スバル新型「WRX S4」試乗 ─ 最大ブースト158kPa、大人のスポーツセダン

clicccar / 2014年8月26日 11時47分

2014年8月25日、国内仕様の新生スバル「WRX」が発表されました。

WRXとしては2代目、インプレッサWRX時代から数えて4代目となる新しいWRXには、新世代ボクサー直噴ターボエンジンを搭載する大人のセダン「S4」と、従来からの熟成された高回転型ショートストロークボクサーターボを積む「STI」という大きく2つのラインナップで構成されています。

『大人のスポーツセダン』がコンセプトとはいえ、そこはWRX。「ブルーボクサー」と名付けられた2.0リッター水平対向4気筒直噴ターボの最高出力は300馬力、最大トルクは400Nmとスポーツセダンとしては十分過ぎるスペックとなっています。それでいて、JC08モード燃費は、13.2km/Lという環境性能とバランスさせているのが特徴です。

もっとも、このエンジンスペックだけを見ると、ピュア・スポーツセダンであるSTIと、それほど差別化されていないのでは? と思ってしまうかもしれません。

ですが、キャラクターづけは明確に異なっています。

一般路を模したクローズドコースで初乗りした印象は、スペック(期待されるパフォーマンス)が近いからこそ、あえて明確にわけていると感じさせるものでした。

スポーツリニアトロニックと呼ばれる、マニュアルモード付きチェーン式CVTとの組み合わせのみが用意される「WRX S4」。プリクラッシュブレーキと追従クルーズコントロールをセットした「アイサイトver.3」も標準装備となり、大人のスポーツセダンとしてSTIとのキャラクターをわけています。

2ペダルゆえに、日常的な走行ではわずかに右足に力を入れるだけで十分に走りますし、加速したくなったらグッと踏み込めば、300馬力・400Nmという数字を実感できる加速感を示します。

インパネ中央のマルチファンクションディスプレイにはブースト計モードもありますが、それで確認したところオーバーシュートで158kPaというハイブーストを達成しているほどです。

こうした安心安楽とハイパフォーマンスという2面性は、1980~90年代に国産各社で隆盛を極めた『ターボエンジンのハイパワーセダン』というカテゴリの現代版ともいえそう。懐かしい名前を挙げれば、マークIIツインターボやローレル、セフィーロのターボグレードに、かつて乗っていたという、”大人”のユーザーにもジャストフィットしそうな印象なのです。

STI、S4ともにKYB製ダンパーと、ビルシュタイン製ダンパーのグレードが用意されていますが、単純に前者がコスト重視で、後者はパフォーマンス重視とはいえません。

STIでは、KYB製ダンパーであっても、ビルシュタイン同様に、フロント倒立式となっていて、横剛性を高めた仕様になっているほどです。

S4では2.0GT EyeSightに使われるKYBは正立式で、2.0GT-S EyeSightのビルシュタインは倒立式となるなど違いは明確になっていますが、ストリートでの印象は、必ずしもビルシュタインが優勢とはいえないものでした。ちょっと舗装の荒れた路面ではビルシュタインの足は微妙な硬さを連続して感じさせるシーンもあったのです(実際にはビルシュタインダンパーを使うS4のほうがリアに柔らかいスプリングを使っているのです!)。

その意味で、『ターボエンジンの国産ハイパワーセダン』というテイストには、KYB製ダンパーを標準装備する2.0GT EyeSightグレードのほうがキャラクターとしてはマッチしているのかもしれません。 

もちろん、かつての直線番長的なターボセダンのように、フットワークがフニャフニャでリヤを沈み込ませて加速するという意味ではありません。街乗りでの快適性を優先した300馬力級サルーンとして、新しいキャラクターがWRXに生まれたという点で、マークIIツインターボやローレル、セフィーロのターボグレードを思い出すというわけです。

一方、ビルシュタイン製ダンパーを備える2.0GT-S EyeSightを、スバルを乗り継いできたスバリスト的に表現すれば、BLレガシィ(4代目セダンB4)のテイストを洗練させたといえそう。

