アベノミクス、なぜ若者の貧困化を加速?景気回復が格差拡大・非正規雇用を増長
Business Journal / 2014年1月15日 14時0分

2013年、アベノミクスによって日経平均株価や有効求人倍率などの経済指標は改善した。日本経済団体連合会(経団連)の調査によると、東証一部上場企業76社の冬のボーナスも前年比5.8%増と、バブル期以来の増加となった。
さらに、政府は4月の消費税増税による景気回復の腰折れを防ぐため、5兆円規模の経済対策を実施する。そろそろ景気回復を実感できる時期に差しかかっている。
しかし、残念ながら、アベノミクスの恩恵は若者(特に非正規労働者)には回ってこないかもしれない。そう悲観的にならざるを得なくなるのが『増補新版「格差」の戦後史』(橋本健二著/河出ブックス)だ。本書は、データを駆使して日本社会の階級構造を浮き彫りにしてきた早稲田大学人間科学学術院教授(社会学)が、若者の貧困、格差の始まりがバブル期だったということを明らかにする。
●若者の経済格差は、バブル期に始まった1980年代のバブル期は、70年代前半までの高度成長が終わり、労働需要が減少し失業者が増加。円高を背景に、東南アジアなどから安い製品が大量に流入し、競合する国内の中小企業の経営環境は厳しくなった。急激な円高の進行に対応するため、企業の生産拠点の海外移転、下請け企業に対する徹底した単価切り下げも行われ、中小企業労働者の賃金水準は抑制、大企業と中小企業の賃金格差は拡大するようになった。さらに、80年代に「雇うなら非正規雇用」というスタイルが始まり、非正規雇用が増大したのだ。
「一般労働者の求人倍率がわずかな回復にとどまったのに対して、パートの求人倍率は急上昇し、80年には前年比1.43倍(一般労働者0.75倍)、85年は同1.53倍(同0.64倍)、89年には同3.75倍に達する(同1.04倍)に達する。コスト削減が至上命題になっていたことから、企業は労働力を非正規雇用に頼ったのである。その結果、85年から90年の間に正規労働者が145万人の増加にとどまったのに対して、非正規雇用者は226万人増えて、役員を除く雇用者の20%を初めて突破した」(同書)
当時、非正規雇用者は、女性を中心に増加。92年の段階で女性748.0万人、男性229.1万人、合計977.1万人だった(総務省統計局「就業構造基本調査」より)。97年には、それまで先送りされてきた不良債権問題が一気に噴出し、企業の大型倒産、経営破たんが相次ぎ、目の前の収益の改善を最優先とする企業側は大企業、中小企業を問わず、コスト削減で労働力の非正規化を進め、非正規雇用者は男性266.2万人、女性847.0万人、合計1113.2万人と1000万人を超えるまでに増加した。
この記事に関連するニュース
-
雇用統計、順調の謎。貿易交渉が不透明でも、雇用が増えるのはなぜ?11月米雇用統計 詳細レポート
トウシル / 2019年12月4日 15時29分
-
2030年の日本では「年収150万円」が普通!?
オールアバウト / 2019年12月2日 12時20分
-
同一労働・同一賃金の衝撃 大企業は本当に「非正規社員を救う」のか
ITmedia ビジネスオンライン / 2019年11月29日 8時0分
-
1日6時間労働で日本の生産性が上がる理由
プレジデントオンライン / 2019年11月21日 11時15分
-
日本経済はあと何年「失う」のか?―中国メディア
Record China / 2019年11月15日 8時20分
ランキング
-
1防衛省、ハードディスク流出元を指名停止…「契約相手として不適当」
読売新聞 / 2019年12月9日 21時53分
-
2神奈川県庁HDD転売、ネット掲示板では以前から「不穏な噂」が イニシャルで「横流し」書き込み
J-CASTニュース / 2019年12月9日 20時34分
-
3水谷さんを恐喝未遂の駒大生起訴 金銭を脅し取ろうとした罪で
共同通信 / 2019年12月9日 20時9分
-
4強毒ヒアリ定着の恐れ 水際対策「今が正念場」
産経ニュース / 2019年12月9日 21時30分
-
5PISA調査 日本の15歳、読解力15位 3年前より大幅ダウン 科学・数学的応用力はトップレベル維持
産経ニュース / 2019年12月3日 17時7分