“第2のカメ止め”の呪縛…『メランコリック』監督が抱くジレンマ

シネマトゥデイ 映画情報 / 2019年8月11日 7時1分

『メランコリック』の田中征爾監督

 今月3日より劇場公開され、連日大盛況となっている映画『メランコリック』。内容が全く異なる作品でありながら、無名の新人監督による低予算の自主制作映画、さらに国内外の映画祭で絶賛を受け、SNSなどの口コミによって注目された経緯が似ていることから、『カメラを止めるな!』(以下『カメ止め』)に続く作品としてカテゴライズされることが多い。メガホンを取った田中征爾監督が“第2のカメ止め”という呪縛について思いを語った。

深夜に風呂場を“人を殺す場所”として貸す銭湯が舞台

 本作は、第31回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門監督賞、イタリアの第21回ウディネ・ファーイースト映画祭ホワイト・マルベリー賞(新人監督作品賞)などを獲得した田中監督の長編映画デビュー作。名門大学を卒業しながら、ニート生活を送る鍋岡和彦(皆川暢二)は、高校時代の同級生に勧められ銭湯でアルバイトを始める。だが、一見平和そうに見えるその銭湯は、閉店後の深夜、風呂場を“人を殺す場所”として貸し出していた……。

 田中監督と和彦役の皆川、金髪の殺し屋・松本役の磯崎義知の3人で立ち上げた映画製作ユニット「One Goose」(ワングース)の記念すべき第1作となった本作は、“銭湯で人殺し”という設定がキャッチーな要素となっているが、意外にもこのアイデアは、最後の最後に決まったものだと田中監督はいう。

 「当初、殺しの舞台は採石場で、内容も社会問題を切り取った、かなりドギツイものだったんです。ただ、面白い映画を作るためのツールとして、軽々しく社会問題を扱うことはどうなんだろうと、僕のなかでは抵抗があった。そんなときに磯崎から『銭湯はどうか』と提案があり、元のシナリオに組み合わせてみると、これがとにかく面白くて、一気に書き上げることができました」と述懐する。

 また、主人公・和彦は、田中監督自身をモデルにしているそうで、同窓会のシーンはまさにその象徴。「僕が出た高校が進学校だったのですが、卒業して10年ぶりに再会すると、医者になったとか、弁護士になったとか、大手商社マンになったとか、検察官になったとか、かなり偉くなっている人がいるわけですよ。そんななかで、僕は『売れない脚本家です』としか言えなくて(笑)。その恥ずかしさをデフォルメして、作品に入れ込んだりしています」と裏話を披露する。

“第2のカメ止め”のメリットとデメリット

 田中監督自身の体験を投影したオリジナリティーあふれる本作は、間違いなく映画の新たな扉を開いた。ところが、インディーズ映画がどんどん力をつけていくその過程が『カメ止め』に似ていることから、“第2のカメ止め”というくくりのなかで紹介されるケースがどうしても多くなる。

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