稲盛和夫「アメーバ経営」非難と称賛だけでは見落とす本質とは~合理性と非合理性の調和

Business Journal / 2013年12月23日 1時0分

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「稲盛和夫」--今や、この人の名を知らない人は少ないだろう。ビジネス情報に疎い昨今の大学生でも知っている。今さらいうまでもないが、京セラの創業者で、破綻した日本航空(JAL)を無報酬で再生に取り組み、蘇らせた経営者である。松下幸之助氏は昭和の「経営の神様」と呼ばれたが、稲盛氏は平成の「経営の神様」と称されており、当サイトでもたびたび取り上げられてきた。

 企業の経営、再建をめぐっては、どのようなケースでも評価は分かれる。稲盛氏もしかりである。JAL再建以前から稲盛氏に対してはさまざまな評価がつきまとう。稲盛氏を絶賛する一方で、稲盛経営の特殊性を非難するジャーナリストも少なくない。「濃い企業文化」を持つ企業にはありがちな評価だ。そのような情報、オピニオンは、すでに書き尽くされているため、今さら取り上げるほどの話題でもないだろう。

 ましてや、そうした見方が核心を突いているか否かは、より経営を洞察する力を持たなければ断定できない。また、経営者も一人の「弱い人」であるとすれば、その思想、行動は、時間の経過とともに変わっていくものである。「弱い人」の一人であるジャーナリストが、過去の事例だけで、人の姿を100%断定する叙述は歯切れよく感じられるが、本質を論じるには不十分で断片的分析でしかない。筆者も「弱い人」であるがゆえに、不完全な批判的文章を書いたこともあるが、それはあくまでも明らかに表面化している事象に対してであり、人については、長所とのバランスを常に考慮している。

 経営学、社会学、文化人類学では、民族誌学的な調査方法も用いたエスノグラフィック・リサーチなるものを応用する。これは、アンケート、統計分析などの定量的方法ではなく、デプスインタビュー、ユーザビリティテスト(ラボテスト)、観察調査、コンテクスチュアルインクワイアリーなどの手法により、潜在的な情報を探る精緻な調査を指す。記者会見での公式見解や、1〜2回ほどインタビューしたレベルのものではない。経営、経営者の実態を論じるには、少なくとも企業や経営者に張り付き、エスノグラフィック・リサーチを実施する必要がある。このようなアプローチでは、重箱の隅をつつくようにあらを探すよりも、学びのある長所に目を向ける場合が多い。短所を指摘する際も失敗の要因を究明し、今後の参考になるような提言をするように努める。

 このような指摘をしても、ブラックな情報を好む読者、さらには今でも否定的情報だけが受けると思い込んでいる旧態依然としたメディア、そのニーズに呼応しようとする、もしくは、「是々非々主義」を口にしながらも、批判こそ使命と確信してやまないジャーナリストは共感しないかもしれない。それは、そのような人たちのスタンスであり否定はしないが、異なった多様な見方があることも理解していただきたい。

ビジネスジャーナル

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