なぜ「選択と集中」は日本で失敗するのか?成功したキヤノンと武田薬品の巧妙な手法

Business Journal / 2013年9月2日 7時0分

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 経営理論には流行がある。2000年代に経営改革のキーワードとして「選択と集中」が登場し、あっという間に産業界を席巻した。1980年代にゼネラル・エレクトリック(GE)の最高経営責任者(CEO)を務めたジャック・ウエルチが実戦した戦略として有名である。

 日本では1980年代のバブル経済の真っただ中に多角経営がもてはやされ、「選択と集中」が注目されるようになったのはバブル崩壊後の1990年半ばからだ。バブルの時代、広げすぎた戦線の縮小を迫られ、その時の行動指針となったのが、ウエルチの「選択と集中」である。

「選択と集中」の結果はどうだったのか? 成果を上げた企業もあるが、失敗した企業のほうがはるかに多い。最大の難問は雇用である。日本には長期雇用という慣行がある。ウエルチの「選択と集中」は、大規模な人員整理・解雇とワンセットになっている。長期雇用を重視する日本では、従業員の解雇につながる事業売却は簡単ではなかった。雇用を重視している企業が「選択と集中」を行っても、売り上げが落ちるだけで人は減らないため、マイナスの効果のほうが大きい。

 この難問に回答を出したのが、95年9月にキヤノンの社長(現・会長兼社長)に就任した御手洗冨士夫である。23年間米国に駐在した御手洗は、「経営手法は世界共通だが、雇用はローカルに徹する」という独自の経営哲学を生み出した。

 伝統的な終身雇用制を守りながらパソコン事業など赤字部門を切り捨て、複写機やプリンターに使うインクカートリッジなどに経営資源を注力する「選択と集中」を実施した。社員のクビを切らない代わりに年功序列は廃し、実力主義の賃金体系を組合に認めさせた。ウエルチの日本バージョンである。

●黒字事業を売却した武田薬品の手法

 たいていの企業は経営が厳しくなってから事業の見直しやリストラに踏み切るため、うまくいかないケースが多い。そう考えると、経営好調期の「選択と集中」のほうが容易であることは明らかだ。一時的に売り上げが減っても、会社は全体として好業績のまま。大きな事業構造の転換をやりとげる経営体力もある。しかし、黒字企業にとって「選択と集中」を実行する難しさは、当たり前のことだが、黒字の事業を切ることだ。黒字事業から撤退する際には抵抗が大きい。

 武田薬品工業は1995~2000年の中期経営計画で武田國男社長(当時)のもと、「医薬品特化」の方針を打ち出し、黒字事業を売却する「選択と集中」で成果を上げた。

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