「インバウンド=成長戦略」は虚妄…異常に訪日客が少なかった“先進国”日本の根本的問題

Business Journal / 2020年9月30日 5時50分

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 新型コロナウイルスの感染拡大によって、政府が進めてきたインバウンド戦略は事実上、頓挫した。一部からは、感染が一段落した段階で再度インバウンド戦略を強化してほしいとの声も出ており、菅新首相も「インバウンドも含めて全力でがんばりたい」としている。

 筆者はインバウンド需要について否定するつもりはないし、うまく活用したほうがよいと考える立場である。だが、日本が先進国であるとの前提に立つならば、海外からの観光客というのは、結果として付いてくるものであって、それ自体を成長の原動力にするものではない。

 一般的に、観光客が落とすカネに依存する経済構造というのは、観光以外に目立った産業のない新興国の話であり、豊かな先進国はこうした呼び込みがなくても、人は勝手に外国からやってくるものだ。このあたりの常識を取り違えてしまうと、成長戦略において致命的なミスをしてしまう。

先進国であれば、外国人は勝手にやってくるもの

 安倍政権はインバウンドを成長戦略のひとつとして位置付け、2013年の日本再興戦略において訪日外国人客数を2030年までに3000万人に増やすという目標を掲げた。その後、順調に訪日客が増加したことから、2016年には目標が引き上げられ、2030年に6000万人を目指すとしている。

 だが、こうしたインバウンド誘致というのは、厳密には成長戦略とは呼べないものである。なぜなら、日本レベルの経済力を持つ国であれば、この程度の数字は、はるか昔に実現していなければならない水準であり、むしろこれまでの訪日客数が異様に少なかったというのが現実だからである。

 訪日観光客の数が1000万人を突破したのは2013年のことだが、この段階で、フランスは年間8000万人、米国や中国は6000万人の訪問客を受け入れている。

 一般論として、それなりの経済規模と歴史があり、1000万人規模の大都市を抱えている国は、ほぼ例外なく、外国から多数の訪問客が訪れる。フランス、中国、米国、英国などはすべてその条件を満たしており、当然のことながらおびただしい数の外国人が訪問する。

 日本もこの条件を満たしているが、そうした国であるにもかかわらず1000万人しか観光客がいなかったというのは、むしろ異常な状況だったといってよい。

 経済が豊かであれば、多くのビジネス需要があるし、一定以上の歴史があれば、観光資源にも事欠かない。大都市があればホテルなどのインフラも整備されているので、黙っていても人がやってくる。つまり、豊かな先進国にとって観光というのは、主要産業のオマケとして付いてくるものであって主要産業にはなり得ない。経済規模が大きい場合、観光業という小さなビジネスだけでは成長の原動力にならないのだ。

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