日産アリアB6試乗記・評価 弱点はほとんど無い!?
CORISM / 2022年6月11日 19時57分
待ちに待った新型アリア登場。B9系やe-4ORCE(4WD)は、まだ先延ばし状態が続く・・・
リーフに続くバッテリーEVの第2弾が新型日産アリア(ARIYA)だ。2019年秋の東京モーターショーでコンセプトカーが発表され、センセーションを巻き起こした。
新型アリアは、1年ほどで正式発表されるはずだったが、新型コロナウイルスの蔓延や半導体不足の影響もあり、予約を受け付けたものの発表と発売は先延ばしされていた。
だが、ようやく2022年春から予約注文特別限定車のアリアB6リミテッドのデリバリーが開始され、待ち望んだ試乗の機会にも恵まれた。ただし、ステアリングを握ったのは2WD(FF)のB6だ。本命視されている4WDの「e-4ORCE」が登場するのは夏以降となっている。
前後オーバーハングを切り詰めた独特なスタイリング
新型アリアのエクステリアは、モーターショーに出展したプロトタイプに近いデザインだ。バッテリーをフロア下に敷き詰めている多くのBEVと同じようにパッケージングで有利なクロスオーバーSUVスタイルを取っている。
前後のオーバーハングを切り詰め、フロントマスクはノートやリーフでお馴染みのVモーションデザインとした。ちょっと猫背のサイドビューはクーペのように伸びやかだ。なかなか発売されないのでデザインの賞味期限が心配だったが、これは杞憂に終わった。奇しくもボディサイズはトヨタbZ4Xに近い。だが、狙ったデザインは違うところにある。
アリアは、EV専用のプラットフォームを開発し、モーターとバッテリーを効率よく収めた。インテリアは、水平基調のインパネに12.3インチの大型ディスプレイを2つ並べ、先進性と未来感覚をアピールした。このインターフェイスディスプレイは電脳化されているのも売りだ。
ニッサンコネクトナビを標準装備し、スマホやタブレットはもちろん、ハロー日産と呼びかけての音声認識機能も盛り込んでいる。それだけではない。Amazonの音声サービス、アレクサまで搭載し、家と同じように音楽再生や家電の操作も行うことができるのだ。また、電制シフトを組み込んだ前席中央のコンソールボックスは、世界初の電動タイプで、前後に150㎜のスライドを可能にしている。
日産自慢のプロパイロット2.0は発展型を搭載した。ハンズオフ走行や車線変更支援を可能にし、進化版のプロパイロットリモートパーキングまで採用する。
広大な車内、パワフルなモーター
新型アリアのキャビンは、不満のない広さだ。フロントシートは大ぶりで、座り心地もいい。だが、メーターが見やすいように着座位置を決めると、ちょっと座面を上げる必要がある。後席は膝もと、頭上ともに余裕があり、フラットフロアだから移動もしやすい。わずかだが、リクライニングも可能だ。
新型アリアB6は、最高出力218ps(160kW)/5950〜13000rpm、最大トルク300N・m(30.6kg-m/0〜4392rpm)を発生する。1920kgの車両重量は、リーフe+より300kgも重く、bZ4のFF車と同等である。
パワースペックは、新型アリアがbZ4Xより少し優っているが、走らせたときの印象はカタログに記載されている数値より差が大きいように感じられた。
滑らかでジェントルなモーター制御
新型アリアは、低回転からパワーとトルクが気持ちよく立ち上がり、リーフe+に迫る軽やかな加速を披露する。しかもジェントルで、モーターの滑らかさが際立っているのも美点の1つだ。
また、ノートから採用しているワンペダルドライブも進化させている。走行モードによって回生による減速Gの発生具合は異なるが、便利なだけでなく操る楽しさも格別だ。スポーツモードでeペダルを作動させると減速感が強く、停止までコントロールすることもできる。eペダルをオフにしてエコモードを選べば、惰性で滑走するコースティングが可能になり、電費の悪化を抑え込むことが可能。
新型アリアは、静粛性も高い。遮音ガラスや遮音カーペットに加え、タイヤも吸音構造を採用している。そのためクルージング時はもちろん、加速しているときでも驚くほど静かだった。唯一気になったのは、停止時にモーター冷却用の電動ファンの作動音が耳についたことだ。
サスペンションは、ストラットとマルチリンクの組み合わせとした。ロールやふらつきを嫌ってか、足のセッティングは硬めの味付けとしている。デュアルピニオン電動パワーステアリングの採用と相まって気持ちよくクルマが向きを変え、ロールも上手に抑え込んだ。また、ステアリングの抑えが効き、直進安定性も高いレベルにある。ただし、路面によっては足の硬さを意識させられた。
ドイツ系EVにも引けを取らない実力派がアリア
新型アリアB6のバッテリー容量は65kWだ。B9は90kWの大容量だから物足りなく感じる人もいるだろう。だが、WLTCモードでの航続距離は470kmを達成した。
電費を意識した運転をしなくても無理なく300km以上のレンジを確保できるはずである。アリアはリーフで培ってきた技術とノウハウを駆使して設計されたBEVだけに、総合力が高い。
充電時間は、色々な条件があるが日産の公表値は、急速充電器50kW(125A)/約65分、急速充電器90kW(200A)/約45分、6kW普通充電器で約12時間となった。やや充電時間が長いように感じるが、66.0kWhという大容量バッテリーを搭載しているためだ。航続距離は470㎞と長いので、トイレ休憩や食事の時などを使い急速充電器で上手く継ぎ足し充電すれば、ストレスなく調教ドライブも楽しめる。
アウディのeトロンやメルセデス・ベンツのEQC、BMWのiX3などのドイツ勢と比べても弱点がほとんどなく、魅力的だと感じる。輸入車と比べて販売価格もリーズナブルだ。日産の本気が伝わってくるBEVだから、これに続くB9と e-4ORCE(4WD)の発売が待ち遠しい。
<レポート:片岡英明>
日産アリア価格
・アリアB6(FF) 5,390,000円
・アリアB6 limited e-4ORCE(4WD) 7,200,600円
・アリア B9 limited(FF) 7,400,800円
・アリア B9 e-4ORCE limited(4WD) 7,900,200円
日産アリアB6(FF)電費、充電時間、ボディサイズなどスペック
全長×全幅×全高 (mm) 4595×1850×1655
ホイールベース (mm) 2775
最低地上高(mm) 180
乗車定員 (名) 5
車両重量 (kg) 1920
タイヤサイズ 235/55R19
最小回転半径 (m) 5.4
サスペンション (フロント/リヤ) ストラット式/マルチリンク式
モーター最高出力 (kW<PS>/rpm) 160〈218〉/5950-13000
モーター最大トルク (N・m<kgf・m>/rpm) 300〈30.6〉/0-4392
駆動用バッテリー種類 リチウムイオン電池
総電力量(kWh) 66.0
WLTCモード 航続距離(km) 470
充電時間 急速充電器50kW(125A)/約65分 急速充電器90kW(200A)/約45分 6kW普通充電器 約12時間
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