新しい『S4』というネーミングは、インプレッサG4よりもハイパフォーマンスで、レガシィB4よりスマートでスポーティな4ドアセダンというキャラクターを見事に言い表した車名といえそうです。

CVTだけのラインナップということで失望するかもしれませんが、CVTであるからといってラバーバンド・フィールと評するのは、もはや先入観といえる時代です。

そもそも、CVTを使ったパワートレインは高回転まで回して楽しむためのものではなく、エンジンの効率的な領域をキープするという協調制御によりトータルでパフォーマンスを追求するもの。

WRX S4を走らせるときには、アクセルペダルがエンジンに意思を伝えるためのデバイスではなく、パワートレイン全体をコントロールするための入力装置という印象が強いものです。

たしかにパドルシフトも装備されていますし、またパワートレインのキャラクターを切り替えるSI-DriveをS#モードにするとレシオカバレッジを狭くした8速ステップ変速モードにもなりますが、このスポーツセダンで味わうべきは、まさしくシームレスな加速と思えます。

そこには、過激な味付けはありませんが、アクセルを踏み込み、高ブーストをキープしたままの加速感は300馬力級セダンとして期待以上ともいえますし、CVTというシームレスなトランスミッションを使っているからこそのメリットともいえそうです。

ただし、このスポーツリニアトロニックは、MTと比べて単体重量で50kg以上も重く、その重量差はほぼ前軸にかかっているという点は、気になります。

 

低速域では先入観も含めてフロントヘビーを感じることはあっても、高速になるほどロングホイールベースの影響なのか、それともシャシーのセッティングのおかげなのか、オーバーハングにエンジンという重量物を積んでいる感覚はなくなってくるのは、STI、S4ともに共通のフィールといえそう。

そうした高速での安定感はタイヤグリップに頼ったものではなく、WRXに共通のサスペンション・ジオメトリーによるものなのでしょう。

この写真は、クローズドコースにおいて、ステアリングをフルロックまで切り込んだ状態でアクセルを踏み込むという風にして、姿勢コントロールの電子制御を働かせた直後に撮影したものですが、トレッド面を斜めに使った様子が見えるのと同時に、ショルダー部分までしっかりと使いつつ、サイド面をタッチさせていない様子も確認できます。

タイヤを”キチン”と使うシャシーを実現していることがうかがえるのです。

ハンドリングをカバーする電子制御では、ブレーキの独立制御を利用した「アクティブトルクベクタリング」の採用がニュース。もちろん、横滑り防止装置となるVDCは標準装備されています。

アクティブトルクベクタリングのおかげで、スラローム走行のようなシーンでは想像以上に軽快。しかも、この電子制御は違和感を感じることは少ないのです。

無茶をしすぎると、カクッといった曲がり方を見せることもありますが、おそらくアクティブトルクベクタリングの挙動ではなく、VDCの介入なのでしょう。電子制御は基本的に走りの純度を下げることはないけれど、頼ろうとするとドライバーをたしなめるといったマナーに仕上げられた「大人のスポーツセダン」というわけです。

●スバルWRX S4 2.0GT-S EyeSight 主要スペック
車両型式:DBA-VAG
全長:4595mm
全幅:1795mm
全高:1475mm
ホイールベース:2650mm
車両重量:1540kg
乗車定員:5名
エンジン型式:FA20
エンジン形式:水平対向4気筒DOHC直噴ターボ
ボア×ストローク:86.0×86.0
総排気量:1998cc
最高出力:221kW(300ps)/5600rpm
最大トルク:400Nm(40.3kg-m)/2000-4800rpm
トランスミッション:リニアトロニック(チェーン式CVT)
駆動方式:フルタイムAWD
燃料消費率:13.2km/L(JC08モード)
タイヤサイズ:225/45R18
ホイールサイズ:7.5J-18 55mm
メーカー希望小売価格:3,564,000円(消費税8%込)

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