新型コロナ、アクテムラで死亡率が大幅減少か…日本がコロナ治療で世界を主導する可能性も
Business Journal / 2021年1月12日 17時10分

2020年10月、ドナルド・トランプ米大統領が新型コロナウイルスに感染したことは記憶に新しい。大統領選を控えたトランプ氏の容態に、世界の関心が集まった。しかし、トランプ氏はその強さをアピールするようにわずか3日で退院という回復の速さだった。トランプ氏の療養中、レムデシビルを投与したことを医師団が公表し、レムデシビルがコロナ禍の救世主となるのではないかと希望の光にも見えた。
しかし、その期待は一転、世界保健機関(WHO)はレムデシビルの効果について、十分なエビデンスが得られず、さらに重篤な有害事象が生じる可能性が否めないとし、新型コロナ患者への投与を非推奨とすると公表した。
新型コロナ感染拡大当初から、その治療にさまざまな既存薬の転用の可能性について研究が進められている。そのなかでも、リウマチ治療薬の既存薬トシリズマブ(アクテムラ)の新型コロナに関する効果について、イギリス政府が「重症患者がICUに移されて24時間以内にトシリズマブを投与開始した場合、死亡率を24%減少させる効果が認められた」と発表した。
実は日本でもトシリズマブの効果には注目しており、中外製薬株式会社は2020年4月8日、トシリズマブの新型コロナウイルス肺炎を対象とした国内第3相臨床試験の実施を発表している。
トシリズマブは、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体と呼ばれる分子標的薬であり、炎症性サイトカインの一種であるIL-6の作用を阻害する働きがある。
新型コロナに感染し重症化する場合、サイトカインストームと呼ばれる過剰な免疫反応が起き、肺炎、肺損傷の急激な悪化を起こすと考えられる。サイトカインストームが起きるとIL-6が増加することがわかっており、トシリズマブによってIL-6の作用を阻害すれば肺炎のさらなる重症化を抑制する効果があるのではないかと期待されている。
今回のイギリスの発表からも、トシリズマブの効果に期待が高まる。また、2020年に中国が作成したCOVID-19治療ガイドラインでも、重症例にトシリズマブ(アクテムラ)の使用が推奨されている。
英米をはじめとする海外で、新型コロナウイルスワクチンの接種が始まったが、ワクチンへの期待の一方で副作用の懸念もある。また、日本へ十分に供給されるのかなど不安要素も多い。
このような状況下でトシリズマブによる治療が有効となれば、コロナに打ち勝つだけでなく、日本にとって朗報となる。トシリズマブは大阪大学の岸本忠三特任教授らのグループと中外製薬が開発したもので、日本がコロナ治療においてイニシアチブを取るきっかけとなる可能性もあり、さらなる研究結果が待たれる。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)
吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
空間除菌やサプリ、消費者庁が注意喚起…コロナ詐欺が横行、「新型コロナに効く」は疑え
Business Journal / 2021年2月23日 18時10分
-
アビガンが今になっても承認下りない根本理由 どんな臨床試験が行われたか知っていますか
東洋経済オンライン / 2021年2月12日 16時0分
-
コロナ治療に日本発のリウマチ薬 感染死のリスク減少と英チーム
共同通信 / 2021年2月12日 10時7分
-
ロシュの抗リウマチ薬、コロナ重症患者の死亡率低下に有効=治験
ロイター / 2021年2月12日 2時28分
-
ぜん息薬、皮膚病薬…“コロナで不足する薬”の共通点
WEB女性自身 / 2021年2月5日 11時0分
ランキング
-
1平均賃金は韓国以下…「貧しい国」になった日本が生き残るための“新常識”
文春オンライン / 2021年3月4日 6時0分
-
2天皇陛下のご発言に眞子さま動揺 怒りの矛先は何もせぬ小室さんに?
NEWSポストセブン / 2021年3月4日 7時5分
-
3首相、東北新社を利害関係者と認識 長男の就職当時から 参院予算委
産経ニュース / 2021年3月3日 20時45分
-
4東京五輪、海外観客受け入れ見送り=政府調整、月内にも決定
時事通信 / 2021年3月3日 23時9分
-
5聖火ランナーのメアド隠さず一斉送信 20人分、京都府が謝罪
京都新聞 / 2021年3月3日 20時0分