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今泉力哉監督「生きているだけで意味がある」 新作映画で主人公に変化

シネマトゥデイ 映画情報 / 2021年4月9日 6時32分

今泉力哉監督

 映画『愛がなんだ』がロングランヒットしたのち映画やドラマで引っ張りだことなり、今年も『あの頃。』『街の上で』と新作映画が立て続けに公開される今泉力哉監督。本日(9日)から公開される『街の上で』はコロナ禍で約1年の延期を経て公開を迎えるが、本作は今泉監督にとって自身のある変化を示す重要な作品でもある。初めは劇場公開も見えていなかったという本作がいかにして完成したのか、今泉監督に誕生の経緯を聞いた。

 本作は、自主制作映画への出演依頼を受けた下北沢の古着屋の青年・荒川青と、4人の女性との交流を描く物語。主人公・青に『愛がなんだ』(2018)『あの頃。』、ドラマ「有村架純の撮休」(2020※2話)などで今泉監督と組んだ若葉竜也。4人のヒロインに、穂志もえか、萩原みのり、古川琴音、中田青渚がふんする。

 企画の始まりは、下北沢映画祭の企画で髭野純プロデューサーから「下北沢を舞台に何か撮ってもらえないか」と相談を受けたこと。その際には短編なのか、長編なのかも決まっていなかったというが、今泉監督はそもそも下北沢という場所にどのような印象を持っていたのかーー。「勝手なイメージですけど若者の街。許される街でしょうか。まだ迷っている、夢を追っている人が多くいそう。いわゆるスーツを着ているビジネスマンがいるイメージがなくて、いろんな職業の人が集まっている感じ」

 髭野Pと映画の企画を話すうちに、やはり作るなら長編映画にしたいという流れになり、初めに浮かんだイメージがジム・ジャームッシュ監督のとある作品だったという。「『コーヒー&シガレッツ』(2003)という、ただ喫茶店で会話をしているだけの話なんですけど、ああいった作品であれば場所と会話だけあれば予算を含めて成立するのかなと。もう一方で、昔やろうとしていた企画の一つに、アキ・カウリスマキ監督作品に出てくるような巻き込まれ型の寡黙な主人公の話があって、舞台を下北沢に置き換えたらどうかと。その二つのアイデアから着想、派生して、古着屋で働いている青が自主映画に誘われるんだけど、いざこざが起きてうまくいかない……という軸ができて、その前後を作っていった感じです」

 本作は今泉監督が100%撮りたいように撮った作品でもある。そんな本作で目指したのは、「誰も観ていない時間」を映すことだった。

 「例えば、主人公の青は、自主映画に出演するために自宅で演技の練習をしてそれを自撮りしてみたり、飲み屋から帰宅して家でタバコを吸おうと思ったらなくて、フラれた彼女の名前をぼそっとつぶやいたりする。そういった他の人が見ることのない時間を描くことにどんどん興味が沸いて、それが今すべきことのような気がしているんです。きっかけは、ある作品でお客さんから『この映画が終わってほしくない』という感想をいただいたことです。それまでは、『愛がなんだ』とか『アイネクライネナハトムジーク』(2019)を作っていた時には、ラストシーンをどう作るのかということに注視しがちだったんですけど、その感想を聞いたときにラストシーンは『終わり』ではなく『区切り』に過ぎないんだなと再確認したんです。主人公が何かを成し遂げるために努力したり、そのことで成長する姿は魅力的かもしれないけど、頑張っていない時間があっていいんじゃないかと。それが、大げさかもしれませんが、生きているだけで意味がある、ということにつながる気がして」

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