ヤフーEC出店無料化、劣勢挽回の秘策となるか?株式市場からは冷めた反応も

Business Journal / 2013年12月8日 14時0分

孫会長は「eコマース領域における新戦略」と題した当日の講演会で、無料化により出店のハードルを引き下げ、出店社数・出品数を飛躍的に拡大し、「ネットで買えないものはない世界を実現したい」と熱弁を振るった。

 講演のポイントを要約すると、次の点になる。

(1)無料化のインパクトで国内ネットモール(仮想商店街)トップの「楽天市場」を19年までに抜き、「Yahoo!ショッピング」がトップになる。

(2)同社EC事業のモデルを「手数料型」から「メディア型」に転換する(無料化で出店料収入を放棄する代わりに、広告料収入の拡大を狙う)――例えば、商品の検索結果に優先表示する広告枠や、「Yahoo!知恵袋」「Yahoo!検索」などに表示する出店社向け広告枠を新たに設けて販売する。

 また、孫会長は講演の中で「そもそもインターネットは自由な環境であるべきはずなのに、ネットモールだけが出店等のコストがかかり、不自由だった。これまでのヤフーは間違っていた」とも強調した。一方、宮坂社長は「無料化により14年3月期の営業利益が最大90億円減収するなど、短期的には利益が圧迫される見込み」も明らかにした。

 会場で説明を聞いていた出店関係者たちは、「eコマース革命宣言」「主役の交代」「ビジネスモデルの革新」など、孫会長の口から次々と吐き出される熱弁に拍手喝采するなど、大いに盛り上がっていた様子だ。

●不安要素の多い「革命」

 だが、説明を冷静に聞くと不確実な要素が多く、株式市場が不安感と警戒感をあらわにしたのもうなずける。

 無料化について、普段から身近に孫会長と接しているソフトバンク(ヤフーの親会社で、孫会長は同社社長)関係者は「『Yahoo!BB』と同じ戦略で、新しい市場を切り開けば勝算はある」と断言。その論拠として、ヤフーがプロバイダサービス「Yahoo!BB」を開始した01年、街頭でモデムを無料配布するなどの販促で会員を着実に拡大、ブロードバンド普及の起爆剤の一因となった前例を挙げている。

 つまり、ハードルを下げて市場を活性化させれば、ヤフーのネット通販事業を成長軌道に乗せられるというわけだ。

 これに対して、証券関係者は「ネット通販とプロバイダサービスは、まったく別の世界。プロバイダの成功経験がネット通販に通じると考えるのはいかがなものか。それに01年と今では、ネット環境も劇的に変化している」とソフトバンク関係者の見方には懐疑的だ。

 一方、ネットビジネス関係者は「手数料型というネットモールビジネスの常道内の販促策では永遠に楽天に追いつけない。ネット通販の業績低迷も打開できない。ここはひとつ、世間がアッと驚く常識外れの販促策を打ち出すしかないと孫会長は考えたのではないか」と推測する。

 無料化が、孫会長の託宣通り「eコマース革命」になるのか、大受けを狙った博打で終わるのか。通販業界内では、早くもヤフーの14年3月期決算発表に関心が移っている。
(文=福井晋/フリーライター)

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