マツダ越(KOERU)は魂動(KODO)デザインの何を越えていくのか?

clicccar / 2015年10月21日 6時29分

自動車大国であるドイツにおいて開催される世界最大級のモーターショーというだけあって、フランクフルトショーの会場は広大です。
プレスデーで歩いた歩数を計測してみたら、毎日、1万3000歩も歩いていました。


当然、ワールドプレミアもたくさん登場するわけで、その会場でマツダの新しいデザイン・コンセプトである「越(KOERU)」を発表するというのは、非常にチャレンジングなことなのです。

プレスデー初日に行われた記者発表には、日本車メーカーの発表としては異例なほどメディアが集まっていました。


2010年に発表された新しいデザイン哲学である「魂動(KODO)」が、じわじわと浸透してきた結果でしょう。

ちょっと脱線しますが、現在、マツダのデザイン部門を率いる前田育男さんは、世界のデザイナーの中でも指折りの逸材。
ヨーロッパの老舗自動車雑誌で、初代アウディTTのデザインをした伝説のデザイナーのペーター・シュライヤーさんより評価が高いなんて記事も読んだことがあります。
最近、マツダのクルマが話題なのは、スカイアクティブという技術群がスゴいのに加えて、前田さん率いるデザイン部門が力を発揮して、スゴい技術に見合ったカッコ良さを表現しているからでしょう。

さて、話をフランクフルトショーの会場に戻しましょう。
今回登場したは「越(KOERU)」は、「魂動(KODO)」で表現してきたデザイン哲学をベースにしつつ、少し先の未来を表現したコンセプトカーです。

ベールを脱いだ瞬間、これまでの魂動(KODO)に共通するところと、これまでにない新しさの両方を感じました。


近年のマツダ一族に共通するシグネチャーウイングが強調されていて、従来の「魂動(KODO)」デザイン同様に活き活きとした生命感にあふれています。


一方で、LEDの光の輪が組み込まれた切れ長のヘッドランプや、ラインの変化を最小限にそぎ落として、豊かな面で構成されたサイドビューからは、既視感のない新しい世代の脈動を感じます。

「魂動(KODO)デザインがチーターのような躍動感にあふれるデザインを表現してきたのに加えて、そこはかとなく気品を感じる方向を目指した」

というのは、越(KOERU)のチーフ・デザイナーである小泉 巌さん。
前田さんとともに現在の魂動(KODO)デザインの礎となるアイデアを構築してきた人物です。

パッと見て、全長5mくらいあるかも? と思ったのですが、アクセラをベースにしていると聞いて驚きました。

全長☓全幅☓全高=4600☓1900☓1500mmというボディ・サイズは、いわゆるミドルクラスのクロスオーバーに分類されますが、数字から想像するより、実際のプロポーションは伸びやかに見えます。

ハッキリ言って、カッコいいのですが、ひとつ心配なこともあります。
BMW「X6」やメルセデス・ベンツ「GLC」といったクーペスタイルSUVのセグメントに切り込むからです。
世界的に流行しているとはいっても、プレミアム・ブランドでの流行なのです。つまり、越(KOERU)は、マツダがプレミアム・ブランドとして認められるか否かの斥候兵の役割を果たすとも言えるわけです。

「モノに魂を見出して命を吹き込むという『魂動(KODO)』のデザイン哲学にそって、新世代商品群を構築してきました。既存のラインナップの新世代が出揃った現在、さらに一歩進めて、新しいコンセプトの提案に挑戦しようと試みたのが『越(KOERU)』です」

と、小泉さんは続けます。

ラインを整理して、見た目から感じる量感に変化を与えることによって、スピード感のあるスタイリングが生まれています。

滑らかなラインと抑揚のある面が融合した「越(KOERU)」のデザインは、威圧感や圧迫感とは無縁なのですが、不思議と、「ここにあるゾ」という存在感を放っています。

さらに、ディテールを見てみましょう。
全体にボリューム感を変化させたスタイリングは、地上高が200mm以上もあるクロスオーバーであっても、”ロードハギング”といって地面をつかむような印象を生んでいます。

オーバーハングのボリュームを抑え、前後のフェンダーから大型のタイヤに向かって、地面にパワーを伝えるような力強いハイライトが入っているのも、その印象を強める一因でしょう。

シグニチャーウィングに削り出しのアルミ素材を使ったり、5軸のカッティングマシンを使って削りだしたホイールなど、細部の質感を高めることで、塊感のあるデザインを表現しています。

まだコンセプトカーの段階ではありますが、性能面でもプレミアム・クロスオーバーを意識した設計です。
床下と車両後方の整流に力を注いで、空力性能を磨くことで、走行安定性と燃費性能の向上も目指しています。また、室内に伝わる音や振動の低減にも心を砕いたそうです。

どうやら、「越(KOERU)」とは、これまで表現してきた「生命の躍動」に「品格」を加えた「魂動(KODO)」の進化形として、「既存の概念や枠組みを越えた価値を提供する」というマツダの想いが詰まったコンセプトカーのようです。

(川端 由美)

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