小論文はとにかく「イエス・ノー」に落とし込め――“小論文のカリスマ”が教える必勝法

文春オンライン / 2018年12月15日 7時0分

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 小論文とは読んで字の如く、小さな、論じる、文章です。では、論じるとは何か。広辞苑をひくと、「物事の是非をただす」とあります。是非をただすとはどういうことか。それは、イエス・ノーをはっきりさせることです。

 ですから、小論文とは何かといえば、どのような問題でも結局、イエス・ノーを書く文章である、とまとめることができます。

 たとえば、「ボランティアについてあなたの考えを書きなさい」という問題。これが作文なら、自分のボランティア体験を元に、楽しかったとか、有意義だったといったことを書いてもいいでしょう。また、説明文なら、ボランティアの発祥であるとか、日本での広がりなどについて、順をおって書いていけば点数をもらえると思います。

とにかくイエス・ノーに落とし込め

 しかし、小論文の場合、それをイエス・ノーの形に落とし込んで論じなくてはいけません。「ボランティアについて」という部分を、「最近、ボランティアに報酬を与えるべきか否かが盛んに論じられているが……」とか、「ボランティアを学校で単位として認めるべきか否かについて、新聞などで様々な議論があるが……」といったふうに、問題を自分で設定して、イエス・ノーを論じる。これが小論文なのです。

 最近の小論文では、「提案型」の問題が多く出題されます。「××について対策を示せ」といった形の問題です。こういった提案型の場合は、イエス・ノーで論じられないのではないか、といった意見もあります。しかし、この場合でも、答案の中で、自分の提案した対策が正しいか、正しくないかを検証してゆくわけですから、イエス・ノーの形に落とし込むことは可能です。

「東日本大震災で発生したような大規模な津波による被害を防ぐ対策について書け」と出題され、あなたは、「スーパー堤防を造る」と提案するとします。これは、「スーパー堤防を造るべきか否か」という問題設定をすることに他なりません。そこでは、あまりにも費用がかかりすぎる、などといった反対意見も考慮しながら、それでも造るべきだとする根拠を示すことで、論旨をイエスに導いていくことになります。

 結局、イエス・ノーにならない問題というのは、いわゆる要約問題と説明問題、もしくは作文、エッセイくらいで、基本的に小論文と呼ばれているものの99パーセントはイエス・ノーの形に落とし込んで検証することで、合格点の取れる小論文となります。

 実際に出題される大学入試小論文問題のほとんどが、課題文を読ませ、それについて答えさせるものです。この場合も、課題文のほとんどは何らかの現象について説明しているものですから、基本的にはその説明についてあなたが正しいと考えるのか、そうではないのかを論じればよいことになります。

 最近出題された例で、課題として「子育ては社会化すべきだ」という趣旨の文章が出され、それについて意見を書かせるものがありました。この場合も、課題文が「社会化すべき」と言っているわけですから、それに対してイエスかノーかを考えればよいわけです。

「4部構成」を覚えればほとんどの問題に適応できる

 小論文がイエス・ノーを書く文章であるならば、常にある「型」が使えます。これは「型にはめる」という意味ではなく、論理手順を覚えるのだと考えてください。つまり数学の証明問題と同じです。この型を身につけると、ほとんどすべての小論文問題に適応できます。

 それが、私の提唱する「4部構成」の記述法です。

(1)イエス・ノーを示す。

 課題文があるときは、それを簡単に要約して、それが正しいか、正しくないかを示す。提案型のときは、提案の内容をずばり書く。それ以外の場合は、自分で問題を設定し、それについての立場を書く。

 簡単な例を示してみましょう。たとえば、「憲法改正についてあなたの考えを書きなさい」と出題されたとします。これは先ほどのボランティアと同じで、自分で問題を設定しなくてはなりません。

〈安倍総理は近年、憲法改正、とりわけ9条の改正を主張し、議論を巻き起こしているが(問題の設定)、憲法第9条を改正するべきなのだろうか(イエス・ノーの提示)〉

(2)「たしかに・しかし」で受ける。

 問題を設定したら、次の段落で、「たしかに・しかし」を書きます。具体的には、「たしかに」のあとにあなたが(1)で示したイエス・ノーに対する反対意見を示し、それに一定の理解を示しつつも、「しかし」とつないで、やはりあなたの考えが正しいことを主張するのです。

たしかに、中国の海洋進出や北朝鮮の核開発のように、日本をとりまく安全保障環境は悪化してきた。防衛力の充実が求められる状況であることは間違いない(反対意見への理解)。しかし、防衛力の充実に9条の改正が必要かといえばそうではない(自分の考えを再び示す)〉

(3)イエス・ノーの根拠を示す。

 この根拠を書く段落が腕の見せどころです。後で詳しく述べますが、 『文藝春秋オピニオン 20××年の論点100』 (以下『論点』)シリーズも、ここが使いどころです。

〈なぜなら、今の憲法の下でも、防衛力は十分に増強されてきたからである。海部政権は湾岸戦争後、ペルシャ湾に海上自衛隊の掃海艇を派遣した。小泉政権は同時多発テロの後、インド洋に護衛艦と給油艦を派遣、さらにイラク戦争後は、陸上自衛隊をイラクに派遣した。安倍政権によって、集団的自衛権も行使できるようになり、さらにはPKO活動中に他国の部隊を警護することもできるようになった。現在の憲法の下でも、これだけのことができるのである。かつて鳩山一郎政権で、敵のミサイル攻撃を防ぐために、敵の基地を先制攻撃することは合憲であるとの解釈も示されているから、専守防衛という枠組みで考えるなら、ほとんどすべてが可能になっているのだ。そのうえ9条を改正するというのは屋上屋を架すことに他ならず、周辺諸国に日本は再び軍事国家になるのでは、という警戒感を抱かせることになる〉

