自民圧勝で経済“過熱”、実質賃金上昇&デフレ脱却か 安全保障優先で経済後手の懸念も

Business Journal / 2014年12月15日 13時0分

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 第47回衆院選は14日投票・即日開票され、当初の予想通り連立を組む自民党・公明党が圧勝した。特に自民党は300議席を下回ったものの、絶対安定多数、すなわちすべての常任委員会の委員長ポストを独占し、さらに委員の過半数を確保できる議席を単独で獲得したことになる。また、自公与党は参議院で否決された法案を衆議院で再可決可能な3分の2の議席を確保したことからすれば、今回の衆院選をきっかけに安倍政権が盤石な政治基盤を確立したといえよう。

 実体経済への影響としても、アベノミクスの推進が期待できる。

 まず、第一の矢である大胆な金融緩和は円安の副作用が指摘されたが、与党が大幅に議席を増やしたことから、来年3月と6月に控える日本銀行審議委員の任命も含めて、日銀はさらなる金融緩和を実施しやすくなったと判断できる。

 また、第二の矢である機動的な財政政策については、選挙前に米大手格付け会社ムーディーズから日本国債の格下げ判断を受ける一方で、景気悪化に伴い自民党内から今年度の補正予算規模を積み増す声も出ていた。しかし、自民党は2015年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB:年収に相当する税収から利払い費以外の政府支出を除いたもの)の赤字を対GDP比で10年度対比半減させることを選挙公約にしていたことからすれば、今年度の補正予算は子供・子育て支援制度や法人税率引き下げを除けば、当初の報道通り2~3兆円の範囲内に収まる可能性が高まったといえよう。

●経済重視で政策運営が進む可能性大

 第三の矢である民間投資を促す成長戦略については、解散総選挙の実施により短期的には進捗が遅れたと判断せざるを得ない。しかし、今後の政治日程を踏まえれば、来年4月に統一地方選挙、同9月に自民党総裁選、16年夏には参院選と選挙が目白押しである。従って、少なくとも16年夏までは経済重視で政策運営が進む可能性が高い。成長戦略の面では、TPP(環太平洋経済連携協定)や特区、女性活用、外国人受け入れ、雇用改革、観光等を中心に進展が期待される。あえてリスクを挙げるとすれば、与党の政治基盤が盤石になる中で集団的自衛権や憲法改正など安全保障面の優先度が高まり、成長戦略が後手に回ることであろう。

 今後のスケジュールとしては、12月24日に予定されている組閣でどのようなメンバーが選出されるかが注目されよう。また、年末から年明けにかけて策定が予定されている経済対策や税制改正の内容も来年の景気を占ううえでは重要だ。来年4月の統一地方選を踏まえれば、地域活性化が重視されることになろう。

 さらに来春の春闘において、政労使会合で確認された賃上げへの方向性が明確化してくれば、原油価格下落の神風もあり、来年度は実質賃金上昇に伴うデフレ脱却の実現可能性が高まることが期待される。あえて課題を挙げるとすれば、政権基盤が強いうちにいかに移民問題や正社員解雇ルールの明確化、農地法改正、社会保障改革に道筋をつけるかであろう。
(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト)

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