「座間9遺体事件」のアパート、今後の資産価値は? 不可解な2つの事実と、事故物件をめぐる不動産事情

citrus / 2017年11月22日 20時0分


連日メディアで報道されている「座間市アパートの9人殺害遺棄事件」。これから徐々に事件の全容は解明されていくだろうが、大家にとっての災難は始まったばかりだ。アパート外観の映像がさらされ、場所もおおむね特定されている。入居者がおそれをなして出て行ってしまえば賃料収入は激減し、再募集するにしても家賃の暴落は避けられない。果して収益物件としての資産価値はどうなるのか、周辺への影響はどうなるのか――。


実は、このアパートには不可解な事実がいくつかある。1つは、事件発覚の1ヶ月以上前から売りに出されていたこと。売り出し価格が4,500万円前後、表面利回りは7.3%前後で、不動産投資の物件情報サイトに複数の仲介会社が広告を出している。同じ条件の物件(最寄り駅から徒歩10分前後、総戸数12戸程度、木造で築30年前後)は、利回りが8~10%、価格にすると3,300万~4,000万円だ。つまり、周辺相場より1~2割高い。とはいえ、5年前に外壁と屋根のリフォームを実施しているせいか、外観を見る限り、築年ほどの古さは感じない。そのため強気の値付けをしていたのだろうか。


2つ目のナゾは、物件概要の備考欄に「告知事項あり」と書かれていたこと。これは仲介会社に対して宅建業法で義務付けられた項目で、契約に先立って説明しなければならない重要事項の一つ。事件・事故などの心理的瑕疵(欠陥)も含まれる。ということは、今回の事件とは別に、既に何らかの心理的瑕疵があったことを意味する。「事故物件・訳あり物件専門」の売買仲介会社によると、自殺や孤独死などの事故物件の場合で、売り値は相場より「2~3割、場合によって5割くらい下がる」と言われる。しかし、前述の売り出し価格には、この点は反映されていない。なんともちぐはぐなのである。


広告を出していた仲介会社に聞くと、現在は「売り止め」になっている。ほとぼりが醒めるまで動けないのだろう。改めて売り出すとしても、これだけの猟奇的事件が起きているのだから価格は大きく下げざるを得ないはず。収益物件に詳しい不動産コンサルタントのS氏は「更地価格の半値になってもおかしくない」と指摘する。このアパートの更地=土地だけの価格を試算すると3,000万円程度だ。その半分として1,500万円。元の売り出し価格の3分の1である。それならば、売らずにこのまま賃貸経営を続けるという手もある。


これだけの事件が起きたのだから、入居者はみな逃げ出してしまったと思うかもしれない。ところが、意外なことに、管理会社に対して退去の連絡は届いていないという(不動産投資サイト「楽待」の11月2日付け記事「『座間アパート9遺体事件』実はいまだ退去者ゼロ」)。生活に便利な立地で、家賃はロフト付きワンルームで2.2万円と安いため、「出て行きたくない」「住み続けたい」という入居者が多いというのだ。「事故物件でも気にしない」「家賃の低さ優先」という人も、一定程度は存在する。


周辺の同条件の家賃相場は2万~2.5万円なので、特段このアパートが割安なわけではない。殺人現場となった部屋の家賃は、リフォームしても半値以下でないと貸せないだろう。両隣や上下階の部屋も3~5割引き、その他の部屋も2割程度は安くなるケースが珍しくないといわれる。それでも借り手がいる限り、3分の1以下の価格で叩き売るよりマシかもしれない。


なお、入居者に対する事故物件の告知義務は、「1回転(次の入居者1人)、2年で解除」が業界の通例という説が出回っている。これをクリアするため、管理会社の社員やアルバイトを使って短期間住まわせる「事故物件ロンダリング」を専門に行う業者もいるようだ。しかし、この説は、2つの判例の数字のみが独り歩きしたもので、法的に明確な判断基準が確立されているわけではない。事件の凄惨性、住民の周知性など個別条件で違う。事故情報サイト「大島てる」など、ネット上に情報が残っているケースも多い。自殺でも4~5年、重大事件なら数十年後でも告知すべきという見方もあるので、注意が必要だ。


住民の周知性との関連で、最後に近隣の不動産への影響について触れておこう。事故物件の告知義務は法的には当該物件のみだが、今回のメディア報道で物件周辺の状況も知れ渡っている。前述S氏は「このアパートに近い不動産価格も10%程度は下がる可能性がある」と指摘する。周辺住民にとっては、とんだとばっちりだが、こうした事件・事故は自ら防ぎようがない。天災とあきらめるしかないのだろうか。

citrus(シトラス)

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