室屋選手、初開催カンヌで新兵器を投入。大接戦の模様を呈したラウンドの結果は?[レッドブルエアレース2018・フランス]

clicccar / 2018年4月26日 17時33分

4月21日〜22日にレッドブルエアレースが開催されたのはフランス・カンヌ。あの映画祭でお馴染みのコート・ダジュールのリゾート地。映画祭のレッドカーペットが設けられる「パレ・デ・フェスティバル」向かいのヨットハーバー(港)が舞台。

設定されたコースは、スラローム-大きな横のターン-スラローム-垂直ターン(今回は垂直と姿勢をとるルール)-90度捻って2周目というレイアウト。飛行機は沖から海岸に向かって来て、ゴールすると沖に引き上げていく。

今回、室屋選手は新型エンジンカウリングを装着。開幕前に公開した絞り込んだ風の写真はダミーだった模様で、外見は一見くびれの少ないダルな印象。冷却用の吸気口を拡げているがシリンダーヘッド周辺の整流(抜き)を意識したカウリングの様だ。

また、上部だけを取り外せるようにして整備性を向上させている模様。さらに、新たなウイングチップを投入した。上向きに反っているが、ウイングレットと云うほど屹立していない仕様だ。

予選トップは前戦のウイナー・グーリアン選手。57.073のタイムをマークした際、スラロームのラインが他の選手と違ったようで、室屋選手もここを警戒するコメントをしていた。

予選結果は以下の通りとなった。

順位 Pilot 国 Run Time
1 マイケル・グーリアン USA 00:57.1
2 カービー・チャンブリス USA  0:57.189
3 マット・ホール AUS  0:57.194
4  マティアス・ドルダラー GER  0:57.396
5 ミカ・ブラジョー FRA 00:57.5
6 室屋 義秀 JPN 00:57.5
7 ファン・ベラルデ ESP 00:57.7
8 ペトル・コプシュテイン CZE 00:57.8
9 ピート・マクロード CAN 00:58.2
10 クリスチャン・ボルトン CHI 00:58.8
11  二コラ・イワノフ FRA 00:58.8
12  フランソワ・ル・ボット  FRA 00:59.1
13  マルティン・ソンカ CZE  DNF
14  ベン・マーフィー GBR DNF

トップのグーリアン選手と6位の室屋選手のタイム差は0.37秒。8位のコプシュテイン選手迄は1秒以内という僅差。DNFとなった2名以外の全員が2秒以内という超接近戦である。4年前の日本初開催の頃のユルいタイム差は完全に過去の話だ。

室屋選手は6位。予選ではフリープラクティスでペナルティを受けたターンでは0.2秒程マージンを持たせて飛んだとの事で、0.4秒短縮すればトップが射程圏内に入る。今回も上位入賞の期待が膨らむ。

決勝日、天候は晴れ。風は弱く、決勝開始時の気温は23℃。絶好のレース日和だ。

[ラウンド・オブ・14]

Heat1 クリスチャン・ボルトン vs ミカ・ブラジョー
ボルトン選手、遅い機体をカバーする為、果敢な飛行をチャレンジするが、ターン9(2周目)に入る際、僅かに速く向きを速く変え始め、痛恨の2秒ペナルティ(機体の傾き:インコレクトレベル)を受け、1.01.306。ブラジョー選手はペナルティの2秒を差し引いても、よりも速い58.388で勝ち抜ける。

Heat2 二コラ・イワノフ vs マティアス・ドルダラー
先攻は地元のベテラン、イワノフ選手。アブダビで大きく損傷した機体を修復して挑んだが、ターン4でペナルティ(インコレクトレベル)を出し、1.01.582。後攻ドルダラー選手は手を緩める事無く、このラウンド最速の57.877で勝ち抜ける。

Heat3 ピート・マクロード vs 室屋義秀
先攻マクロード選手は199ノットの抜群のスタート・安定したフライト。だが垂直ターンがやや大きな印象で58.212を記録する。室屋選手はスタートでやや遅れを取ったが垂直ターンで挽回し、58.015で駆け抜ける。マクロード選手、室屋選手との直接対決は開幕戦に続き2連敗。

Heat4 フランソワ・ル・ボット vs マット・ホール
地元ル・ボット選手だが59.665と伸びない。後攻ホール選手は58.431で危なげなく勝ち上がる。

Heat5 ペトル・コプシュテイン vs ファン・ベラルデ
先攻は予選8位のコプシュテイン選手。7位とは0.11秒差で逆転チャンス…だが、今一伸びず59.013。後攻のベラルデ選手もタイムが帯びず58.625。途中、逆転を繰り返し僅差の勝負を制した。

Heat6 マルティン・ソンカ vs カービー・チャンブリス
予選がオーバーGによるDNFだったソンカ選手はタイムが伸びず、58.982。予選2位のチャンブリス選手が余裕の勝利かと思われたが、ゲート4でToo High! 競技中パイロン通過の際、パイロットのヘルメットがパイロンをより高く通過するとペナルティ(+2秒)を受けたのだ。チャンブリス選手はスラロームの際、機体の上下動が目立つ選手。昨年もこのペナルティを受けた数少ない1人。ここで悪い癖が出て1.00.995に沈む。

