美容ブランドらが大統領選挙の投票を呼びかけ。Z世代をはじめ顧客はどう呼応する?

cafeglobe / 2020年10月29日 8時0分

VOTE

ファッション業界では、ブランドが来るアメリカ大統領選挙に向け、投票を呼びかけるアイテムを発売する動きが相次いでいる。その流れに続き、独自の投票推進運動を展開する美容ブランド登場しており、なかには特定の党派を支持するものも見られる。

大統領選挙まで1か月を切り、ソーシャルメディアでのキャンペーンやマーチャンダイジングを通じて、有権者登録を促す美容ブランドが増えている。ほとんどのブランドは、特に今年の夏に始まったブラック・ライブズ・マター(BLM)運動への支持といった、現在起きている問題に対する立場を明確にしている。しかし政治的な路線では大きく分断されているアメリカにおいて、候補者を直接的、あるいは間接的に支持するかどうかについては、各ブランドはそれぞれ異なるアプローチをとっている状況だ。ブランドは、みずからの発言を実践するかどうかを問われているため、信頼を得るには行動で示さなくてはならないというプレッシャーに晒されている。

民主党候補バイデン氏をサポートする「バイデンビューティ」も誕生

いくつかの美容ブランドは、民主党大統領候補のジョー・バイデン(Joe Biden)氏と副大統領候補のカマラ・ハリス(Kamala Harris)氏に投票するようフォロワーに公式に呼びかけている。たとえばビューティーベーカリー(Beauty Bakerie)は、週末にインスタグラムのストーリーズで、バイデン氏を支持する活動団体「ラリー+ライズ(Rally + Rise)」による投票ガイダンスをシェアした。

また同ブランドは、ノースカロライナ州の上院選挙でリンジー・グラハム(Lindsey Graham)上院議員に対抗して出馬したジェイミー・ハリソン(Jamie Harrison)氏に寄付するためのリンクをシェアし、「ダウンバロット」(通常、投票用紙のなかで国政選挙よりも下の方に記載されている州や地方自治体の公職選挙を意味する言葉)でも民主党候補者を支持することを表明している。

しかし世の中でもっとも明確にバイデン氏を支持しているブランドといえば、間違いなくバイデンビューティ(Biden Beauty)だろう。9 月30日にインスタグラムに現れたこのブランドは、民主党のイメージカラーであるブルーのメイクスポンジと、バイデン氏を応援するアイテムを販売している。

バイデン氏を支持する初の美容ブランドであるバイデンビューティ。その売り上げはすべて、バイデン陣営の活動資金調達団体「バイデン・ビクトリーファンド(Biden Victory Fund)」に寄付される。もともとは匿名のチームによってつくられたブランドだが、メンズグルーミング&ビューティーサイトの「ベリーグッドライト(Very Good Light)」と提携していることがTMZによって確認されている。

政治に無関心な姿勢をやめ、声をあげ始めた美容ブランド

ファッション業界では頻繁に目にする「Vote(投票しよう)」というロゴがプリントされた商品は、美容業界においても散見されるように。たとえばスターフェイス(Starface)は、若者に向けた政治活動団体「アライアンスフォーユースアクション(Alliance for Youth Action)」とパートナーシップを結び、ニキビパッチのセット「Vote」を発売した。ザ・リップバー(The Lip Bar)、グロッシアー(Glossier)、キッチュ(Kitsch)といったブランドもミシェル・オバマ(Michelle Obama)氏が組織する選挙への参加を呼びかける非営利団体「ホエン・ウィー・オール・ボート(When We All Vote)」と提携した商品を販売している。

「美容においても、政治においても、不正に対して声をあげることを恥ずかしいことだとは決して思わない」と言うのは、ザ・リップバーの創始者でCEOのメリッサ・バトラー(Melissa Butler)氏だ。ミシェル・オバマ氏(バトラー氏いわく「私の永遠のファーストレディ」)は、以前このブランドのスペシャルエディションのコラボリップを愛用していた。「今年、私たちは初めて有権者登録を促進するための資金提供を行いました。私たちは前よりも活動的になっていますが、個人的な意見として、その理由は黒人やヒスパニック、女性の命が州や地方レベルで危険にさらされているからです」

Michelle Obama

かつては、多くの美容ブランドが政治に無関心な姿勢を貫いていたが、次第に保守派からは強く反発されるような姿勢を取るようになってきている。これがもっとも顕著に現れたのは今年の夏で、共和党の反発にもかかわらず、大半の美容ブランドがブラック・ライヴズ・マター(BLM)への支持を表明した時である。近年プライド(LGBTの社会運動)を尊重していたブランドは、その流れが多数派になるまでどっちつかずの態度だったことを批判されている。

