巨乳はバカ!? 大きなおっぱいをモノ扱いする男性と、減胸手術をする女性

citrus / 2019年3月6日 16時0分

出典:NHKオンライン「BS世界のドキュメンタリー」

思春期の時分、家族で見ていたテレビで男性が「ボインは赤ちゃんのためにある、お父ちゃんのものではない」と歌っていて、まごついたのを覚えています。家族と一緒だという気まずさも当然ありましたが、それ以上に言葉にできないモヤモヤがありました。


いまならそれを言語化できます、「なんで女性の身体の一部なのに、ほかの誰かのものだといわれなければいけないんだろう」。そして「胸が大きいことも小さいこともどうして揶揄されなければいけないんだろう」です。



■大きなおっぱいを持つ女性たちの苦悩


先月、NHK BS世界のドキュメンタリーで「おっぱいでいっぱい」という番組が放映されました。2017年にフランスで制作された番組で、舞台女優のクリステンさんが“減胸手術”を決意し、手術当日までのあいだに自分のおっぱいと向き合う一部始終に密着しています。


クリステンさんのバストはたしかに桁外れで、片方だけでも1.5kg。計3kgもの肉のかたまりをぶら下げて歩いていることになります。見た目にも、2つのメロンが胴体にくっついているよう。肉体的にも大変ですが、それ以上に彼女が気にしていたのは自分の胸に向けられる“視線”でした。


クリステンや、同じく大きな胸を持つ女性たちは口々にその苦悩を語ります。


「おっぱいのせいで女性はモノ扱いされたり、レイプや殺人の被害者にもなる」

「多くの男は、おっぱいのことを社会の共有財産か何かだと思っている。堂々と話題にしたり見たりしていい、とね」

「おっぱいの大きな女は見せびらかして男に声をかけてもらいたがる、頭の悪い女だと思われている」

■「巨乳はバカ」という究極の勘違い


彼女らの言葉はそのまま日本にも当てはまるでしょう。女性の身体が女性のものではなく男性のために存在するもの、という勘違いは多くの国で共通しているようです。このドキュメンタリーの番宣では、日本で「あなたにとっておっぱいとは」と街頭インタビューをしていましたが、「男のロマン」と堂々と言い切る男性もいました。


女性のバストに性的な魅力を感じるな、といいたいわけではありません。ヒトが進化して二足歩行するようになると性器が脚のあいだに隠れて見えなくなった、その代わりに乳房が大きく発達した、という説もあります。生殖できるほど成熟しているか否かをそれによって見分けるのだそうです。


けれどそれは、無遠慮に性的な視線を向けていいという意味ではありません。まして、「頭の悪い女」とレッテルを貼るのは大きすぎる飛躍があります。


「胸が大きい女性は自分からアピールしてきている都合のいい存在」という勘違いと、「頭の悪い女性は簡単に性的関係に持ち込める都合のいい存在」という勘違いが魔合体して「巨乳はバカ」という究極の勘違いが生まれたように思えてなりません。巨乳という甘いパンケーキにバカというふわふわのホイップクリームを乗せればホラみんなの大好物が一丁上がり! という具合です。


肉体的特徴とその人の人格とを過度に結び付けるのはそもそも見当違いですし、偏見につながりやすいため危険です。


クリステンさんが「減胸手術する」と打ち明けたときの反応も、さまざまです。パートナーは「君の身体だから、君の自由に」と前置きしながらも「豊胸はイヤだけど、減胸はもっとよくない」「悲しいよ」「取り返しがつかなくなる」とめちゃくちゃ否定的です。元カレも、君が巨乳じゃなくても僕は口説いていたはずといったそばから「俺も友だちに『巨乳っていいぞ』ぐらいはいうけど、それは単なる彼女自慢ってやつだ。男ならやるだろ?」と、まさに“巨乳は男の共有財産”を地で行く発言をします。



■おっぱいをモノ扱いするのは誰?


ここで思い出されるのが、AV女優として活動したのち2017年に引退したある女性です。その女性は、引退後にLカップの胸を減胸手術するとSNSに投稿しました。小学校中学年で胸が大きくなりはじめ、10代のときから数々のいやがらせやセクハラに悩まされ、「本当にこの胸が嫌でたまりませんでした」と記しています。けれど大きな胸が強みになる世界もあると知りAV女優という職業を得たそうです。


引退後、時をおかずして減胸手術を受けるということは、AVという特殊な世界と違って一般の世界では大きすぎる胸にはメリットがないどころか、デメリットのほうが大きいということでしょう。彼女は誰よりもそのことを知っているのです。


しかしそれに対しても「もったいない」「せっかく巨乳なのに」という、ほぼ間違いなく男性からのリプライが多く寄せられていました。こうした視線や声から逃れるために減胸手術を決めたのだろうな、ということがよくわかりました。


胸の大きな女性の生きづらさはもちろん、自分たちがその原因であることを露ほども気にかけない。そして女性のバストを“社会の共有財産”とみなしていない男性たちの例はほかにもあります。


胸が大きい人向けのアパレルブランドを運営しているある女性が、胸が大きくても太って見えない、胸ばかりが目立って見えない商品や着こなしをSNSで発信しています。そこには同じ悩みを持つ女性たちがたくさん集まっている一方で、「エロい」「大きく見えたほうがいい」というコメントがついていて、見ているだけでも暗澹たる気持ちになります。


ドキュメントのクリステンさんは女優として「お色気担当」「高級娼婦」の役ばかりをこなしてきました。大きな胸をある意味、利用していたところもあり、「結局モノ扱いしているのは、私自身」とふり返っています。自分も他人もおっぱいしか見ていなかった、その胸が小さくなったとき周囲からの視線はどう変わるのか、そして自分はどう変わるのかーークリステンさんの“その後”が知りたくなります。

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