必要なのは「考える力」と「広い視野」−IKEUCHI ORGANICの人材採用の考え方【注目の地方企業#4後編】

キャリマガ / 2019年4月2日 11時1分

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もしこの会社に入ったら、どんな時間を過ごすんだろう? 就職活動中、入社後を想像するのは意外と難しいものです。

注目の地方企業第5弾で取り上げたのは、愛媛県今治市に本社を置くIKEUCHI ORGANIC株式会社。前編では、V字回復から現在に至るまで、同社の歩みやコンセプトについて伺いました。後編では、募集要項や入社試験、人材育成にフォーカスして、入社後のイメージをふくらませていきます。 

IKEUCHI ORGANICはどのような方針で採用を行い、ブランドを作り伝え続ける人材を育てているのでしょうか? 代表取締役の池内計司さんと取締役社長の阿部哲也さんに伺いました。

現社長・阿部さんのIKEUCHI ORGANICとの関わりはアルバイトから

父・池内忠雄さんの起こした会社を引き継いだIKEUCHI ORGANIC代表・池内計司さん。よくある同族企業かと思いきや、その跡を継いで3代目社長に就任したのは、東京の大学を卒業後、証券会社やIT企業を経てIKEUCHI ORGANICに入社した阿部哲也さんでした。代表と社長、この二人の間の役割分担はどのようになっているのでしょうか?

「やはりお客さまとしては、池内がつくってきた製品に愛着があるでしょう。だから、IKEUCHI ORGANICを象徴し、お客様の前に出て、ストーリーや理想を語るのは池内の役割です。そして、その姿を具体的にどうやって実現していくか考えて、組織整備をするのは僕が担っています」(阿部さん)

そんな阿部さんが当初、IKEUCHI ORGANICに関わったきっかけはアルバイトだったそうだ。

f:id:hito-contents:20190401164102j:plain洗濯後にも変わらないタオルの品質にこだわる阿部さんは、自称"洗濯おじさん"

「IKEUCHI ORGANICに入社する前は、東京本社の小売関連企業で働いていました。ただ、そこが事業を畳むことになり、転職活動を始めたんです。そんな時に、大学の先輩から『面白い会社がある』と紹介されたのがIKEUCHI ORGANICでした」(阿部さん)

転職活動の合間に展示会アルバイトスタッフとして関わるうちにIKEUCHI ORGANICの考え方や製品の矛盾のなさに惹かれていった阿部さん。2008年にアルバイトで入社し、2009年5月に正社員に。そして、2016年、池内さんの病気と長期休養をきっかけに社長を引き継ぎました。

f:id:hito-contents:20190401164341j:plain▲同社のサイトの中でも、さまざまな関わり方から入社を決めるメンバーのエピソードが綴られる

現在、同社は定期的な大卒向けの新卒採用は行っておらず、採用は文字どおりの「都度採用」。また、都市部では毎年、新卒採用を当たり前のようにする企業が目立ちますが、やはり定期採用をしている地方企業はどうしても限られます。もし地方に入社したい企業があれば、新卒を募集していないのかを問い合わせたり、阿部さんのようにアルバイトや学生インターンとして接点を持ったりすることで、入社に至るケースもあるようです。

実はIKEUCHI ORGANICは大手求人サイトへの出稿がほとんどなく、社員募集はもっぱら社会課題への関心が高い読者を多くもつメディアへの出稿が中心。ちなみに、これまであるポジションの人が辞めるタイミングになると、いい人材が自然に応募してくるケースが多かったそう。

採用のときに見るのは「考える力」と「広い視野」

f:id:hito-contents:20190401164752j:plain▲工場のなかでは、いくつものタオルが同時に製造されている

入社後は、タオルづくりから販売までのさまざまな工程にかかわることになります。例えば、今治の本社にあるのは、製造や総務、営業、企画部門。そのほか、東京や京都、福岡の直売店では、販売スタッフが中心です。また、同社の製品はホテルやサロンにも導入されており、クライアントの8割は東京本社企業のため、関東では営業スタッフを採用しています。

環境に配慮し、持続可能性を追求した商品を作り続けているIKEUCHI ORGANIC。ここまで一貫したコンセプトの商品を作り続けるために、採用において何を重要視しているのでしょうか? 社長の阿部さんは、絶対に身につけておいてほしい力として「考える力」を挙げました。 

「私たちの商品は、値段ではなく、コンセプトで選んでいただく商品です。そのため、相手を共感で巻き込んでいかないといけません。そのためには、自分が腹落ちしていない言葉だと伝わらないんです。例えば、身の回りに溢れている日用品が一体どういう経路で手元に届くのか。使い続けたら何が起こるのか。物事を真に理解するためには、人に教えてもらうだけでは足りなくて、自分で考えないとわからないものなんですよ」(阿部さん)