ベリーグッドライトの創始者でバイデンビューティのスポークスマンのデヴィッド・イー(David Yi)氏は「ブラック・イズ・ビューティフル」を掲げた公民権運動など歴史上の重要な出来事を挙げ、以下のように語る。

「美容ブランドが、バイデン氏に対する支持・不支持に関わらず、この機会を自分たちは何者なのか、何を支持しているのかを消費者に対して示すことができるチャンスなんだと捉えられればいいと思っています。美はこれまでも常に政治的なものでした。どちらか一方の側にいないのは、ただその場に立っているだけということで、どちらの方向にも進んでいないのと同義です」(イー氏)

マーケティングのためではなく、信念を示すために行動する企業たち

「企業は自分たちが真に支持していることが何であれ、その姿勢を明確にする必要がある」と話すのは、ウオマ・ビューティ(Uoma Beauty)の創始者シャロン・シューター(Sharon Chuter)氏だ。彼女は、黒人社員数の公表を促すキャンペーン「プルアップ・フォー・チェンジ(Pull Up for Change)」の創立者で、インクルージョンを積極的に推奨してきた。彼女自身はインスタグラムのアカウントでトランプ氏に反対の立場を表明しているが、ウオマ・ビューティは、ソーシャルメディアのアカウントを通じて、全米有権者登録の日には投票に行くようフォロワーに呼びかけている。また、企業と政治のスタンスについて、シューター氏は以下のように語る。

「私たちは実行主義的行動主義(大義への献身のためではなく、社会的資本を増やすために行動すること)や、パフォーマンス的な支援は望んでいません。企業による政治的メッセージの発信は、本当に選挙を気にかける企業のみマーケティングツールとして使うべきうべきです。どの企業もすぐに飛びつかなくてはならないという風潮になってしまうと、社会の役に立つどころか、危険なものになってしまいます」(シューター氏)

アメリカ最大の美容企業エスティローダーカンパニーズ(Estée Lauder Companies)は、この夏、人種平等を支持するという同社の表現は偽善だという批判に直面した。従業員たちはトランプ氏の大口寄付者である同社の後継者で役員のロナルド・ローダー(Ronald Lauder)氏の解任を求める手紙を経営陣に送ったと報じられている。

その手紙には「ロナルド・ローダー氏のエスティローダーカンパニーズへの関与は、当社の企業価値、黒人コミュニティとの関係、社内の黒人従業員との関係、そして会社の遺産にダメージを与えている」と書かれていた。それ以降もローダー氏は同社の取締役の地位にとどまり、最近では「セイフトゥギャザーニューヨーク(Safe Together New York)」という政治活動特別委員会に170万USドル(約1億8000万円)を寄付している。

ブランドが発信するメッセージに注目するZ世代

小規模な美容スタートアップの創立者たちによれば、若い世代の有権者はブランドが現在起きている問題についてメッセージを発し、それがブランドの信頼性を高めることにつながるのを期待しているという。

「今回は弊社にとって初めての選挙であり、私たちの顧客の多くにとっても自分が投票できる初めての選挙となります」と話すのは、Z世代ブランドのスターフェイス(Starface)共同創始者ジュリー・ショット(Julie Schott)氏だ。もうひとりの共同創始者であるブライアン・ボーダイニック(Brian Bordainick)氏は、共和党支持者の多い地区で民主党候補者を支援するための政治活動特別委員会「スクエアワン(Square One)」を設立した。

starface

「若者が自分に力を与えられたと感じ、実際に自分の一票に意味があると思えたなら、選挙が本当にまったく違うものに見えてくるはずです。そうした物語の一部になれることは、ブランドとして非常に重要なことだと思いますね」(ボーダイニック氏)

ボーダイニック氏がこのように語る一方で、ショット氏も以下のように語る。

「そういった情報は信頼できるところから発信されなければ、Z世代の心には響きません。Z世代は、自分にとって価値があるものにお金を使います。彼らを引き寄せているのは価値観ですが、多くの大企業はその問いにどう答えればよいのかわかっておらず、行き詰まっている状態だと感じます」(ショット氏)

Trump and Biden image via Shutterstock

広がる「投票の時」運動。投票のための有給休暇付与も

ブランドの創始者たちは、美容ブランドの消費者層が主に女性であることもよく理解している。世論調査で女性は一貫してバイデン氏を支持することが示されている。いちばん最近のYouGovによる世論調査では、全国的にバイデン氏は女性の間で14ポイントをリードしており、共和党が強い州でも女性はバイデン氏を支持していることがわかった。

