デミオのSKYACTIVを上回る低燃費25km/Lを達成するのか? タイ生産で復活!【三菱ミラージュ海外試乗記】【レビュー:三菱】
CORISM / 2012年4月14日 10時10分
タイ生産で復活した新型三菱ミラージュ! 日本へはこの夏デビュー
●国をあげた自動車メーカー誘致が、タイ生産の日本車が増える理由
三菱が新興国向けのエントリーカーとして、また先進国向けには環境性能車として販売する新コンパクトカーのミラージュが日本よりひと足先にタイで発表・発売された。
ミラージュは昨年の東京モーターショーにコンセプトカーが参考出品されていた。そのミラージュが日本より先にタイで発表・発売されたのは、ミラージュがマーチと同じように、タイで生産されて世界に供給されるクルマであるためだ。
バンコク郊外のインパクト・コンベンションセンターで開催されたバンコクモーターショーで一般に公開され、これがワールドプレミア(世界初公開)になった。
バンコクモーターショーは今年が33回目でアジアでは東京モーターショーに次ぐ歴史を持ち、来場者の動員数(今年は170万人を見込んでいる)では東京を上回ってアジア最大のモータショーである。最近はホンダのブリオ、日産のマーチ、三菱のミラージュといった具合に、新興国向けのクルマがバンコクで最初に公開される形をとる例が増えている。
タイ製のクルマを日本に輸入するのは、マーチよりも先に三菱がピックアップトラックのストラーダ(トライトン)で実行してきた歴史がある。ここにきてトラックではなくミラージュやマーチなどの乗用車がタイで生産されて各国に供給されるようになったのは、タイ政府の政策が関係している。
1.3L以下の排気量で欧州基準で20km/L以上の燃費を実現したクルマをエコカーとして、ユーザーの税負担を軽減するほか、この条件に合致するクルマを生産する自動車メーカーに対する投資減税も実施しているためだ。
裾野の広い自動車産業をタイに誘致し、アセアン各国に相互供給するほか、世界に輸出してタイをアジアのデトロイトにするという政策を実行している。日産のマーチがジャストのタイミングでタイのエコカー認定を獲得し、今年はミラージュだけでなくスズキのスイフトもこの条件に合致している。
マーチより100kgも軽い? 軽く作って燃費をアップ!
●JC08モード25km/Lを超える超低燃費にこだわった仕様
ミラージュは三菱にとって久々に投入する新型車であり、世界中で販売する戦略車種である。ミラージュの成否は三菱の将来を大きく左右することになる。このため基本プラットホームからパワートレーンまで、ほとんどすべてを新設計して作られた。さらに、従来からのラムチャバン工場に隣接して新しい第三工場を建設し、ここでミラージュを生産する。
従来の工場は主にピックアップトラックを作ってきたが、今回の第三工場はミラージュ専用の新工場だ。新しい工場なので、980MPaの高張力鋼板を使うことが可能になり、結果として軽量で燃費性能に優れたクルマに仕上げることができた。
外観は、だれにでも受け入れられるような親しみやすいデザインを目指したという。コンパクトなエントリーモデルながら、しっかりしたプレスラインを採用したほか、空力特性に配慮した設計(リヤスポイラーが全車標準)とするなど、それなりの特徴を備えている。
ただ、全体的な印象はマーチと似たような感じで、やや没個性的な印象も受ける。少なくともひと目で人を惹きつけるようなインパクトには欠けている。もう少し存在感が欲しいと感じである。ボディカラーはイエローやグリーン、ブルーなどはっきりしたカラーを含めて8色が用意される。ボディの合わせ目など、外観のクォリティも特に高いとはいえず、マーチと同等のレベルである。
インテリアも同様で、シンプルでクリーンなデザインを採用するものの、質感のレベルはコンパクトカーのものだ。ただ、パッケージングはマーチやブリオに比べてもはっきりと優位に立つもので、後席には余裕の空間があるほか、ラゲッジスペースも十分な容量。後席のシートを倒せばかさばる荷物も積める広さだ。
そのボディが軽く作られている。前述の高張力鋼板の採用などにより、マーチに比べるとざっと100kg、ブリオに比べてもグレードによって50kg以上も軽い850kgが基準の重量だ。
エンジンは3気筒1.2LのMIVEC仕様がINVECS-ⅢのCVTと組み合わせて搭載される。ジヤトコ製の副変速機付きのCVTで、軽量ボディと合わせて低燃費を実現する。タイ仕様車は欧州基準で22.0km/Lを達成しているというから、かなりの低燃費だ。
エンジンの動力性能は最高出力が57kW(78ps)/6000rpm、最大トルクが100N・m(10.2kg-m)/4000rpmだから、数値的にはマーチに比べるとやや劣っている。これは低燃費の実現を大きなテーマにしたためだ。
今夏に発売される日本向けのモデルには、排気量を1.0Lにした3気筒エンジンがCVTとの組み合わせで投入されるという。日本仕様車には、アイドリングストップ機構やエネルギー回生システムなどを組み合わせたエコサポート仕様となる。
開発時点では10・15モードで30.0km/Lを達成することを目指していたとのこと。発売時点ではJC08モードでの表示となるが、25.0km/L以上を達成してマツダのデミオを上回ることになるようだ。
大きなロールが出る足まわり。スタビライザーが欲しい!
