AVにおけるエンタメ性とは…文筆家・森下くるみと考える「健全化されたあとのAV業界」

Business Journal / 2019年5月27日 20時0分

河合幹雄 いや、それはおっしゃる通りで、「AV業界に過剰な健全化のようなものを持ち込むと、結果的に文化としてのAVのよさが失われてしまう!」みたいな物言いって、特にサブカル系の社会学者なんかが言いそうなセリフなんですが、それこそAVあるいは性風俗文化に対する過剰な思い込みだなとも思うんですよ(笑)。

 だから、別にAVを芸術作品として国会図書館に収蔵すべき、ということではないんだけど、たとえば江戸時代の春画や昭和のカストリ雑誌のような、当時はただの性的消費物に過ぎなかったようなものが、後年、ある種の文化資産としての価値を見いだされて研究の対象になってくる――というようなことはよくあります。とするとAVだって、将来そうなる可能性はあるわけだから、のちのちのために、とにかくどこかに残しておいたほうがいい、という考え方は理にかなっているのではないかと思うわけです。

森下くるみ 少しおおげさですが、日本のAVを見ると「人間の性癖は無限だな」と思うんですね。ある意味で貴重です。50年後、100年後にこれらがどう扱われるのかを見越して、資料的な意味合いで残すということについては、私も異議はありません。私が個人として求めたのは、あくまで販売・配信を停止する意味での「消す」であって、「なかったことにしてくれ」ではないですから。

河合幹雄 歴史的なアーカイブとしてさえ残さずに「消す」というのはやっぱり違うだろう、ということですね。

●目指す健全化はAV業界存続を前提とした「最低限これだけは、というレベル」

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 特に性風俗のような領域については、健全化を過度に進めるとかえって弊害を生み出す危険性がある、というのは、昔からしばしばなされてきた議論だ。たとえば、2004年に警察庁出身の東京都副知事・竹花豊氏によって主導された「歌舞伎町浄化作戦」では、店舗型風俗店を排除して一見きれいな町が出現した代わりに、店舗型から派遣型風俗店(デリヘル)への移行が進み、結果的にいわゆる“本番”が横行したり、乱暴な扱いをされる風俗嬢が増えたりした、という批判がある。

 AV業界健全化の制度設計に携わった河合氏から見て、今後、AV業界にもそういう負の側面が出てくる可能性はないのだろうか?
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河合幹雄 結論からいうと、それはないと思いますね。というのも、われわれのやっていることというのは、発売から5年以上経過したAV作品を消せるようにするとか、オムニバス作品を作ったら出演者に二次利用料を払うとか、女優に対して出演前にちゃんと内容を説明して契約書を交わすとかいう、めちゃくちゃ当たり前のことだけだからです。あくまで、ビジネスとして最低限これだけはやりましょうね、というレベルでの健全化ですから。

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