【就活時事#1】ウナギが絶滅寸前?稚魚を「保護すべき」論争はどうなっているのか

キャリマガ / 2018年7月20日 15時0分

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2018-07-20 更新

「最近気になるニュースはありますか?」
面接でこんな質問をされたら、あなたはどう答えますか?
情報収集力があるか、アンテナ感度は高いかなどを確かめるため、企業はこんな質問をよく投げかけます。いつ聞かれてもいいように、時事ネタに強くなっておきましょう!

「就活時事」シリーズ第1弾は、夏になると必ず話題にのぼるウナギに関する問題です。ニュースを読み解くコツも併せてご紹介します。

近い将来、ウナギが食べられなくなる!?日本人が直面する危機的状況とは

今年の夏もまた、土用の丑の日がやってきました。
江戸時代の発明家・平賀源内が、旬ではない夏にウナギを売るためにPR案として考えたといわれる「土用の丑の日」がすっかり定着。土用の丑の日のスーパーやコンビニの店頭には、所狭しと鰻の蒲焼がずらりと並んでいます。

しかし昨年12月、ニホンウナギの池入れ量が前年比で99%減になり、絶滅の危機と大きく報じられました。それ以前にも、個体数の減少速度からニホンウナギは2014年、国際自然保護連合の絶滅危惧種に指定されています。これは、ジャイアントパンダやトキと同レベルの扱いです。

日本人に馴染み深いウナギの危機に、私たちはどう向き合えばいいのでしょうか?
ニホンウナギの卵を世界で初めて発見し、「うなぎ博士」の愛称で知られる日本大学生物資源学部の塚本勝巳教授に、最新ウナギ事情を伺いました。

私たちが食べている99.7%は、稚魚から育てた養殖ウナギ

 そもそも、日本の食卓に並ぶウナギは、天然ウナギと養殖ウナギの大きく2種類に分けられます。私たちが食べている99.7%は養殖です。

しかし、「養殖ウナギ」と呼ばれていても、卵から育てているわけではありません。ニホンウナギの場合、卵はグアムの近くのマリアナ沖で産み付けられ、孵化し、約3,000キロを旅しながら5~10年かけて日本にやってきます。ウナギの稚魚(シラスウナギ)を河口付近で捕まえ、食べられる大きさになるまで養殖池で育て、市場に出荷しています。

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先日、報じられた「池入れ量」とは、シラスウナギを養殖池に入れた量を指しています。市場に出回るウナギの量は池入れ量によって決まり、国内で確保しきれなかった分は、海外から輸入をして補っているのです。

昨年末に騒ぎになった池入れ量激減の背景について、塚本氏はこう説明します。

「2017年は何らかの影響でウナギが卵を産む時期が遅れ、結果としてウナギの稚魚であるシラスウナギの接岸時期も後ろにずれたため、12月と1月の時点では歴史的な不漁になりました。しかし、これは時期がずれていただけなので、最終的には例年の7割ほどは確保できました。大きく取り上げられたのは、漁期前半が過去になかったほどの大不漁だったからですね」(塚本氏)

温暖化・河川の環境・乱獲……複数の原因で減少するウナギ

年によって多少の変動はあるものの、国内のウナギの供給量は2000年をピークにゆるやかに減少しています。市場に出回るウナギが減れば、当然ながら値段は上昇。それらの影響もあって、実はウナギの消費量自体も最盛期の約16万トンから約4万トンまで激減しているのです。

そもそものウナギ減少の原因は何なのでしょうか。

「これは非常に複雑で、複数の要因が挙げられます。まず1つ目は、獲りすぎです。地域によっては、河口にやってきた稚魚の5〜7割以上も養殖のために獲ってしまいます。これを繰り返すことによって、川で成長して卵を産むために海へ帰っていく親ウナギの数が減り、その結果生まれる子どもが減り、日本にやって来るシラスウナギがどんどん少なくなってしまうのです。ほかにも、治水のために河川をコンクリートで埋め固めたことでウナギの住処や餌がなくなったり、孵化の場所となるマリアナ沖が地球温暖化や気候変動の影響を受けて変化したりしたことも可能性として挙げられます」

ウナギの完全養殖にはコスト面に大きな課題が……

ウナギの供給量を安定させ、価格が高騰しないようにするにはどうすれば良いのでしょうか。天然の稚魚の乱獲を止め、養殖に使うシラスウナギを卵から人工的に育てて使うことは可能なのでしょうか。塚本氏はこう続けます。

「研究施設でウナギを卵から育てる完全養殖の技術はあるものの、現時点では1匹の生産に1万円くらいのコストがかかっています。反面、市場に出回る天然稚魚の価格は、1匹100〜400円程度。不漁のために値段は上がっているものの、まだ完全養殖に比べると格段に安い。完全養殖で採算ベースに乗るまで、まだ10年ほどはかかるのではないでしょうか。とはいえ、日本人が食べているウナギの量からすると、3億匹の稚魚が必要です。これら全てを完全養殖でまかなうのは、現実的ではありません。やはり稚魚が自然界で成魚まで育ち、卵を産みに海へ帰れる対策をしていかないといけません」

現在、ウナギはすでに絶滅の危険性も指摘されています。いまから保護に取り組んでも間に合うものなのでしょうか?

「すでに、養殖のための稚魚の池入れ量の制限や、卵を産むために海に帰って行く親ウナギに対する都道府県ごとの捕獲の禁止・自粛といった対策が行われています。ニホンウナギは中国や台湾、韓国にもすんでいるので、これら東アジアの国々の間で協力して資源を守る努力も不可欠です。ウナギの一世代は、約10年。そのため10年ほど獲るのを我慢すれば、数は回復する可能性が高いと考えられます」

ニュースは、問題を長期的か短期的かに切り分けて読む

塚本さんへの取材によって、ウナギを取り巻く現状を把握することができました。今後、ウナギに関するニュースを見かけたら、私たちはこれをどう受け止めて行動すればよいのでしょうか、最後にアドバイスをいただきました。

「そのニュースの内容は短期的な現象なのか、それとも長期的に起こっている問題なのか。センセーショナルな数字に踊らされることなく、まずは客観的なデータを冷静にきちんと読み解くことが大切です。ウナギは日本の素晴らしい食文化。全くウナギを食べるのをやめようというわけではありません。土用丑の日をはじめ、ハレの日の特別な食材として大切に味わってほしいですね。後世までウナギを残していくためにも、私たち消費者にとってそれがもっとも重要なアクションだと思います」

 

取材・執筆:鬼頭佳代(ノオト)

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お話を伺った方:塚本勝巳さん

1948(昭和23)年岡山県生まれ。日本大学生物資源科学部教授。農学博士。専門は海洋生命科学。
1971年東京大学農学部水産学科を卒業、1974年東京大学大学院農学研究科博士課程を中退後、同年、東京大学海洋研究所の助手。1986年助教授、1994(平成6)年教授に就任。独自の「海山仮説」「新月仮説」「塩分フロント仮説」に基づき、世界で初めて天然ウナギの卵をマリアナ諸島西方海域で採集することに成功。その研究功績から、2006年日本水産学会賞、2007年日本農学賞・読売農学賞、2012年日本学士院エジンバラ公賞、2013年海洋立国推進功労者表彰(内閣総理大臣賞)など多数の賞を受賞。

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