神戸市肝入り先進病院、なぜ破綻?他病院で断られた患者を手術、死亡例7割は多いのか

Business Journal / 2016年4月9日 6時0分

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 3月23日、筆者の生まれ故郷であり、中学・高校時代を過ごした神戸を訪問した。ポートアイランドにある神戸国際フロンティアメディカルセンター(KIFMEC)を見学するためだ。

 KIFMECは、14年11月に田中紘一・京都大学名誉教授が中心となって開設した肝移植を中心とした病院だ。神戸市が土地を提供し、三井物産などが出資する特定目的会社が設備を整え、KIFMECが運営する。神戸医療産業都市構想の一翼を担う。

 ところが、昨年4月、移植患者の死亡が相次いだことが報じられ、KIFMECは存亡の危機に立たされた。困ったKIFMECは日本肝移植研究会に調査を依頼した。同研究会は報告書の中で、その運営体制を糾弾した。4月24日、地元紙である神戸新聞は、以下のように報じた。

「報告書では、死亡した4人のうち3人は、救命できた可能性があり、残る1人は生体肝移植による治療が困難だったとしている。センターには抜本的な組織改革を求め、改革を終えるまでは移植手術を中止すべきだと提言した。手術を再開する場合は、生体肝移植に適しているかどうかを、肝臓内科医や経験豊富な移植医を入れた委員会で1例ごと検証するよう求めた」

 この後も多くのマスコミが、KIFMECを批判した。患者は激減し、今年3月末に経営破綻した。お会いしたKIFMEC関係者は「それまで順調に患者数が増えていたので、あの報道が効きました」と言っていた。

 筆者はこれまで、日本肝移植研究会の対応を批判してきた。それは、彼らが問題視したことが、患者の死因とは直接関係ないからだ。死亡例が続いたのは、他院で断られた状態の悪い患者に移植したからで、手術適応の問題だ。手術適応の議論は難しい。事後的に規範論を振りかざし、第三者が批判すべきではない。 

●死亡率7割とみるか、成功率3割とみるか

 今回のケースでもっとも重視すべきは、KIFMECで移植を受けた患者が、肝移植以外に救命の方法はなかったことだ。さらに、ほかの病院では移植手術を引き受けてくれず、患者は田中医師に頼らざるを得なかった。

 全身状態の悪い患者を治療すれば、成績が悪いのは当たり前だ。2月6日現在、KIFMECで移植を受けた患者10人中7人が移植後1年以内に死亡している。これを死亡率7割とみるか、成功率3割とみるかは難しい。

 筆者が専門とする骨髄移植の領域では、進行した白血病で骨髄移植しか救命方法がない場合、患者の年齢が若く、ドナーがいれば骨髄移植を選択することが多い。移植後は放射線や抗がん剤の合併症、および移植片対宿主病という免疫反応で数割の患者が命を落とす。ところが、このことに文句を言う医療関係者は少ない。同じ移植治療でも、骨髄と肝臓ではまったく違う。少なくとも絶対的な正義は存在しない。治療法の選択とは、かくのごとく相対的なものだ。

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