美容ブランドのアリーウープ(Alleyoop)は、毎回投票をしない層の53%が女性という統計を変えることを目的とした「#WontBe53(53%にはならない)」という投票キャンペーンを10月1日に開始した。

「この統計は私たちにとって衝撃的でした。この事実について、よく考えなくてはなりません」とアリーウープの創業者でCEOのレイラ・カシャーニ(Leila Kashani)氏は述べている。

また、活動家たちは、ブランドのキャンペーンは投票率に関わる大きな問題に取り組む必要があると指摘する。例えば、時給労働者や有色人種の人々の多くが、投票のために仕事を休めないなどの影響を受けているという問題だ。雇用主に投票のために有給休暇を与えるよう義務付けていない州もあれば、1、2時間に制限して有給時間休を設けている州もある。

10月5日、エスティローダーカンパニーズ、ロレアルUSA(L’Oréal USA)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)、ユニリーバ(Unilever)など、美容系企業のトップ企業らを含む、米国パーソナルケア製品協議会(PCPC)のブランドメンバーは、「投票の時(Time to Vote)」運動の一環として、従業員に投票するよう促し、投票や選挙ボランティア活動のための十分な時間を提供することを誓約した。

この運動では、これまでに業界を超えて約1,400の企業からの誓約を獲得している。「投票の時」の署名には他に、セフォラノースアメリカ(Sephora North America)、グロッシアー、ハリーズインク(Harry’s, Inc.)、サリービューティホールディングスインク(Sally Beauty Holdings, Inc.)、E.l.f.、LVMHノースアメリカなどが名を連ねる。

製品の無料配布など大胆なキャンペーンも

有権者の投票キャンペーンのルールについては、企業は連邦選挙委員会に従わなくてはならない。ブランドは投票キャンペーンをどのように進めていくのか、有権者登録機関から法的指導を受けている。たとえばアリーウープはVote.orgと提携している。当初、同ブランドは投票登録のための商品を無料で提供する予定だったが、最終的にはVote.orgの協力のもと、ルールを遵守するために、登録を誓約した人に商品を無料で提供するキャンペーンを実施することにした。

「本当に統計を変えたいなら、本当にクレイジーなことをやる必要があります。自分たちにできる最高にクレイジーなことは商品を無料で配布することだったんです」(カシャーニ氏)

同ブランドは、投票に関するリソースにリンクを貼り、投票することを約束した人それぞれに最大20USドル(約2,000円)相当の製品を無料で提供する。投票を誓約した最初の5万人に商品を配布する計画であり、これは金額にして100万ドル(約1億500万円)にものぼる。

ブランドのキャンペーンに見られる党派性のレベルに差がみられる。ミシェル・オバマ氏の党派を超えたキャンペーン「ホエン・ウィー・オール・ボート(When We All Vote)を支援するブランドには、NYXプロフェッショナルメイキャップ(NYX Professional Makeup)も参加している。

同ブランドはこの投票キャンペーンのためにアーティストのモニカ・アハノヌ(Monica Ahanonu)氏にイラストを依頼した。アハノヌ氏は自身のインスタグラムのアカウントにバイデン氏とハリス氏を支持する作品を投稿している。支持政党を問わない組織「アイ・アム・ア・ボーター(I am a voter)」を支援するブランドには、ベネフィット(Benefit)、エリザベスアーデン(Elizabeth Arden)、ジョジーマラン(Josie Maran)、ミルク(Milk)、ヴァースト(Versed)、フェンティビューティ(Fenty Beauty)、そのほか女性が創業したさまざまなDTCブランドがある。

多くのブランドのキャンペーンはこの秋からスタートしているが(いくつかの州の提出期限が過ぎた後に予定されているキャンペーンもある)、キッチュの投票を呼びかけるアイテムは1月に登場した。

VOTEmerch

「私たちにとっての投票とは、4年に一度の投票だけを意味するものではありません。州や地方の選挙を含む、大統領選挙以外のすべての選挙をサポートすることが重要でした」と、キッチュの創設者カサンドラ・サーズウェル(Cassandra Thurswell)氏はメールで回答した。

民主党の議員や支持者と手を組むブランドにとって、その決断はこれまで支援してきた問題に再び取り組むという表明だ。

「私たちはブラック・ライブズ・マターを大切なことだと信じているし、制度的人種差別を終わりにすることを支持するためにも、もう黙ってはいません。私たちは、恵まれない人々や社会から見落とされている人々のために戦い続けます。そして声なき者に声を与え続けるのです。これらは支持政党を問うような問題だとは思いませんが、もし問題であってもかまいません」(バトラー氏)

原文[‘Beauty has always been political’: Brands promote voter turnout in hyper-partisan U.S.]

LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida)

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