●快適性を重視した柔らかい足
ミラージュのタイ仕様車には、バンコクモーターショーの会場に併設された特設コースで試乗した。アップダウンなどのない限られた条件での試乗だったが、パイロンスラロームやダブルレーンチェンジなども設定されていて、実際に走らせて分かることもいろいろあった。
走り出しはCVTらしいスムーズさがある。CVTの特性としてアクセルワークに対するダイレクト感についてはやや物足りない面もあるが、アクセルペダルを踏み込めば副変速機のロー側を使って力強い加速を見せる。今回の試乗は2名乗車だったので、マーチに比べて100kg軽いボディが持つ優位性を単純に享受することはできなかった。でも加速の良さはしっかり体感できたし、加速の伸びもそれなりに良かった。
日本仕様車で搭載エンジンが1.0Lに変わると、当然動力性能も下がることになるが、基本的にボディが軽いので、走りが大きくスポイルされることにはならないだろう。
スラロームやレーンチェンジなどを試すと足回りはかなり柔らかめの印象だ。タイの道路事情はそれほど良いものではないから、荒れた路面でも快適性を感じさせる乗り心地が求められるのだろう。今回の試乗コースも部分的に路面の荒れた部分があったが、そうした部分でもゴツゴツ感のない走りを実現していた。当然ながら、その分だけパイロンスラロームなどでは大きめのロールが出る。
簡単に破綻してしまうような柔らかさではないが、ロールはもう少し抑えて欲しいという印象だった。コンパクトカーではフロントにスタビライザーを装着しないクルマが多く、タイ仕様のミラージュにも装着されていなかったが、日本仕様にはぜひともスタビライザーを装着して欲しい。そうすることで、コンパクトカーの中でも高い操縦安定性を持つように仕上げれば、それが売りの要素になると思う。
安全装備の充実に期待したい
●燃費がウリのクルマに、今時、燃費計がないって・・・
インパネ内にエコランプが設定されていて、移動区間などをゆっくり走るときにはすぐにエコランプが点灯した。でも、今どきのクルマにはエコランプだけでなく、燃費計の設定が常識になりつつある。低燃費を強調するクルマであるなら、ぜひとも瞬間燃費計と平均燃費計が欲しい。
タイ仕様のミラージュでは安全装備はABSは標準で装備されるものの、横滑り防止装置のASCの設定はなく、後席中央には3点式シートベルトやヘッドレストレイントが装備されていなかった。
三菱は少なくとも日本では、ほかのメーカーが採用渋っていた時期から独自にフロント合わせガラスを採用したり、あるいは後席中央の3点式シートベルトを採用するなど安全性の確保に積極的なメーカーであっただけに、タイ仕様車のこの設定は物足りない。
日本仕様車では、3点式シートベルトは必須の装備となるので問題ないが、横滑り防止装置は夏に発売されるなら義務化の寸前というタイミングになる。なのでオプション設定にすることも可能だが、このタイミングで発売して標準装備にしないのであまりに情けない。何としても全車標準にすべきだと思う。
タイでは38万バークから54万6000バーツで販売されていて、1バーツ3円弱で計算してもけっこう高い。これには税制も関係しているので、日本仕様車の価格はもっと安くなるはず。100万円を切るようなベースグレードが設定されるかどうかは分からないが、売れ筋グレードは120万円前後になるだろう。コンパクトカーの新しい選択肢になるのは間違いない。
■祝! 復活ミラージュ、でもタイ生産という現実【三菱ミラージュ新車情報】
代表グレード | 三菱ミラージュGLSリミテッド(タイ仕様車) |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 3710x1665x1490mm |
車両重量[kg] | 870kg |
総排気量[cc] | 1193cc |
最高出力[ps(kw)/rpm] | 78ps(57kW)/6000rpm |
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] | 10.2kg-m(100N・m)/4000rpm |
トランスミッション | CVT |
燃費[km/L](タイ発表値) | 22.0km/L |
定員[人] | 5人 |
タイ現地価格 | 546,000 バーツ |
日本発売予定 | 2012年夏頃 |
写真 | 三菱自動車 |
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