東芝、異例人事から透ける内部対立 「停滞の戦犯」会長就任に、競合他社から安堵の声も

Business Journal / 2014年5月15日 1時0分

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 5月8日、東芝は西田厚聰会長が6月末に相談役に退くと発表した。役員定年(70歳)の社内規定に沿ったもので、既定路線であるため驚きはないが、注目すべきは後任人事だ。室町正志取締役が会長へ昇格するが、社長経験のない室町氏が会長に就くことは異例であり、前社長の佐々木則夫副会長は留任する。今回の人事からは、昨年浮き彫りになった東芝経営陣の対立が現在もまだ続いている様子がうかがえる。

 室町氏は半導体事業の出身で、一部報道によると「副社長時代は社長レースを佐々木氏と争った時もあった」とされるが内情は異なる。「原子力畑の佐々木さんは対抗馬がいない絶対的な本命。半導体畑出身の社長は東芝ではいないこともあり、室町氏が社長になるとみていた人間は社内ではいなかった」(東芝社員)という。

 室町氏は佐々木社長時代の2012年に常任顧問に退いていたが、昨年6月に電撃的に取締役に復帰した。一度顧問に退いた人間が取締役に復帰するのは異例だが、背景には西田氏と佐々木氏の確執があった。

 東芝関係者は、今回の人事について次のように解説する。

「西田さんは社内規定で会長を退くのは既定路線だった。ただ、このままだと佐々木さんを会長に昇格させざるを得ない。西田さんは佐々木さんと対立関係にあり、手駒として使えそうな室町さんを次期会長含みで復帰させた」

●経営トップ、対立の背景

 なぜここまで西田氏と佐々木氏の対立が深刻になったのか。西田氏は半導体と原子力に事業を「選択と集中」させることで、経営基盤を確立。自らの後任に佐々木氏を指名した。しかし、佐々木氏の社長就任後、関係が悪化。拡大路線を掲げた西田氏に対して、佐々木氏はコスト削減による利益重視の経営を進め、対立が生まれたとされる。

 前出の東芝関係者は、こうした噂に苦笑いを浮かべる。

「確かに経営戦略の考え方の違いもあるが、性格が合わない。佐々木さんが細かすぎるのが西田さんには気にくわない。佐々木さんは豪快そうに見えるが小うるさく、意外に気が小さい面があり、自分のことが書かれた新聞や雑誌はすべてチェックするほど。序列がはっきりした社長と副社長時代はバランスが取れていたが、会長と社長の関係になり、完全にうまくいかなくなった。性格で経営陣が対立されるのも困ったものだが」(同)

 経団連会長人事も、2人の関係に影を落とした。米倉弘昌経団連会長の後任人事で次期会長の筆頭とされたのが佐々木氏だが、それが面白くなかったのが西田氏。自身も最有力といわれながら、米倉氏との関係や、日本商工会議所の会頭を同じ東芝の岡村正相談役が務めていたことから、手中に収められなかったからだ。自らが経団連会長に一縷の望みをつなぐために会長に留まる一方、佐々木氏を社長から退かせ、副会長職を戦後初めて復活させて、そこに閉じこめた。経団連会長は自社の会長職が就くのが慣例のため、佐々木氏が東芝副会長になったことで、経団連会長レースからは姿を消した。

●競合他社から安堵の声も

 こうした内紛に対して東芝社内では西田氏擁護の声が多いが、「西田さんもやりすぎ」と社員があきれたのが昨年の「週刊現代」(講談社/13年6月1日号)の一件だ。社内での支持の多さから強気になったのか、誌上で公然と佐々木氏批判を展開。「原発しかわからない」といった経営上の問題から人格批判と思われるものまで、顔出しでインタビューに応じ、競合他社から「東芝は大丈夫か」という声もあがったほどだ。

 かつてはライバルである日立製作所を突き放し、「総合電機の雄」となった東芝。今や両社の立場は逆転し、「2000年前後に東芝の半導体が停滞した『戦犯』とまでいわれた室町氏を復帰させるなど、迷走はまだ続くだろう」(日立関係者)と、ライバルを安堵させる格好となっている。
(文=江田晃一/経済ジャーナリスト)

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