エンタテインメント小説で東日本大震災を描く意味とは? 想像を超える過酷さと行政の限界

Business Journal / 2013年8月15日 18時0分

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 累計28万部のベストセラーとなった『震える牛』(小学館)など、元新聞記者という経験を生かし、社会の暗部に切り込んだ小説で話題を呼んでいる作家・相場英雄。そんな同氏が、またまた“問題作”を上梓した。

 最新作『共震』(同)は、2011年3月11日(以下3.11)に起こった東日本大震災の、今なお続く被災者の厳しい生活をテーマにしたミステリー小説。エンタテインメント作品という体裁を取りながらも、世のマスコミが出さない被災者の声や、現地で起きている問題・事件を、精緻な取材で描き出している。

 かねてから東北地方を旅して現地で交流を深め、3.11以降は、芸能人や作家が行かないような町や村にも、しっかり足を運んだという同氏に、本作出版への思いや、決して報じられることのない被災者の感情などを聞いた。

●小説の間口の広さを使って、被災地の現状を訴えたい

 最新刊の『共震』の執筆は、もともと、他社のWeb媒体で持っている連載がきっかけでした。東日本大震災のルポルタージュを、現地で取材しながら連載していたのですが、ノンフィクションではなく、小説の形で発表したくなって。前に出した『震える牛』の打ち上げの席で、小学館の担当編集者の上司に「小説にさせてください!」と直談判しました。

 それというのも、現状、ノンフィクションだと、本がなかなか売れないんです。その上、Webの連載でも、3.11から時間がたつにつれて、担当者から「震災ネタだと、ページビューが伸びません」と言われました。あれはキレましたね(苦笑)。実際、被災地のひどい状態は、現在進行形で続いています。あの大震災は、全然終わってないんですよ。

 だから、震災に対する感覚は、現地の人たちと東京などのほかの地域との温度差がすごくある。一度でも被災地を訪ねたら、ページビューがどうのとか言っていられませんよ。その温度差を、なんとかして埋めたかった。日本中に、あらためて被災地の現状を知ってもらいたいんです。ノンフィクションでは難しくても、小説という間口の広い読み物なら、たくさんの人に読んでもらえると思います。この小説を書いた基本的なスタンスは、日本の食品加工の歪んだ構造を描いた『震える牛』と同じです。

 ストーリーはフィクションですが、主人公の宮沢(賢一郎)が被災地で体験する話は、ほとんど実話。冒頭の結婚式の話は、津波で家族を失った人から、僕が実際に聞いたエピソードです。子供用の紙おむつが一番足りなかったり、宮沢が何気なく「頑張ってください」と励ましたら、相手の方が「これ以上、何を頑張れと……」と泣き崩れるエピソードなど、全部現地で聞いた話を元にしています。居酒屋の店主が、せきを切ったように震災について話しだすシーンは、石巻で僕と担当編集者が体験した場面を、そのまま描きました。

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