Heat7 ベン・マーフィー vs マイケル・グーリアン
ソンカ選手と同様DNFで最下位のマーフィー選手、59.042を記録する。グーリアン選手は前戦優勝の勢いを駆って57.875をマーク。ルーキーとの格の違いを見せつけ勝ち上がる。そして、 マーフィー選手のタイムはマクロード選手に及ばず、マクロード選手がファステストルーザーとして、ラウンド・オブ・8に生き残った。

ラウンド・オブ・14ではチャンブリス選手以外は予選上位の選手が勝ち上がった。決勝のコンディションは、各機予選より1秒程度遅い。フランス初開催となったエアレース、ラウンド・オブ・14を突破したのはミカ・ブラジョー選手だけであった。もう一人のフランス人、チャレンジャークラスに参加しているメラニー・アストル選手も4位。ペナルティの2秒が無ければ2度目の優勝だった。地元のプレッシャーを感じるのはどの国の選手も同じ様だ。

[ラウンド・オブ・8]

Heat8 マット・ホール vs ピート・マクロード
先攻ホール選手は57.708と後攻にプレッシャーを掛けるのに充分なタイムを刻む。マクロード選手は前のラウンドで敗れた室屋選手より上位だったホール選手に対し、追い込み過ぎたのかゲート4でインコレクトレベル(+2秒)を喫する。更に収集力が切れた様に、ゲート15でパイロンヒット(+3秒)を喫して5秒加算。1.05443で敗退。

Heat9 ミカ・ブラジョー vs 室屋義秀
ブラジョー選手と室屋選手の対戦は昨年のインディアナポリス以来2回目。ブラジョー選手、唯一のMXS-Rでスラロームを軽快に駆け抜け、58.494の好タイムを刻む。室屋選手は制限速度ぴったり(200ノット)という抜群のスタートから57.374とここまで最速タイムを刻んで勝ち上がる。

Heat10 ファン・ベラルデ vs マティアス・ドルダラー
先攻ベラルデ選手は57.886の好タイムでフィニッシュしたが、垂直ターンの際に垂直姿勢をとれておらず、ペナルティ(+1秒)となった。後攻ドルダラー選手は、着実に57.950を叩き出し、ファイナル4に進出する。

Heat11 マルティン・ソンカ vs マイケル・グーリアン
先攻ソンカ選手58.218とさほど伸びなかった。が、グーリアン選手も58.415と前ラウンドより大きくタイムを落とし、まさかの逆転負け(で、敗退かと思われた)

[Final4]

ホール,室屋,ドルダラー,ソンカと勝ち抜けた順のフライトとなる。前のラウンドの持ちタイムで行くと室屋選手に勝機は充分に期待される。

最初のホール選手、57.692の好タイムを叩き出す。2番手の室屋選手、ゲート8でインコレクトレベルのペナルティ。(突風に煽られた)ペナルティ後の飛行もやや乱れ、1.00.261。優勝は無くなった。

このタイミングで最後に飛行する予定だったソンカ選手に前戦に続きテクニカルペナルティ(回転数規定違反)の裁定が下った。適用は遡ってラウンド・オブ・8でのDQとなる。これにより敗退した、と思われたグーリアン選手が、急遽最後に飛行する事になった。(DQ扱いはタイム抹消の為、ソンカ選手はラウンド最下位(8位)となった)

ドルダラー選手は57.764、接戦となるも僅かに0.07秒届かず、順序通りに飛行しなかった事(=冷却不足)が惜しまれる。急遽飛んだグーリアン選手、58.083で3位に滑り込んだ。

全ての飛行が終了し、室屋選手の4位が確定した。

マット・ホール選手は、2016年ラウジッツ以来、2年ぶりの5度目の優勝。MSX-Rから現在のEdgeに乗り換えて初めての勝利となった。昨年最終戦の際、「沢山レースしたくてたまらないんだよ」と云っていたホール選手。一昨年末、室屋選手が警戒していた「怪物」が遂に目を覚ました。

今季好調なグーリアン選手に続き、ホール・ドルダラーの両選手も復活を遂げた。昨年程は各イベント優勝出来そうな選手は3,4人に絞られていた。しかし、今年は6,7人に勝機が有りそうな接戦が繰り広げらている。

シリーズランキングのトップは、グーリアン選手が堅持(24pts)。今回優勝のホール選手が2位(21pts)となり、室屋選手はランキング3位(19pts)に後退した。4位のドルダラー選手は12ptsと少し開いており、ランキング的にはこの3人が頭一つ抜け出した印象だ。

千葉では幕張海岸に沿って北西から南東に設定される為に直線的なレイアウトにならざるをえず、今年も室屋選手の機体に向いているコースとなるだろう。千葉大会でのランキングトップ奪取を共に母国&同一開催地3連覇という前人未到の記録に挑む室屋選手、千葉での今季初優勝に期待したい。

(川崎BASE・photo:Joerg Mitter /Predrag Vuckovic /Daniel Grund/Red Bull Content Pool)

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