安倍政権、金融緩和による円安・株高政策が見落とすワナ

Business Journal / 2013年1月6日 6時55分

 穴をふさぐことのほうが先決だ。穴をふさぐのが構造改革である。自分で穴をふさぐことができない企業に対して税金や政策で一律に支援することはやめるべきだ。そうした企業は市場から淘汰されるべきである。経営責任も追及してけじめをつけ、自分で穴をふさぐ意欲のある企業だけに支援すべきでもある。自助努力での競争を促すインセンティブが効くような政策でないと意味がない。そうでなければ税金を捨てるだけだ。税金が新たな税収や雇用を生み出す、めぐりの良い政策が必要なわけで、これが真の景気回復につながる。市場での敗者に対しては別の政策を用意すればいい。景気浮揚のために、ばらまいてすべてを助ける政策は、結局は後の時代にツケを回すことになるだけだ。

●破綻寸前に陥った日産の教訓

 かつての日産自動車は、1987年3月期に円高の影響を受けて創業以来の初の営業赤字に転落したが、構造改革を怠った。関連企業への天下りや労組との癒着など高コスト体質の改善に手を付けなかった。しかし、その後のバブル経済によって「シーマ現象」という言葉も生まれたように、利益率が高い高級車が一時的に売れて日産の構造的課題が覆い隠されてしまった。バブルという「メッキ」は剥がれると、馬脚を現し、土地や株を売って含み益を吐き出す経営が続いた。90年代半ば以降、日産は当期純損失を計上し続けて経営破たん寸前に陥った。

 こうした教訓から考えても、金融緩和策による円安・株高は、バブルと同じようなもので、日本企業が抱える構造的な課題を覆い隠してしまうし、改革の意欲も削ぎかねない。企業が利益を増やしていくには、構造改革をして生産性を向上させるなど自助努力が第一のはずだ。マクロ政策はあくまでその補助に過ぎない。

 金融技術を使って実体以上の経済メカニズムを創り出すと、そこに綻びが生じた際に被害が大きくなる。サブプライムローンでは金融技術を使って実需以上の市場を創ってしまった結果、破たん後の影響も想像以上に大きかった。自動車産業でも、米国市場では毎月の支払額が少ない残価設定型リース商品を開発することで、高級車を低所得者に売ったが、金融技術で創った市場は脆く、リーマンショック後の「谷」は深かった。

●円高を“利用する”

 行き過ぎた円高がよくないことは百も承知である。しかし、環境の変化に対応する自助努力を行うこと忘れてはいけない。円高を利用して海外への投資を増やして、海外で利益を出し、日本に配当して、日本の基盤を守る戦略だってある。そうした狙いから神戸市は12年7月、行政直営で「アジア進出支援センター」を設立、中小企業の海外進出を支援している。日本は今、時代の変化に合わせ、自助努力する企業を助ける政策が必要な局面にある。

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