終らない震災〜被災地で露呈する人間のきたない本質を隠し、美談を振りまくメディアの罪

Business Journal / 2013年8月20日 18時0分

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 元新聞記者という経験を活かし、社会の暗部に切り込んだ小説で話題を呼んでいる作家・相場英雄の最新作『共震』(小学館)。2011年3月11日(以下3.11)に起こった東日本大震災の、今なお続く厳しい現状をテーマにしたミステリー小説を上梓した。

 著者である相場氏への前回のインタビューでは、執筆に対する思いやそれまでも道のりを聞いたが、今回はさらに踏み込み、被災地取材中に現場で見た生々しい出来事を語ってもらった。

●震災直後の被災地の実情

 ぼくは、3.11の大震災の前から、何度も東北の街を訪ねていました。ほとんどは『みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎シリーズ』(小学館文庫/双葉文庫)の取材だったのですが、自腹旅行も多かったです。現地に友だちもたくさんできました。

 そのシリーズの最新刊が出たのが、10年の10月で……大震災の約半年前。石巻編(『偽計-みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』 <双葉文庫>)で終わっています。震災直後はまず、石巻の友人たちが生きているのかどうか、安否確認に駆け回りました。

 その後、無事を確認できた人に「いま必要なものは?」と聞いて、ガソリンや肌着セットを東京で揃えて、届けに行きました。意外と喜ばれたのは、タバコと酒。避難所には、嗜好品までは支給されないから。ああいう場では、食料など緊急の物資も必要ですが、嗜好品は人の緊張をほぐす効果があるので、かなり役立ちました。あと線香とロウソクも不足していました。避難所に届けたそばから無くなっていくのを見ると、「大勢の方々が、同時に亡くなったんだな」と胸が詰まりました。

 避難所には、ウェブメディアのルポ連載でも取材に入りました。もともと記者なので、ある程度の取材の構成や全体のテーマの青写真を持って行ったんですが、現地に入った途端、全部くずれました。

 自衛隊が初めて風呂を設置してくれたタイミングで、避難所に一泊するつもりでしたが、2時間ほど滞在するのがやっとでした。現場の緊迫感が、尋常じゃなかった。避難所の人たちは、「よく来てくれたな」と歓迎してくださったんですが、お年寄りたちが、まったくまばたきをしないんです。津波から命からがら逃げてきた緊張と、また大きな揺れが来るかもしれない恐怖で。まだ余震も、すごかったですから。長い人生経験を積んでこられて、悠然としているはずのお年寄りが、まばたきもできないほど現実に打ちのめされている……そんなところに、とてもじゃないけど、よそから来た僕が一緒に過ごすなんて、できませんでした。

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