「月1,100円で映画館行き放題」夢のサービスが破たん…MoviePassが遺したもの

シネマトゥデイ 映画情報 / 2019年9月21日 7時5分

アプリと連動していたMoviePass Photo Illustration by Rafael Henrique/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

 1か月10ドル(約1,100円)以下で映画館で映画見放題をうたう会員制のMoviePassが、破綻した。だが、業界人やアメリカの映画ファンは、むしろ今まで続いていたことの方に驚いている。そもそも元が取れない仕組みで、常に赤字だったこの会社は、人気のある映画を観られないようブロックしたり、1か月に観られる本数に突然制限を設けたりと、カスタマーサービス面でも信じられないことをやり続け、会員がどんどん離れていっていたのだ。(1ドル110円計算)(Yuki Saruwatari/猿渡由紀)

 MoviePassが誕生したのは、2011年。当時の会費は、住んでいる街によって月30ドル~50ドル(約3,300円~5,500円)程度とそれほどお得感もなく、会員数は全米で2万人ほどにとどまっていた。だが2017年、同社の51%を買収したデータ会社のヘリオス&マターソンが、月会費を9ドル95セントに値下げすると、突然、注目を浴びるようになる。現在、ニューヨークやL.A.で大人が映画を1本観るには劇場によって13ドル~19ドル(約1,430円~2,090円)程度かかるので、この値段ならば月に1本観るだけでも得だ。これを受けて、会員数は300万人にも急増する。

 しかし、このシステムは会員には使いづらく、会社側にもどう考えても儲けが出ないようになっていた。会員は、アプリで観たい映画・劇場・上映時間を検索し、これだと決めたら、まずそこまで向かわなければならない。劇場の目の前まで来たら、アプリでチケットをリクエスト。それを受けてMoviePassが会員の持つ会員証兼デビットカードにそのチケット代と同額を振り込み、会員はそれを使ってキオスクでチケットを買う。つまり、予約はできず、せっかく出向いても人気のある映画だと観られない可能性もあったのだ。一方でMoviePassは、月に10ドルしか払っていない会員に15ドルや17ドルを振り込むことになる。

 これを指摘されたMoviePassは当時、スポーツジムと同じく、月極め会費を払っていても全く来ない会員もいるはずで、収支は合うと語っていた。もちろん実際には火の車で、その後、彼らはリクエストが殺到しそうな最新のスーパーヒーロー映画をアプリから削除したり、月に観られる本数に制限をかけたり、劇場側にチケット代のディスカウントを要請したりして、なんとか赤字を減らそうと悪あがきをする。どんどんルールが変わる中、使いづらさはさらに増して会員は激怒。株価も急落し、今年に入ってからは1ドルを下回って、ナスダックから外された。そして今、正式にクローズとなったというわけである。

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