就活がセクハラの温床に!トヨタ系幹部セクハラ事件は序の口?危険だらけ?採用担当者の違法行為横行

Business Journal / 2016年4月21日 6時0分

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 トヨタ自動車グループの企業で昨夏、悪質なセクハラが行われていた。愛知県安城市にあるトヨタ系の部品メーカーであるアイシン・エィ・ダブリュの40代幹部社員が、入社を希望する20代の元女子学生に対して、採用の見返りに不適切な関係を迫ったという。

 報道によると、この幹部社員は「合格ラインに達していなかったが、自分の力で筆記試験を通した」などと発言した上で食事に誘い、その後もメールやLINEで連絡を取り関係を迫った。これを女性が断ると、「うちの会社には絶対に内定させない」といったメールが送られ、実際に不採用になってしまったという。

 3月25日、女性は幹部社員と同社に対して慰謝料の支払いを求める損害賠償訴訟を提起した。すでにこの幹部社員は処分され退社しているという。労働問題に詳しい浅野総合法律事務所の浅野英之弁護士は、次のように採用の場面でのセクハラ問題に警鐘を鳴らす。

「面接官が一方的に質問しても、就職活動生は明るく丁寧に応対します。そのため面接官は、就活生が自由な意思に基づいて、好意的な応対をしていると勘違いしがちです。しかし、採用の可否を判断する権限がある面接官に対し、採用を獲得したいがために内心嫌悪感を抱きながらも従っていたとすれば、面接官に悪気がなくてもセクハラを犯していたと認定されるおそれがあります」

 就活の場合、経営者や人事労務・総務担当者は人事権を握っていることから、就活生に対して強い権限を持っているといえる。そのため、採用を見返りとした対価型セクハラの温床となりやすい。会社としては、どのようなケースを想定して注意するべきなのか。

「『この後、食事に行けますか?』『今週の土日は何をしていますか?』といった、プライベートな予定を尋ねる行為は危険です。日時を特定して予定を聞くことは、採用の可否を決めるにあたっては不必要ですし、事実上個人的なデートに誘う示唆を含む発言であると評価されかねません。また、OB訪問、事前面接等と告げ、個室に誘い込む行為もセクハラと評価されるおそれが高いです」(同)

 会社としては、社員と学生の個人的な問題として片付けたいところかもしれないが、そう甘くはない。労働審判、訴訟等に紛争が拡大すれば、会社に不利な判断が下る可能性が高いという。

「面接官の就活生に対するセクハラは民法上の不法行為(民法709条)にあたり、就活の場におけるセクハラは業務の執行に付随してなされたものといえますから、会社もまた使用者責任(民法715条)を負うと考えられます。会社側の対応としては、面接官となる人事労務・総務担当者に対して、就活生に対する個人的な連絡を一切行わないよう周知徹底すると共に、発覚した場合には厳しく処罰すべきでしょう」(同)

「あくまで個人的な誘いであって、嫌なら断ればよい」といった反論は、通常の人間関係にはあてはまるかもしれない。しかし、就職活動においては学生の立場が圧倒的に弱く、双方の立場の強弱が際立っている特殊な場面だ。会社もこの点に十分留意して、違法行為を行う採用担当者がいないか、適切な調査、確認をすべきだろう。
(文=Legal Edition)

【取材協力】
浅野英之(あさの・ひでゆき)弁護士、浅野総合法律事務所代表弁護士
労働問題・人事労務を専門的に扱う法律事務所での勤務を経て、四谷にて現在の事務所を設立、代表弁護士として活躍中。
労働問題を中心に多数の企業の顧問を務めるほか、離婚・交通事故・刑事事件といった個人のお客様のお悩み解決も得意とする。
労働事件は、労働者・使用者問わず、労働審判・団体交渉等の解決実績を豊富に有する。

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