ヤンマー、“エルメス化”改革は成功するのか?天気予報からフェラーリ型トラクターへ

Business Journal / 2014年9月8日 1時0分

 BtoC(企業から個人)向け事業の場合、格好良さ、お洒落というのは購買意思決定要因として重要な要因の一つとなる。バッグを購入するときに、ブランドのロゴマークは重要だし、クルマを買う時には格好良いデザインは重要である。

 しかし、BtoBでは、格好良さやお洒落というのは、BtoCと比較すると相対的に重要ではない。造船事業を営む企業が求めるのは、お洒落な船舶用エンジンではなく、耐久性があり高機能な船舶用エンジンである。工作用機械メーカーも同様だ。だから、あくまでも前出日経新聞記事をベースとする見解となるが、「フェラーリを彷彿とさせる深紅のトラクター」は、ターゲット顧客が求めていないものを提供することになる。顧客が求めていないものを提供しても、それは顧客から支持されない。だから筆者は、これらの事業群に対し「エルメスのような会社」であることを提供価値としても、受け入れてもらえないと考えている。

 日本の農業は諸外国と比較し、事業規模が小さい。その結果、農業における事業生産性は諸外国と比較し、非常に低い。わかりやすく例えると、家電販売店や衣料販売店でいえば、商店街にある小さなパパママショップのようなものである。一方、諸外国の農業は、ヤマダ電機やビックカメラ、ユニクロだと考えればよい。どちらが事業生産性が高いかは、一目瞭然だろう。

 そこで現在、日本では農業の大規模化、工業化が推進されている。このトレンドに乗るなら、ヤンマーが目指すべき方向は、大規模プラントにおける生産性向上を果たすような大型トラクターの提供であり、生産管理サービスである。決してフェラーリ風の小型トラクターではない。

 また、若い農業従事者を呼び込む目的で作業着を開発したというが、これは本末転倒だ。農業従事者は高齢化が進み、若年層の農業従事者が少なく、将来的に尻すぼみの産業になっているが、筆者はそれで問題ないと思っている。というのも、家電販売店のパパママショップと同じで、大型量販店がその役割を効率的に代替してくれるからだ。前述のとおり、農業の事業生産性を諸外国と同レベルにするには、農業の大規模化、工業化が必要である。将来的に農業の担い手は、個人農業従事者ではなく、企業だ。だから、ここでもお洒落な農業作業着(図表2)は必要ないというのが、筆者の考えだ。

 もちろん、若年層がこれから農業事業に参入することを否定しない。小規模ながらも有機農業など、差別化を図れるビジネスモデルであれば、事業としての成功可能性は十分にある。しかし、彼らは自分の夢が農業であったり、事業として魅力を感じるから農業に参入するわけであり、作業着が格好良いから農業に参入するわけではない。それゆえ、若い農業従事者を「呼び込む」目的で格好良い作業着を開発しても、若者は「呼び込まれ」ない。

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