日本学術会議に税金10億円拠出は適正か?下村元文科相の「答申ない」批判が的外れな理由
Business Journal / 2020年12月24日 18時50分

官邸の思惑を超えて、日本学術会議の任命拒否の波紋は広がっている。任命拒否リストは、杉田和博官房副長官の手書きの文書がもとになっているようだ。杉田副長官は、警察庁警備局公安第一課長や内閣官房内閣情報調査室長の職歴もあるので、そのような情報は入手しやすいのであろう。日本学術会議の会員ともなれば「政治的中立性」を要求されると考え、特定秘密保護法案や安保法案などの過去の発言や活動をチェックし、リストを作成したと考えられる。
ところが、菅義偉首相が苦しまぎれに「会員の多様性」などを重視したと後付けの発言をし、除外された6名に女性や若手がいて、むしろ多様性を進める人選だったものだから、おかしくなってしまった。政府の政策に批判的な意見を表明したことがある研究者の日本学術会議への任官を、理由をはっきりせずに拒否した政府の決定には、学問の自由、言論・思想の自由の侵害という批判が全国の各学会から沸き上がったのは、当然である。
日本学術会議のあり方に論点をすり替える政府それに対して政府は、もともとの本音である日本学術会議のあり方に論点をすり替える作戦に出た。下村博文元文部科学大臣は、自身の事務所のビデオで、日本学術会議は近年、政府に答申・勧告などをしていないとして、この際、欧米のような民間法人にすべきと主張している。毎日新聞の記事では、その論拠のひとつとして、国の政策である軍事研究に協力しないことも挙げている。
同様に、井上信治科学技術担当大臣は、日本学術会議はデュアルユース(民生としても軍事としても利用できる科学技術)を検討すべきだ、という考えを表明した。政府の狙いのひとつを、最もはっきりと打ち出したものである。
平和憲法のもと、1950年に学者や研究者の集まりである日本学術会議が「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない決意の表明」を、1967 年にも「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を出しており、一部の例外を除いて、基本的に学術研究者は軍事研究を避けるべきというモラルを共有していた。
ところが、2017年度予算で、防衛省の「安全保障技術研究推進」制度の研究助成金が、前年までの6億円から110億円に急増した。財政難で年金支給額の削減や医療費の自己負担増が検討されている中、まさに異例であった。これは、時の安倍政権の軍産学連携強化の方針に沿うもので、軍事研究だけでなく軍事産業のビジネス上の狙いもあったと思われる。
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