(4)結論を書く。

 最後にイエス・ノーを繰り返して終わります。

〈よって、憲法9条の改正に私は反対である〉

「たしかに・しかし」を使う3つのメリット

 この「4部構成」さえマスターすれば、力は格段にアップします。

 まず、(1)「イエス・ノーを示す」、(4)「結論を書く」はほとんどの方が理解できるでしょうから、(2)の「たしかに・しかし」から説明します。

(2)には3つのメリットがあります。第一に、反対意見を書くことで、答案が客観的なものになる、つまりあなたが客観的なものの考え方ができる人物であると採点者にアピールすることができます。これは、とりわけ医療系の学部などで出題されることが多い、倫理・道徳などが絡んだ微妙な問題のときに有効です。最近は少なくなりましたが、「がん告知」などがそうです。最近なら「代理母」がそうでしょうか。「代理母はよくない」と書くのはいいのですが、一方的に断罪するような印象を与える文章になると、採点者も、「こういう人物は医者や看護師に向いているのか?」と考えるかもしれません。「それを必要とする人がいるのはわかる」と、反対の意見も十分に考慮したうえで判断していることを示したほうが、印象もよいし、何より議論が深まります。

 次に、「たしかに・しかし」を入れることで、対立軸が明確になります。イエスかノーかに落とし込むということは、物事を2項対立でとらえているということです。それを明らかにすることで、必然的に論理構造が鮮明になります。

 最後のメリットは、「字数稼ぎ」ができることです。小論文記述のアンコは、(3)「イエス・ノーの根拠を示す」ですが、それだけでは必要な字数に達しないことが多い。そこで、足りない分を、「たしかに」の後の部分で稼ぐのです。ここで気をつけてほしいのは、膨らませるのは「たしかに」の後の部分だけで、「しかし」の後は短くていい。「しかし」の後を長くしようとすると、(3)の根拠とかぶってしまいがちです。根拠は全部(3)に回すつもりで、「しかし」の後は簡単にすませてください。

頭のよさを見せるゲーム

 すでに述べたように、(3)「イエス・ノーの根拠を示す」が小論文のアンコの部分になります。ここであなたのとっておきのネタを披露します。

 ここで重要なのは、先ほどの例の「憲法改正」のように、必ずしも出題されたテーマと根拠がストレートにつながるものではなくてもよいということです。たとえば、あなたが防衛問題について、書けるだけのネタがないとします。しかし、高齢化や少子化問題なら十分に学習してきた。ならば、無理はあるにせよ、それらをつなげて論じることもできるのです。

 もし、それがうまくいったなら、論文に独創性が出ることになります。それでは、憲法改正と少子化をつなげてみましょう。

〈日本は今、深刻な少子高齢化に直面している。2050年に人口は8000万人台まで減り、そのうち4割の3000万人以上が高齢者になるという推計もある。そんな中で防衛力の強化といっても、自衛隊の現場を担う若者が少なくなってしまえば、必要な部隊を編成することもむずかしくなるだろう。機械化やコンピュータ化が進んでも、それらを動かす人間がいなければ、潜水艦もイージス艦も鉄の塊にすぎない。結局、防衛力よりも各国との協調が安全保障の要となる。争いごとを話し合いで解決する姿勢を貫き、世界の信頼を得ることで、日本の安全を保障する。憲法改正によって世界、とりわけアジア諸国の信頼を失うことのほうが、日本にとってより危険である〉

 これはこれで小論文として成立しています。

 昔、面白い生徒を教えたことがあります。当時のベストセラーに心理学者の岸田秀氏が書いた『ものぐさ精神分析』があります。この生徒はこれをネタに、どんな問題が出ても、(3)を、

〈人間は本能の壊れた動物である〉

 で始めたのです。それを課題のテーマと結びつけて論じるのですが、2回に1回はすごく独創的な面白い論文になる。逆に言えば2回に1回は大失敗するので要注意なのですが(笑)、この手法は生徒の個性によっては有効です。ちなみに、彼は、早稲田大学の小論文では失敗して落ちましたが、慶應義塾大学では成功し、合格しています。

 こうした手法が有効なのは、小論文においては、頭のよさを見せるということがたいへん重要だからです。小論文とは頭のよさをアピールするゲームだと考えていい。だから、本来は課題とストレートにつながっていない根拠であっても、それをうまくつなげることで、独創的な論を展開できれば、大きなアピールになります。

 すると、受験生としては、すべての問題に対応できるようにあらゆる知識を詰め込む、といったことをしなくともよいことになる。自分の得意なネタをできるだけ広い分野で10個くらい持てば、それらを使って何とか合格できる答案にたどりつくことができます。

すべての文章は「4部構成」で書ける

 この「4部構成」の書き方は、じつは小論文だけでなく、すべての文章に当てはまります。たとえば、小論文対策によく読めと言われる新聞の社説などは、見事にこの構成になっています。先ほどの「憲法改正」の例題なども、どこかの新聞の社説で読んだような文章ですね。

 学術論文だって、基本的にはこの構成です。

(1)論文で証明することは何かを明示する(イエス・ノー)。(2)先行研究に触れながらも、自説のどこが違うかを示す(たしかに・しかし)。(3)データを示しながら根拠を示す。(4)結論を示す。

 限られた時間の中で書かなくてはならない小論文の場合はとくに、構成であわててしまったり、自分が何を書いているのかわからなくなったりしてはどうにもなりません。あらかじめこの型をしっかり身につけておく、すなわち論理的に書く練習をしておくことがいちばん大切なのです。

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(樋口 裕一/文春ムック 文藝春秋オピニオン 2019年の論点100)

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