百舌鳥古墳群、世界文化遺産登録に学界が懸念表明…仁徳天皇陵古墳、学術的根拠なし

Business Journal / 2019年8月5日 19時0分

・帝国書院:大仙(大山)古墳

 また、高校では、山川出版社が大仙陵古墳(仁徳天皇陵古墳)、実教出版が大仙陵古墳(伝仁徳陵)、学び舎が大仙古墳だった。ちなみに中学教材『新編新しい社会 歴史』で「大仙古墳」としてきた東京書籍は2012年度から「大仙古墳(仁徳陵古墳)」と変えた。

放送局はほとんど「仁徳天皇」優先

 最近の報道はどうか。新聞の本文初出は毎日が「大山古墳」(仁徳天皇陵)、朝日が「大仙古墳(伝仁徳陵)」、読売が「仁徳天皇陵古墳(大山古墳)」、共同と時事が「伝仁徳天皇陵古墳(大山古墳)」などだが、見出しはその時で変わる。

 NHKは「宮内庁が仁徳天皇陵として管理する国内最大の前方後円墳」と長ったらしい。FNNとJNNは「仁徳陵古墳」、NNNとANNは「伝仁徳天皇陵」などだ。

「大仙古墳」の併記を主張する理由について、古代学研究会の今尾文昭氏(関西大学非常勤講師)は「世界遺産登録に反対しているわけではなく、仁徳天皇陵という言葉を使うなとは言わない。しかし正確でないものが発信されれば、被葬者が学術的にも認定されているように世界の人に受け止められる」とする。日本考古学協会の滝沢誠筑波大学准教授は「ユネスコやイコモス(国際記念物遺跡会議)にも名称問題を提起したが、『問題認識を共有します』との回答があっただけ」と明かす。

 ユネスコは登録に際して「真実性、完全性」を重視し、現に「武家の古都・鎌倉」は真実性が薄いと排除されたが、今回、百舌鳥・古市古墳群の登録についてはどう判断したのか判然としない。だが、堺市では「倭の王たちの巨大な墓が群として存在するのが稀有なことで、埋葬者が誰かという真実性は問題にならない」(世界遺産推進室)と説明する。同室は「仁徳天皇陵古墳の呼称はあくまで世界遺産登録に関する呼称。学校現場などと違う呼称になってもおかしくない」と説明する。

教科書は「仁徳天皇陵」に戻るのか

 皇室典範では「陵(みささぎ)」とは天皇、皇后、太皇太后、皇太后が眠り「墓」はその他の皇族。一方、考古学での「古墳」とは3世紀後半から7世紀の「古墳時代」の墓を指す。今尾氏は「天皇陵という呼称は、飛鳥、奈良時代以降のもの。近世の地域社会では地域名で呼ばれ、天皇陵を人物の固有名で呼ぶのは日本の伝統ではない。仁徳天皇陵古墳という世界遺産登録向けの呼称は、考古学の成果を無視し木に竹を接いだよう表現」と指摘する。

 存在も疑問視される人物の墓を「仁徳天皇陵」とすれば、中学生や高校生は古墳時代に「仁徳天皇」という「立派な人」が存在したとしか思わない。今尾氏は「戦後の考古学、歴史学の成果を台なしにするような表記は誤解を与え禍根を残す」と強調する。

 お祭り騒ぎに乗じて、なし崩し的に「天皇名第一」となっていかないか。注視したい。

(写真と文=粟野仁雄/ジャーナリスト) 

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