店頭でタオルを販売するにしても、「オーガニックだから良いんです」だけでは、魅力は正しく伝わりません。それぞれのお客様によってニーズはまったく異なり、感じる魅力や価値も異なるはず。そんな一期一会のなかで、どのように商品の価値を伝え、いかにしてIKEUCHI ORGANICの考え方に共感してもらえる道筋をつけるのか。「それぞれの社員は、自ら答えを持たなければいけない」と阿部さんは説明します。

f:id:hito-contents:20190401165042j:plain▲本社工場に併設されたショップでも商品を販売している

もう一つ阿部さんが挙げたキーワードが、「広い視野」。これもまた、同社の採用では忘れてはいけない大事なポイントです。

「我々がかかげる『最大限の安全と最小限の環境負荷』の考え方は、理想を突き詰めすぎると、排他的になりやすいと思うんです。製品に関してはこだわり抜いていいのですが、その考え方を人に押し付けたり、違う考えの他者を批判したりするのは違います。考え方が重要な事業だからこそ、広い視野を持ってさまざまな立場があることを知っておいてほしいですね」(阿部さん)

「考える力」と「広い視野」。この2つは、企画の仕事はもちろん、販売や製造に関わるスタッフにとっても非常に重要なものでしょう。だからこそ、応募者がその力をしっかり持っているかどうか、採用のプロセスでじっくり見ているとのことでした。

仕事は原則OJT――けれど、考えるヒントはあちこちに

同社では入社後、具体的な育成研修プログラムが用意されているわけではありません。業務に必要なことは、上司や同僚がOJTで伝えています。

f:id:hito-contents:20190401165246j:plain▲社内には互いのことがよく分かるよう、部署ごとにプロフィールが貼られている

採用の時から「考える力」を大切にしていることからもわかるように、同社の実務では「オーガニックの良さ」や「持続可能性とは何か」など、抽象的な問いに対して自分で考えなければならない場面が多々あります。 

上司が答えをそのまま渡すことはなくとも、そのヒントは社内にいくつも用意されていました。例えば、始業後に開かれる朝会。テレビ会議を通じて全員が参加するその内容は、自社の事業やタオル業界の話に留まらず、他業界から海外の話まで非常に多岐にわたります。なかでもよく取り上げられる話題は農業なんだとか。

「私たちはタオルだけではなく、あらゆる業界のお客様と商売を抜きにして、情報交換でつながっています。そうすると、いろんなトリビアがいっぱい入ってくるんです。例えば、私たちのタオルの原材料はオーガニックコットンですよね。オーガニックを本質的に考えるためにも、他のオーガニック関連作物のトラブルは知っておいたほうがいいじゃないですか」(阿部さん)

これらの情報は企画だけではなく、お客さまと話すネタにもなることも。朝会ではこのほかにも、そのほかにも気づいたことはこまめに共有しています。朝会は社内の風通しが良くするだけでなく、社員一人ひとりがIKEUCHI ORGANICの大切にする考え方について、自分なりに腹落ちさせる機会になっています。

実際に訪ねてみないと分からないことがたくさんある

あまりにも多くの選択肢がある就職活動。一体どうやって自分の道を選べばいいのか。迷いのなかで情報収集をする就活生に向けて、お二人から応援メッセージをいただきました。

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「僕は面接で長所や短所を聞くのがあまり好きではありません。結局のところ、長所も短所も環境とのマッチングでいくらでも変わるものでしょう。だから、そこをうまくプレゼンテーションすることに力をかけないでほしいですね。奔放でもめちゃくちゃでもいいから、もっと自分の心に正直に、自分がどういう人間か、何をやりたいのかなど個性を出してきてほしい。その上で、自分自身の腹落ちを大切にしてほしいですね」(阿部さん)

「いまの学生さんは、とても真面目な方が多いように思います。就職活動もいろいろ情報収集をしてしっかり取り組まれているかと思いますが、まずは本当に好きな企業に一度行っていればいいのではないでしょうか。僕らの時代と違って、今はインターンシップも含めて企業の人に直接会う機会も増えましたよね。ネットの情報だけを見ていても、いいところだけ切り取られたフェイクの情報かもしれません。だから、たった一度会いに行くだけでも、多くのことがわかると思いますよ」(池内さん)

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「もしこの記事を読んで、IKEUCHI ORGANICに興味を持った学生さんがいたら、直接連絡をしてもいいのでしょうか?」と聞いてみたところ、「もちろん」とのお返事をいただきました。いきなり会社に連絡することに気後れしそうなら、まずは店舗に商品を見に行ったり、一人のお客さんとして気になることを問い合わせたりしてみてはいかがでしょうか。

 

取材・執筆:鬼頭佳代(ノオト) 撮影:村上太

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お話を伺った方:池内 計司(いけうち・けいし)さん&阿部 哲也さん

池内さん(写真左):IKEUCHI ORGANIC 代表取締役。1949年愛媛県今治市生まれ。1983年に家業を継いで池内タオルに入社、2代目社長に就任。2016年より現職。

安部さん(写真右):IKEUCHI ORGANIC 取締役社長。大学卒業後、小売チェーン業などを経て、2009年にKEUCHI ORGANIC株式会社に入社。2016年6月より現職。

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