通所介護における送迎サービスは、単なる送り迎えではない

けあZine / 2014年12月8日 7時0分

通所介護事業所における送迎サービスとは、上手に運転するだけでは成り立たない。「おもてなしの心」と「介護に対する理解」が不可欠である。それを共有するために「送迎サービスマニュアル」作成をお勧めしたい。

送迎サービスは、運転できれば仕事として成り立つものなのか?

 前回の原稿では、送迎サービスとは1日のサービスにおける始まりの「掴み」と終わりの「締め」にあたる部分を担い、サービス提供者の「心構えと笑顔ひとつ」で「幸せな1日、ひととき」をご利用者に演出できる大事な位置づけであることを述べました。

 今回は「送迎サービスを組み立てる際の必要な価値観」とは何か?ということについてお話したいと思います。

 時々、質問を受けることがあります。「送迎サービスは、ただ運転すればサービスとして成り立つものでしょうか?」と……。答えは「それだけでは不完全」です。

 確かに送迎車両を上手に運転できる技術・マナーがあることは心強いのですが、さらに求めたいのは、運転手のサービスに対する姿勢であり、ご利用者に対する「おもてなしの心」と「介護に関する理解」です。

 運転技術に加え、それら2つの要素を併せ持って初めて、通所介護事業所での「送迎サービス」が完成していくと思っています。

送迎とは自宅から一歩踏み出したときの「最初のサービス」である

 送迎サービスを行うにあたり、ご利用者よりさまざまな不安の声や要望があります。

 例えば、「自宅から施設まで、送迎車内の乗車時間はどれくらいですか?」「トイレが間に合うか心配です」「数年間も車に乗っていないので、乗車できるか緊張します」「車内の狭い空間に入るのが怖いです」「車の揺れで酔ってしまうか不安なので、座席は一番前がよいです」「天気が悪いので行きたくないです」等々。こういったさまざまの想いを受容、調整したりしながら、ご利用者にとって安心・安全な送迎サービスをめざすことが、これを担当する職員の役割なのです。

 「送迎」とは自宅から施設、施設から自宅までの移動手段ですが、少し見方を変えると、自宅から外へ一歩踏み出した際の「最初のサービス」とも言えます。自宅から施設まで来ていただけるかどうかは、最初のサービスである「送迎」にかかっているのです。ですから、最初のサービスでつまずくわけにはいきません。

 おもてなしの心でお出迎えし、安全に乗車していただき、施設まで安心して楽しい気持ちで来ていただけるかが大事です。

「送迎サービスマニュアル」で理念やサービスの質を共有

 ご利用者はさまざまな心身状況のなか、送迎サービスを利用しています。

 お出迎えのときは相手の気持ちやお身体の状況を伺い、乗降する際は安全に乗降していただくためのケア技術を提供し、乗車中は快適に過ごしていただくための気遣いや会話を提供したいものです。つまり「介護に関する理解」が必要なのです。

 送迎サービスは、奥が深く専門性のある業務だと思いませんか?

 通常、送迎サービスには、数人の職員が適宜携わるかと思います。運転手が変わって、いつもの乗降場所が違うなどサービスに違いが生じると、ご利用者は困惑します。それらを回避するためにも、職員間で考え方やサービスの仕方などを共有することが大切です。

 そこで、社内の「送迎サービスマニュアル」を作成し、スタッフ間で共有することをお勧めします。「マニュアル」作成は大変だと思いますが、少なくとも送迎サービスの際の「おもてなしの心」(理念)やサービス提供の際の留意点(質)を記載するところから始めるとよいでしょう。

 「送迎サービスマニュアル」を共有することによって、送迎サービスの「基本」を確立し、これを担う職員も「安心」してご利用者にサービス提供ができます。

 また、初めてこの業界に入り、送迎サービスに携わる職員が、比較的スムーズに業務に慣れるためにも有効で、組織として安定した運営手段の一助ともなるでしょう。

 そして何よりも、ご利用者にとって、たとえ運転手が変わろうとも、いつでも気持ちよくお迎えの車に乗れるという、安心感をもっていただけるメリットが大きいと思います。

けあZine

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