冷凍や外国産は出さない、3分の1は捨てる…最高の味にこだわる超頑固な焼肉屋の苦悩

Business Journal / 2013年11月12日 18時0分

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 ドキュメンタリー番組を日々ウォッチし続けている映画監督・松江哲明氏が、ドキュメンタリー作家の視点で“裏読み”レビューします。

【今回の番組】
 11月3日放送『ザ・ノンフィクション~焼肉ドタンバ物語・追悼編』(フジテレビ系)

 番組を見終えて、近所の焼肉屋へ走った。番組内での肉のさばき方とタレのうま味が伝わってきて仕方なかったから。

 『焼肉ドタンバ物語』は、数年前に放送された際に見ていたが、今回は「追悼編」とサブタイトルが加えられている。焼肉屋主人の大倉鉄中さんが、今年の7月に亡くなったからだ。今回は以前放送した内容に加え、新撮された現在のドキュメントが記録されている。

 この『ザ・ノンフィクション』、鉄中さんの顔がいいのだ。当てにしていた肉が買えなかった時は口をゆがめ、声を出さずとも胸中を語る。女将でもある妻・久子さんとケンカをした時は、なんともバツの悪そうな表情をしているのだが、この時も無言。それでも彼の居心地の悪さは十分に伝わってくる。人生が皺に刻まれているとでも表現したくなる。そう、まさに男の顔は履歴書。彼は在日韓国人2世だが、韓国の名優チェ・ミンシクやソン・ガンホ、ソル・ギョングと並べたくなる濃厚なイケメンだ。

●寡黙で頑固な職人気質

 大阪・鶴橋の人気店「焼肉 大倉」は、とにかく味にこだわる。鉄中さんは「自分で食べれんものをお客さんに出すことはない」と語る、まさに頑固な職人。買い付けた肉は、ほかの店なら出すような脂も丁寧に切り落とし、約3分の1は捨ててしまう。また「冷凍や外国産も混ぜて儲けに走ったらどうだ」と言われても、断固として受け入れない。「その代わり客を泣かすことになる」と考える彼は、信念を曲げない。女将は「私は客の顔を毎日見ている」と非難する。「客の反応がわからないから、ああやって頑固に言える」と。鉄中さんは利益を度外視したどんぶり勘定だ。そして客席から遮断された2階の厨房で、黙々と肉をさばくのみ。そんな父の姿を、三男はじっと見つめる。

 二男は道頓堀のフードパークに2号店を出店している。だが、父親の意図をくんだ商売では、周囲から浮いてしまって肩身が狭い。1年で最も繁盛する年始でも、肉が仕入れられないため、開店自体が不可能なのだ。冷凍肉さえ使えればいいのだが、父がそれを許さない。息子を助けたい母が肩を持つが、実際に2人で冷凍肉を食べてみると、とても大倉の看板で出せる代物ではなかった。父とフードパークとで板挟みになり、何晩も悩み思いついたのが、海老を使ったファミリーメニュー。焼肉といえども肉だけが商品ではない。正月特製のメニューは好評で、珍しく満席となった。そんな様子を父が見学に来るが、店の外からちらちら覗いたり、しゃがんだり。「入ったら、いらんこと言いたくなる」と苦笑いをしつつ、また覗く姿が素敵だ。

●家族の絆

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