フジ月9『絶対零度』異例ずくめの傑作…巧妙な伏線と衝撃の結末に呆然&鳥肌

Business Journal / 2018年8月15日 19時0分

 本作は序盤こそ軽いタッチのドラマに見えたが、次第にテーマが重くなってきており、それに伴って役者の演技で魅せる場面も増えている。今回は、仕置人ではないかと疑われた井沢が取調室で東堂と対峙し、本人にしかわからないように真犯人のヒントを伝えたシーンが秀逸だった。

 井沢は25年前の無差別殺傷事件には動物殺傷の予兆があったのに防げなかったことを引き合いに出し、「あなたはわたしを疑っているんですか」と東堂に尋ねられると、「疑ってますよ」とさらりと言ってのける。東堂は視線を下げて一瞬何かを考えこみ、次の瞬間には呆然としたかのように目を見開き、井沢にまっすぐ視線を向けた。何を考えているのかわからない表情は不気味で、ただ恐ろしい。取調室を去った東堂は床に崩れ落ち、苦しそうな表情を浮かべて涙を流した。リアルタイムで視聴した際には一連のシーンの意味はさっぱりわからなかったが、結末まで視聴し終えてから振り返ると、大変味わい深い。

 東堂は当然のことながら田村が25年前の事件にかかわっていたことを知っており、井沢との会話を通して、「自分が仕置人ではない以上、田村が真犯人である」との結論にたどり着いた。そして、自分がミハンシステムを立ち上げ、田村をチームに引き入れることさえしなければ、田村を殺人犯にすることもなかったことに気付く。犯罪を未然に防ぐために開発したミハンシステムが、新たな犯罪者を産んでしまったという皮肉すぎる結末。犯罪を強く憎む東堂にとって、受け入れ難い事実であったに違いない。伊藤の演技からは、東堂が抱えるそんな苦悩がよく伝わってきたように思う。

 結局、仕置人の正体探しは、田村が拳銃で自殺するという悲しい結末で幕切れとなった。普通のドラマなら最終話かその1話前まで引っ張るような話を第6話の時点で終わらせ、しかも主要キャストが自殺して退場するという展開はかなり異例だ。裏を返すと、この先もうひとつ山場があるに違いない。ミハンチームの物語だけで十分、良いドラマになっているのだから、『絶対零度』の続編にするために無理やりねじ込んだような桜木泉の消息だけで後半を引っ張るのはやめてほしいが、果たしてどんな展開が待っているのだろうか。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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