オーケストラ楽員にまで「おひとり様」の波…価値観が急速に転換、キャンプも「ソロ」が人気

Business Journal / 2021年1月9日 18時0分

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 僕は、海外ではプロのオーケストラしか指揮を振る機会はありませんでしたが、日本に帰国してからは、プロの指揮をしながら、市民オーケストラや一般大学オーケストラともコンサートをするようになりました。

 こうした違いの背景には、日本のアマチュア・オーケストラのレベルが大変高く、活動が盛んなことがあります。また、音楽大学を卒業して、一般企業の社員や教員になられた方々の音楽活動として成り立っていることもあるでしょう。なかには「本業と演奏、どちらが大事なんだろう?」と思わせる猛者までいます。

 そんななか、アマオケの方々とのリハーサルが終わると、ひとりの若いメンバーから「篠崎先生、カラオケボックスでしっかりと練習しておきます」と言われました。最初はなんのことか、まったくわかりませんでした。カラオケボックスは“歌って楽しむところ”と認識していたからです。しごきにしごかれたリハーサルのあと、カラオケで大いに歌いまくっても、難しい楽器のパートが弾けるようになるわけではありません。

 しかし後日、疑問が解けました。どうやら、カラオケボックスを借りて練習する人が多くいるようなのです。カラオケボックスはしっかりと防音が施されているので、それが楽器の練習にちょうどいいというのが、その理由です。プロの演奏家のなかにも、カラオケボックスで練習する人がいるようです。

 これには、昨今の住居の騒音問題が関係しています。周りを森に囲まれた家にでも住んでいれば別ですが、日本の住宅事情は、隣家と近接しており、マンションやアパートではそれこそ壁一枚を隔てているだけです。フルートやヴァイオリンのような、大きな音を出さない楽器であっても、深夜や早朝にでも練習していたとしたら壁をドンドンと叩かれることになります。特に大きな音が出るトランペットやトロンボーンなら、日中であっても自宅で練習することは困難です。

 しかも、プロのオーケストラでは、ものすごく難しいプログラムのコンサートをやっとやり遂げたにもかかわらず、翌朝10時からやったこともない曲が並んだリハーサルに取り組むことも普通です。コンサート後、クタクタになりながら夜10時に帰宅しても、必死で練習をしなくてはならず、それでも翌朝も早く起きて、もう少し練習することもあります。

 そんなわけで、高い工事費を出して防音室を自宅に設置している演奏家が多いのですが、大学を出たばかりの若い演奏家や、そもそも防音室の設置を許可されていない賃貸アパート暮らしであれば、練習することなど不可能です。

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