「もう故郷に帰れないと思ったほうがいい」チェルノブイリの“いま”から学ぶ福島の未来

Business Journal / 2013年11月5日 18時0分

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 ドキュメンタリー番組を日々ウォッチし続けている映画監督・松江哲明氏が、ドキュメンタリー作家の視点で“裏読み”レビューします。
【今回の番組】
 10月28日放送『NNNドキュメント~3.11大震災シリーズ チェルノブイリから福島へ 未来への答案』(日本テレビ系)

 ドキュメンタリーは、未来を撮ることはできない。カメラを向けられるのは今、この瞬間でしかなく、現在を素材として構成するのが主だ。「今」と向き合うのはドキュメンタリーの宿命、またはドキュメンタリーならではの手法だ。そして、それこそが僕には魅力的に見える。『NNNドキュメント~3.11大震災シリーズ チェルノブイリから福島へ 未来への答案』は、通常の30分枠ではなく55分枠として放送されていることからも、制作者の並々ならぬ狙いが感じられた。そして、その予感は当たった。僕は見終えた時、これはテレビだからこそ制作が可能なドキュメンタリー番組だと思った。

 番組はまず、ウクライナのスラブチチ駅の様子を映す。早朝、多くの人々が電車を待っている。27年前にはなかったこの駅は、チェルノブイリの原発事故の2年後、突貫工事で町がつくられたのに伴ってできた。50キロ離れた仕事場に、ほぼ全員が向かう。原発の廃炉工事のためだ。車窓の風景が異様だった。放射性物質の付着を避けるために松は皮が剥ぎ取られ、全滅した白樺の林や、強制移住で捨てられ廃墟となった家は、まるでホラー映画の舞台のよう。

 カメラマンは手にしたガイガーカウンターを映す。チェルノブイリ原発に近づくにつれ、数値が上がる。ここでは2700人もの人々が働いているという。駅に改札口はないが、出口にあるゲート型の体表面モニターの前を通ることになる。ここで放射能汚染がないかをチェックするのだ。汚染があればゲートは開かない。まるでSF映画のような光景だが、これは現実だ。そして、番組はチェルノブイリを通して日本を問うのだ。

●事故から27年たったチェルノブイリに、福島の未来を重ねる

 科学ジャーナリスト倉澤治雄が、事故を起こした4号機の前に立っている。彼は福島の原発事故後、日本テレビのニュース番組で解説をしていたので僕もよく知っている。番組は彼の視点を通してチェルブイリの「今」を記録する。

 石棺で封じ込められた制御室に入ると、事故直後から時間が止まっているかのようだ。人間たちは溶けた核燃料を封じ込めることしかできなかったのだ。だが、汚染水は漏れ続け、年間1000トンは行方がわからないという。

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