 徹)

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